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老後資産を減らさないで済む3つの「お金延命法」

1月25日(土)8時10分配信 東洋経済オンライン

平均寿命は伸びる一方だが、それに見合うだけの蓄えがあるのか。お金も長寿化させるポイントとは? (写真:tsukat/PIXTA)
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平均寿命は伸びる一方だが、それに見合うだけの蓄えがあるのか。お金も長寿化させるポイントとは? (写真:tsukat/PIXTA)
 最近、「資産寿命」という言葉が話題になっています。2019年6月の「老後2000万円問題」の発端となった金融庁の報告書にも出てくる言葉で、「老後の生活を営むに当たって、それまでに形成した資産が尽きるまでの期間」を意味するものです。簡単にいえば、「お金の余命」ということですね。

 このような言葉が出てきたのは、今や単に長生きして「生命寿命」を延ばすだけでは意味がないと考えられるようになったからでしょう。元気に長生きができるように「健康寿命」を延ばし、そのためには好きなことができるようにお金も必要だといわれるようになってきました。「生命寿命」に加えて「健康寿命」と「資産寿命」も大切だと考えられるようになったのです。
かくいう私も最近、『資産寿命』をタイトルにした本を出しました。ただ、この言葉は「資産寿命を延ばすために積極的に投資しましょう」といった文脈で使われることが多いようです。「老後2000万円問題」も、ある意味で「資産寿命を延ばしましょう、そのために自助努力で投資しましょう」ということが含意としてあります。私は、こうした考え方に少し異論があります。

■金融庁の思惑にはまった「投資意識高い系」の人たち

 私の周りの評論家やファイナンシャルプランナー、投資ブロガー、金融機関の人たちは「金融庁の報告書はどこも間違っていない。当たり前の内容だ」と口をそろえます。確かに間違ったことは書いてありません。ただ、その表し方があまりにも軽挙妄動だと私は思うのです。
 「貯蓄から投資へ」を推進したいという金融庁の意図はよくわかりますし、報告書を丁寧に読めば、かなり気を遣って書いてあるということもわかります。しかし、実際に報告書をじっくり読む人は少ないでしょう。金融庁は、報告書に「2000万円」という金額を具体的に示せば、それが誤解を招いたり独り歩きしたりする可能性を十分予見できたはずです。

 昨年の騒動をきっかけに投資を始めた人も多いようですから、そういう意味では金融庁の思惑どおりになったのかもしれません。でも、そうやって投資を始めた人の多くは「意識高い系」でしょう。「投資意欲はあるもののきっかけがなかった」という人たちや、何よりも投資を始めるだけの経済的なゆとりがある人たちなのです。
 「経済的なゆとりがなくても、投資信託であれば100円から積み立てできる」という人もいますが、それは単に「仕組み上可能になっている」というだけの話です。毎月100円ずつ積み立てて10年経っても1万2000円にしかならないのですから、これではとても資産形成とはいえません。それなりに資産形成をしようと思うと、最低でも毎月1万円以上の積み立ては必要でしょう。

 しかし、日々の暮らしの中からそれだけの金額を投資に回す余裕がない人もたくさんいます。そんな人たちにとって、あの騒動はマイナスの結果しかもたらしていません。「真面目に働いても、2000万円なんて貯められない。もう、どうしようもないな」などと、諦めに近い気持ちになった人たちも少なくないでしょう。そんな人たちが、諦めの気持ちから怨嗟(えんさ)の念を強めてしまうと、社会の分断が起こりかねません。それを私は懸念しています。
■あまり知られていない社会保険の「防貧」機能

 今、行政が行うべきことは「投資をしましょう」とピーアールすることではなく、年金や医療といった社会保険について正しい知識を広めていくことです。残念ながら「年金不安」が、多くの金融機関にとっては自社の金融商品を販売するための宣伝文句となり、野党にとっては政府を攻撃するための手段として使われています。

 しかしながら、年金に限らず、日本の社会保険は、多くの人が言うほど不安な制度ではありません。生活保護などの制度が、すでに貧困に陥ってしまった人を救う、いわゆる「救貧」の役割を果たすとすれば、通常の社会保険は貧困に陥ることを防ぐための手段、すなわち「防貧」の機能を持っているものです。
 実際には公的年金だけで生活している人もたくさんいます。私自身、定年退職して起業したものの、まったく仕事のない頃がありました。そんなときも一部支給されていた年金のおかげで、ぜいたくはできなかったものの普通の暮らしをすることは可能でした。

 むろん、生活費がどれくらいかかるかは、その人がどんな暮らしをしたいかによって大きく変わってきます。「定年後は毎年のように海外旅行に行きたい」ということであれば、公的年金だけでは難しいでしょう。そんなふうにお金のかかる生活をしたいのであれば、年金に加えて自分でお金を用意しておくことは必要です。
 ただ、その場合も「投資が必要」というわけではありません。冒頭で触れた『資産寿命』という本も、私がかつて証券会社で働いていたことから、投資を勧める本だと思われるかもしれませんが、私自身、「資産寿命」を延ばすために必ずしも投資が必要とは思っていません。投資以外にも、さまざまな方法があります。「お金の余命」は知恵と工夫次第で、長生きさせることが十分可能であると知ってもらいたいのです。

■3本柱は、健康維持と収支管理と社会保険の知識
 何よりも大切なのは、健康を維持し、できるだけ長く働けるようにすることです。そして、収入だけを考えるのではなく、収支をきちんと管理すること、さらには社会保険の知識を得ておくこと。この3つがまず必要だと思います。投資をするのは4番目か5番目で十分です。

 社会保険の知識がなぜ必要かといえば、私たちは知らない間に社会保険料をたくさん負担してきたのですから、それに見合ったサービスを受けられるのは当然だからです。ところが、多くの人たちが社会保険の給付制度やサービスを知らず、ムダなお金を払って民間の保険に入っています。もったいない話です。
 投資も、それ自体は決して悪いことではありませんが、先の見えない不確実なものにお金を委ねるわけですから、自分でリスクを取る覚悟が必要になります。リスクを取れない人は、投資をする必要などありません。

 「老後の安心のためにも資産寿命を延ばしましょう」という金融機関の誘いには安易に乗らないことです。健康維持、収支管理、社会保険の3つの基本を踏まえたうえで投資をする場合も、自分でよく勉強してから投資すべきです。「資産寿命」を延ばす最適な方法は、投資という「結果の不確実なもの」ではありません。それをしっかり理解しておくべきでしょう。
大江 英樹 :経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

最終更新:1月25日(土)8時10分

東洋経済オンライン

 

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