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「フェイクニュース」との正しい付き合い方

1月28日(火)5時15分配信 東洋経済オンライン

トランプ大統領の登場後、フェイクニュースが大きく取り上げられるようになった。写真は2020年1月に全米最大の中絶反対デモで演説するトランプ大統領(写真:AP/アフロ)
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トランプ大統領の登場後、フェイクニュースが大きく取り上げられるようになった。写真は2020年1月に全米最大の中絶反対デモで演説するトランプ大統領(写真:AP/アフロ)
SNSの普及に伴い、多様な情報が飛び交うようになった。その中には真実もあれば、うそもある。そんなうそのニュースを指す「フェイクニュース」は大きな問題となっている。
フェイクニュースが問題として大きく取り上げられるようになったきっかけが、トランプ大統領が誕生した2016年のアメリカ大統領選挙だ。アメリカのフェイスブックで大量のフェイクニュースが拡散され、トランプ氏に有利に働いたとされる。ロシアがアメリカの有権者に向けてフェイクニュースを拡散し、選挙に干渉したという疑惑も浮上した。2020年はトランプ氏の再選をかけた大統領選が行われる。
勢いが衰えないフェイクニュースにメディアはどのように対応していくのか。そんな中、イギリスの公共放送であるBBCは、世界中のフェイクニュースに関する情報や分析を集める「Beyond Fake News」というプロジェクトを立ち上げ、フェイクニュース対策で世界を先導している。
このほど来日したBBCグローバルニュースの責任者であるジェイミー・アンガス氏に、フェイクニュース問題について話を聞いた。

■予防接種を思いとどまらせる虚偽情報
 ――現在、世界が注目しているフェイクニュースは何でしょうか。

 世界中でワクチンに関する問題が大きくなってきている。多くの地域でさまざまな理由がつけられ、子どもたちに予防接種をするべきではないという情報が流れている。子どもたちが危険にさらされていると言える。

 私たちの報道はこうした問題について世界的な注目を集めるうえで重要な役割を担っている。BBCでは予防接種に関する情報をまとめ、適切な情報を提供している。
 ――日本でも子宮頸がんワクチンについての問題が大きくなっています。こうした問題は、ワクチンを接種させない親などが孤立化してしまう可能性もあります。

 私たちは予防接種に不安がある親を攻撃したいわけではない。ただ、予防接種を思いとどまらせるような虚偽の情報は問題だ。BBCは事実に基づいた意思決定をサポートする役割を担っているだけだ。そのため、最終的に子どもの予防接種については両親たちが選択する必要がある。一方で、正しい事実に基づいて選択してほしいとも考えている。
 われわれはそうした情報をイギリスだけではなく、世界中に発信している。フェイクニュースというと、トランプ大統領のような政治的な議題が登場しがちだが、ワクチンのように人の命に関わる問題でもあることを知ってほしい。

 ――なぜ公共放送であるBBCがイギリス以外の地域でもフェイクニュース対策を行うのでしょうか。

 BBCは42の言語で放送しており、その国々のニュースをチェックできる規模と能力を持っている。そのため、世界でもリーダー的な役割を果たすことができるからだ。ただ、すべてに対応できるわけではない。NHKを含むグローバルな公共放送の団体があり、そこでフェイクニュースについても議論し、多様な報道機関と連携している。
 BBCはフェイクニュース対策として、世界中のフェイクニュースを集めて「Beyond Fake News」として公開している。また、BBCは報道されている事実が正しいのかどうか確認する「リアリティーチェック(ファクトチェック)」を行っている。(11月20日に行われた)イギリス総選挙の候補者間のテレビ討論でも、話している内容などで非常に多くのリアリティーチェックが行われた。

 私はイギリスに在住しているため、日本について詳しくは把握できていない。ただ、1つ言えることは、日本よりもフェイクニュースの被害が深刻な国や地域が世界にあることだ。とくに、インドやアフリカ地域などは大きな問題を抱えている。ただ、日本は問題ないということではないだろう。
■フェイクニュースはなぜ作られるのか

 ――「フェイクニュース」と断定しても、それを信じない人たちもいますよね。そうしたことはどう考えていますか。

 まず、BBCはほとんどの話題に関して検証可能な事実があると考えている。そして、BBCのような組織が、事実であるか事実でないかを伝えることが重要だ。

 その一方で、特定の政治家がいい、悪いということは報じない。あくまでも発言したことの真偽について伝えるようにしている。誰がいい人で誰が悪い人なのかといったことは、われわれではなく視聴者が決めるべきだ。
 しかし、リアリティーチェックだけでフェイクニュースをなくすことは難しい。そのためBBCでは、学校でメディアリテラシーを高める教育プログラムを行っている。何を信じて、何を信じないのか学ぶ必要がある。

 ――そもそも、なぜフェイクニュースは作られるのでしょうか。

 いくつかの理由があると考えている。1つはお金だ。ページをクリックさせて、金銭を得るためにフェイクニュースを作る人たちがいる。2つ目に政治や社会を不安定化させるためのフェイクニュースだ。国家がそうしたフェイクニュースを生むことを支援しているケースもある。
 フェイクニュースの真の脅威は、社会を不安定化させることだ。例えば、「予防接種はするべきではない」や「地球温暖化はうそだ」といった情報を広めることで、社会が不安定になっていく。

 ――一方で、それに対抗するべきメディアは資金的に苦しい環境が続いています。

 メディアの資金調達は大きな課題だ。デジタル収入を得ることは非常に難しく、デジタルからの利益の大半は少数のプラットフォーマーが握っており、ニュースへの投資とリターンが釣り合わなくなっている。そのため、営利企業がジャーナリズム、とくに国際ニュースや調査報道へ投資するインセンティブがほとんどなくなっている。
 その一方で、現在、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など裕福な個人投資家や政府などがジャーナリズムに資金提供するケースもある。しかし、ジャーナリズムが少数の人によって制御されることにつながると危惧している。ジャーナリズムは多様であるべきだからだ。

 国の資金や慈善資金、商業資金など多くの形で資金を調達する必要がある。われわれメディアは、営利企業が質の高いジャーナリズムに資金を投入することができる形を探す必要がある。
■フェイクニュースをなくすことはできる

 ――2020年にはアメリカ大統領選があります。トランプ大統領が当選した2016年の選挙はフェイクニュースの始まりとも言えるようなものでした。

 多くの人がフェイクニュースは2016年の話で、現在まで続くとは思っていなかっただろう。しかし、この問題は20年以上にわたって付き合っていかなければいけない話だ。

 当時よりもメディアはフェイクニュースに対して警戒感を抱いている。前回と比べてフェイクニュースに対する準備もできている。2016年の失敗から学んだことを2020年の選挙時には示すことができるだろう。
 ――しかし、フェイクニュースは一向に衰えを見せません。これをなくすことは可能だと考えていますか。

 私は楽観主義者なので、答えは「Yes」だ。技術の発展、AIなどがわれわれを助けてくれるだろう。しかし、そのためには報道機関やプラットフォーマー、政治家、官僚などの連携が必要だ。多くの利害関係者がいるので、長時間に及ぶだろう。
井上 昌也 :東洋経済 記者

最終更新:1月28日(火)5時15分

東洋経済オンライン

 

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