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東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋

1月25日(土)5時01分配信 東洋経済オンライン

東芝の子会社で発覚した粉飾決算。日本製鉄の子会社などを巻き込んだ「循環取引」の疑いが浮上している(撮影:梅谷秀司)
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東芝の子会社で発覚した粉飾決算。日本製鉄の子会社などを巻き込んだ「循環取引」の疑いが浮上している(撮影:梅谷秀司)
 東芝の連結子会社、東芝ITサービスで発覚した架空取引が新たな展開を見せている。

 鉄鋼国内最大手・日本製鉄の連結上場子会社である日鉄ソリューショズ、東証1部上場でIT大手のネットワンシステムズ、重電大手・富士電機の子会社である富士電機ITソリューション、さらに、みずほフィナンシャルグループのみずほリースの子会社であるみずほ東芝リースなど、少なくとも5社以上が関与する大規模な「循環取引」である疑いが強まっているのだ。
 循環取引とは、製品やサービスの取引を伴わずに3社以上で架空取引を繰り返すことで、帳簿上の売上高や利益を見かけ上、増やしていく古典的な粉飾決算手法だ。東芝や日本製鉄、富士電機といった業界を代表する大手企業はなぜ子会社の暴走を止められなかったのか。

■架空取引疑惑に投資家は厳しい目

 事の発端は東芝が1月18日、「当社子会社における実在性の確認できない取引について」というリリースを発表し、ITサービスを手がける東芝ITサービスで架空取引があったことを明らかにしたことだ。同社が2019年4~9月期に計上した売上高のうち、約200億円に架空取引の疑いがあり、これは2019年3月期の売上高440億円の実に半分近くに上る。
 東芝は2月14日に2019年4~12月の決算発表を予定している。そこで東芝ITサービスの架空取引分を業績に反映する予定だが、「連結全体に与える影響は少ない」(同社)としている。

 実際、東芝の2020年3月期の売上高は3兆4400億円(会社予想)で、数字上のインパクトは小さい。「(東芝ITサービスは)利益率も低く、利益のインパクトも小さい」(東芝)という。ただ、2015年にパソコン事業などで不正会計が発覚した経緯もあり、子会社で発覚した粉飾決算疑惑に投資家などからは厳しい目が向けられている。
 だが、今回は過去の東芝粉飾決算とは様相がまったく異なる。東芝の陰に隠れて目立たないが、カギを握っているのは東証1部に上場するネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた。現在、弁護士などから構成された特別調査委員会を設置し、調査を進めている。

 両社はともにIT関連大手だ。ネットワンシステムズは、四季報上場業種別のSI・ソフトウエア開発関連194社中の時価総額で第10位。2019年3月期の売上高は1819億円、営業利益は130億円で、アメリカの通信機器大手シスコシステムズ製品関連の取扱比率が約5割と高いのが特徴だ。一方、日鉄ソリューションズはSI・ソフトウエア開発で時価総額第9位。2019年3月期の売上高は2652億円、営業利益は256億円。日本製鉄が約61%を出資する大株主になっている。
■循環取引で破綻する中堅・中小企業が増加

 複数の関係者の話をまとめると、シスコ代理店をしているネットワンがシスコの通信機器などを東芝ITサービスを通じて日鉄ソリューションズに売却する流れとなっている。日鉄ソリューションズはさらに同じ機器をネットワンに売却していく循環取引を繰り返すものだ。輪のようにつながった流れが複数存在しており、その中で富士電機ITソリューションとみずほ東芝リースも組み込まれていた。この5社以外の企業が関わっている可能性もある。
 これは業界用語で「Uターン取引」や「まわし」と呼ばれ、実際の製品の移動は伴わない売買を会社間で回し続け、帳簿上の売上高が増え続ける構図だ。昔からよく使われる循環取引だが、いつかは決済できずに破綻する一方、短期的な売上確保には大きな効果があるため、「麻薬」ともされる。

 今後の焦点はどの会社が主導したかだ。主導した会社以外は知らないうちに循環取引に組み込まれている可能性がある。実際に入金されていれば、経理部門も循環取引に気づかない場合が少なくないという。
 今回の取引の特徴は、どのルートでもネットワンを起点に日鉄ソリューションズからさらにネットワンへという共通の流れがある。東芝ITサービスや富士電機ITソリューション、みずほ東芝リースの3社はいずれも「架空取引であったことを認識していたことを示す事情が認められない」という趣旨のコメントや発言をし、架空取引に主体的に関わったことを否定している。

 関係者によると、東芝ITサービスの担当者はネットワンの担当者から「日鉄ソリューションズに機器販売をしたいが、間に入って欲しい」との話があったという趣旨の説明を調査委員会にしている。その際にネットワンの担当者からは「官公庁の秘匿案件のため、実際に機器を納入するのはネットワンが直接行う」との趣旨だったという。東芝ITの社内からは機器の購入先も納入先もネットワンになっている資料が見つかっており、ネットワンが価格や販売ルートをすべて調整していたのではないかとみられている。
■増える中堅・中小企業の循環取引

 実際に販売先の代理店を通さないで、機器を販売する商慣行自体はIT業界で普通にある。今回は入金も確認されていたため、東芝ITの担当者が架空取引に気づかなかった可能性はある。ただ、東芝ITでは5年前からこうした取引が始まっているとみられ、1件の取引額は数十億円以上に上ることもあったという。東芝ITの売上高はここ数年で急増しており、今後の調査結果が待たれる。

 企業の信用調査などを手がける帝国データバンク横浜支店の内藤修情報部長は、「最近は中堅・中小企業が循環取引で破綻するケースが少なくないが、循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい。売上高が増えていれば(成長会社として)融資を増やす金融機関も多く、被害に巻き込まれている」と話す。
 「1社が資金繰りでおかしくなると、バタバタと連鎖してつぶれる」(内藤部長)ことも循環取引の特徴だ。2019年11月末には、20代女性向けに人気のカラーコンタクトレンズ「DopeWink」などを主力としていたシーンズが民事再生法の適用を申請。負債額は45億円にのぼった。循環取引の噂は出ていたが、取引先1社の破綻をきっかけに数社がつぶれる事態になっている。

 大企業による循環取引も後を絶たない。IT大手のニイウスコーは2008年に過去5会計年度にわたる循環取引で売上高682億円の過大計上をしていたことを発表し、民事再生法適用を申請して事実上破綻。冷凍食品の加ト吉(現・テーブルマーク)は2007年に循環取引が発覚し、日本たばこ産業(JT)に救済された。
 今回の循環取引はまだ全貌が明らかになっていない。ネットワンは1月21日、1月30日に予定していた決算発表を2月13日に延期すると発表した。関係各社の決算発表も今後本格化する。どこまで説明がなされるかが注目される。
冨岡 耕 :東洋経済 記者

最終更新:1月25日(土)8時49分

東洋経済オンライン

 

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