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五輪景気は“過大評価” 2020年秋は本当に不況に転じる?

1月27日(月)15時10分配信 THE PAGE

 2020年のビッグイベントである東京五輪・パラリンピックには、日本の経済界からさまざまな期待が集まっています。そこでまことしやかに言われているのが五輪後の景気の落ち込みです。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。

「良くも悪くも」大きい五輪への期待

 2020年に入り、筆者は数多くの企業経営者(非金融・中小)と今年の日本経済について意見交換する機会を得ました。そこで改めて感じたことは「良くも悪くもオリンピックに対する期待が大き過ぎる」――。この一言に尽きます。
[写真]「五輪までは――」2020年の景気について企業経営者からは五輪が強く意識されている。写真は昨年完成した国立競技場
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[写真]「五輪までは――」2020年の景気について企業経営者からは五輪が強く意識されている。写真は昨年完成した国立競技場
 建設・土木、東京近郊の観光業など五輪特需の恩恵を強く受けそうな企業ならまだしも、製造業やその他のサービス業に携わる方々からも「今年はオリンピック景気に期待」、「オリンピックまでは良さそう」、「オリンピックが終わったら」といった具合に口々に「オリンピック」が出てきました。

 ここで、なぜ五輪によって景気が良くなるのかを再考します。それは取りも直さず五輪に向けて競技場、選手村、交通インフラなどを整備するからです。今大会では1964年大会時に利用された東京体育館や代々木体育館に加え、東京国際フォーラム、武道館、国技館といった既存設備を多く活用する反面、新国立競技場を筆頭に東京アクアティクスセンター、有明アリーナ、有明体操競技場、選手村などを新たに建設するため、そこで景気刺激効果が発生します。また近年のインバウンド需要拡大と相まって、交通インフラについても五輪を契機に刷新する動きが広がりました。羽田空港の能力拡大はその代表例です。(※なお「五輪のためにホテルを建設するから」という説明をしばしば聞きますが、五輪・パラリンピックの開催期間、すなわち1か月半程度の観戦客需要を見込んでホテルを建てる民間業者は存在しないでしょう)。

五輪需要のピークは開催2年前

 では、五輪に関連した建設投資が最も盛んになるのはいつ頃でしょうか。ここが一番重要なポイントなのですが、2015年に日本銀行スタッフが発表した分析によれば、通常は開催の2年前にそのピークが来ると示されています。すなわち今回のケースでは2018年です。ではなぜ2年前にピークがくるのかというと、これは極めて単純な理由です。五輪に間に合うようなスケジュール感を前提にすれば、最も資材と労働力の投入が盛んになるのは開催の2年前頃になるからです。オリンピックの半年前にあたる現時点で新国立競技場が既に完成していることを踏まえれば、建設投資がピークアウトしているのは自明です。現状は、日銀スタッフの分析通りになっていると思われます。

 冒頭で「良くも悪くもオリンピックに対する期待が大き過ぎる」としたのは、オリンピックだけでは、日本全体の景気動向はおろか建設需要すら説明できないからです。2019年12月に会計検査院が報告した国のオリンピック関連経費と、東京2020大会組織委員会と東京都が見込む事業費を合わせると、関連経費の総額は6年間の累計で3兆円とされています。仮にこの額がそのまま(しかも一括で)GDPに計上されるとしてもGDPの0.5%程度に過ぎません。オリンピックの直接的な経済効果は多くの方の想像より小さいのではないでしょうか。

五輪以外の建設案件はまだ豊富

 もっとも、オリンピック関連の建設需要が減少すれば、多かれ少なかれ景気に下押し圧力をかけるのは事実です。したがって、それを無視するのも問題です。そこで国土交通省発表の建設総合統計で示されている「手持ち工事高」に目を向けると五輪後の姿がイメージしやすくなります。手持ち工事高とは、受注済みの建設工事額のうち未消化の部分の額を集計したもので、これから発現する需要と読み替えることができます。その水準は2018年頃から30兆円超という高水準で安定しています。
[表]手持ち工事高
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[表]手持ち工事高
 これが一つの結論なのですが、五輪関連の建設需要がピークアウトしても、日本にはなお豊富な建設案件が存在しているということです。これは建設部門が空前の人手不足に直面する状況下で、五輪関連の受注を優先してきたことなどから、その他の案件が高水準に積み上がったままの状態にあることを示しています。いまだ多くの案件が残っているのであれば、五輪関連の建設投資がピークアウトしても、建設需要が落ち込むとは考えにくくなります。「オリンピックが終わってしまった……」という心理的不安が自己実現的に景気を悪化させてしまう可能性には注意が必要ですが、五輪終了に伴う直接的な景気下押し圧力は軽微であると考えられます。
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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

最終更新:1月27日(月)15時10分

THE PAGE

 

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