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快進撃「SixTONES vs Snow Man」への違和感

1月28日(火)17時30分配信 東洋経済オンライン

SixTONES(写真左)とSnow Man(同右)のデビューシングル「Imitation Rain/D.D.」(東洋経済オンライン編集部撮影)
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SixTONES(写真左)とSnow Man(同右)のデビューシングル「Imitation Rain/D.D.」(東洋経済オンライン編集部撮影)
 1月28日、最新のオリコン週間シングルランキングが発表され、ジャニーズ事務所のアイドルグループ・SixTONES(ストーンズ)とSnow Man(スノーマン)のデビューシングル「Imitation Rain/D.D.」が初週売上132.8万枚を記録して1位を獲得。「史上初のデビューシングル初週ミリオン達成」と大きく報じられています。

 この数週間、昼夜を問わずテレビをつければシングル曲のCMが流れ、各番組に両グループのメンバーがゲスト出演し、ネット上にも記事が量産されていたため、「彼らのことはよく知らないけど見たことがある」という人は多いでしょう。
 ところがSNSやニュースのコメント欄には、「史上初のデビューシングル初週ミリオン達成」という快挙をたたえるのではなく、批判的なコメントが多数を占める事態になっているのです。

 しかもその大半はメンバーではなく、マネジメント側を批判する声。世間の人々は、彼らが「ジャニーズのアイドルだから」ではなく、しっかりとした理由を持って批判をしていることに驚かされます。

 快挙に影を落とす批判はなぜ生まれてしまったのでしょうか?  さらに一連の流れを報じるメディアの姿勢も含めて、ここではビジネス戦略としての是非を掘り下げていきます。
■2グループ合算で売り上げをカウント

 SixTONESとSnow Manの同時デビューが発表されたのは、昨年8月8日。「史上初の2組同時CDデビュー」であり、前者はソニー・ミュージック、後者はエイベックス・エンタテインメントからのデビューと大々的に発表されました。このときはファンならずとも「同時デビューなんてすごい。どちらの売り上げが上回るのだろう」という見方が広がっていたのです。

 その後、亡きジャニー喜多川さんの誕生日である10月23日に、彼らのデビュー日が2020年1月22日であることが発表されました。もう1つ明かされたのはCDの名義。SixTONESは「SixTONES vs Snow Man」名義で、Snow Manは「Snow Man vs SixTONES」名義で、それぞれシングルをリリースするというのです。
 つまり、「どちらのCDを買っても2組両方のシングルが聴ける」ということ。今回の売り上げ枚数やランキングは2組の合算であり、その手法に批判が集まっているのです。

 「グループもレコード会社も違うのに、何で合算が認められるのか意味不明」「抽選で当たるハイタッチ券で大量購入させるやり方がひどい」「抽選というやり方は、買えば握手券が必ずつくAKB48よりもエグイ」などの声があがるのも無理はありません。

 名義には“vs”とうたいながらも、実質的に“and”の合算であること。さらに、「スペシャルイベント+ハイタッチ会」の応募期間は1月21日12:00~26日23:59と、初週に大量購入させるためとしか思えない設定だったのです。
 もちろんメンバーたちが努力してきたことはたたえられるべきであり、ファンではない人々からも「本人たちは悪くない」という擁護や、「これからずっと2グループ一緒に発売するの?」という心配の声があがっています。だからこそマネジメント側への批判は過熱してしまうのでしょう。

■「印象操作どころか数字操作」という声も

 マネジメント側もプロである以上、多少なりとも批判を受けることは覚悟していたのではないでしょうか。それにもかかわらず強引な手法に踏み切ったのは、「彼らに箔をつけよう」「売れているイメージをつけたい」という狙いであることは想像にかたくありません。
 実際、23日に「初日売上77.3万枚は歴代1位」、24日に「発売3日でミリオン突破」、28日に「オリコン週間ランキング1位、史上初のデビューシングル初週ミリオン達成」などと、短期間で繰り返し彼らの快挙が報じられました。彼らに箔をつけ、世間の人々に「売れている」というイメージをつけようとしている様子がわかるのではないでしょうか。

 別の業界に目を向けても、書籍の世界では、関係者の大量購入で瞬間風速的にAmazonランキングの上位を獲得し、「ランキング1位」をPRフレーズに打ち出す戦略が長年採用されてきました。このように「売れているものが気になる、買おうとする」という人間心理を生かした戦略はビジネスセオリーの1つです。
 しかし今回は、「印象操作どころか数字操作」という辛辣な声が見られるように、2グループ合算の形を採用したことで、「やり方がうまいな」と受け流してもらえず、「そんなやり方にはだまされないぞ」という抵抗を生んでしまったのでしょう。

 ネットの普及でさまざまな情報が飛び交い、ビジネスの戦略ですら可視化された感もある中、今回のような誰が見てもわかりそうな形を採用してしまったのは、「こうやれば売れるだろう」「これくらいは大丈夫だろう」と世間を甘く見ていたからではないでしょうか。
 2016年12月でSMAPが解散し、今年12月で嵐も活動休止する中、「SixTONESとSnow Manを絶対に成功させたい」というプレッシャーがあるのかもしれませんが、それでも現段階では逆効果だった感が否めないのです。

■「どう売れたか?」のストーリーが重要

 マネジメント側がSixTONESとSnow Manを「国民的アイドルにしたい」「世界に打って出たい」など、どんな戦略を描いているのかは、まだわかりません。しかし、もし彼らが国民的グループを目指すとしたら、ロケットスタートを狙うような今回のプロデュースは、必ずしも効果的とは言えないでしょう。
 彼らの先輩に当たるジャニーズ事務所の国民的アイドルと言えば、前述したSMAPと嵐であることに異論の余地はないはずです。そのSMAPはデビューシングルから11枚連続でランキング1位を獲得できず、頼みの綱の音楽番組も次々に終了するなど逆境続きの中、コントなどのバラエティーに活路を見いだして成功を収めました。嵐もデビュー後の数年間はシングルランキング1位を逃すことが多く、ライブの集客もテレビ出演も少ない雌伏の時を過ごしましたが、人柄や仲のよさをベースに支持を集めていきました。
 この間の女性アイドルグループに目を向けても、国民的アイドルに上り詰めたモーニング娘。もAKB48も逆境や雌伏の時を経験しています。その意味でSixTONESとSnow Manが国民的アイドルになるためには、むしろロケットスタートではなく、逆境や雌伏の時を経験させたほうがいいのかもしれません。例えばSixTONESとSnow Manの売り上げをガチンコで競わせて、負けて悔しい思いをしたほうがむしろ国民的アイドルグループの第一歩につながるのかもしれないのです。
 もともとアイドルのような偶像を扱うビジネスは、成功に至るまでのストーリーが重要。「どのように売れたか?」は、熱心なファン以外の人々にとって「好きか嫌いか」「応援するかしないか」を分けるポイントとなりうるものなのです。「どのように売れたか?」が作為的なプロモーションによるものであれば、1度ついたイメージを覆すのは至難の業であり、両グループはむしろ重い十字架を背負わされたと言ってもいいでしょう。

 世間の人々から批判があがっているのはマネジメント側だけではありません。SixTONESとSnow Manのデビューを報じるメディアにも厳しい声が浴びせられています。
 どのメディアも、2グループ合算やハイタッチ券についてはふれず、スポーツ新聞やネットメディアは「偉業達成」「超ド派手同時デビュー」「史上最速ミリオン確実」などの称賛のみを書き、中にはまだスタートしたばかりであるにもかかわらず「今年度最高の売り上げ」という記事すらありました。

 また、テレビでは情報番組をジャック。例えば、日本テレビだけを見ても、『ZIP!』『スッキリ』『バゲット』『ヒルナンデス!』などに何度も出演していましたし、ゴールデンタイムのバラエティーも「出ていないほうが少ないのでは?」というコメントがあがるほど多くの番組に出演しています。
■一般視聴者には唐突感がある

 中でもよく見られるのは、「キャラを押し出した自己紹介」「これまでの苦労話」「一発芸やモノマネ」「デビューシングル披露」というフルコースの出演。一般の視聴者にしてみれば、いつもの番組に知らないタレントが混じっている唐突感があるだけに、「ジャニーズ事務所への接待なのか」「それにしても忖度しすぎ」、ひいては「視聴者をバカにしている」と考えてしまう人がいても不思議ではありません。
 ジャニーズ事務所を出た元SMAPの3人がいまだ限定的な番組出演にとどまっている中、この大量出演を見た人はあらためてテレビ業界の悪しき商慣習を感じてしまうのではないでしょうか。皮肉にも世間の人々は、SixTONESとSnow Manのメンバーがテレビ番組に出るほど、ジャニーズ事務所の強引なマネジメントと、それを最大限に受け止めるテレビ局の忖度を感じてしまうのです。

 これを読んだ両グループのファンは、「せっかくデビューできたのに、なんて記事を書いてくれたんだ」という怒りもあれば、「彼らの将来を考えるとマネジメントのまずさはハッキリ指摘してもらったほうがいい」という理解もあるでしょう。デビューは本人もファンも喜ばしいことですし、SixTONESもSnow Manもみずみずしい姿を見せてくれています。
 書いた私自身も、若い彼らの活躍や成長を見守りたいと思っていますし、だからこそマネジメント側やメディアが世間の人々を甘く見るような手法で、その可能性を狭めてはいけないのではないかと感じたのです。
木村 隆志 :コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

最終更新:1月28日(火)17時30分

東洋経済オンライン

 

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