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アイデアを思いつきで終わらせる人とビジネスにできる人の違い

1月25日(土)6時01分配信 ダイヤモンド・オンライン

良いアイデアとは? Photo:PIXTA
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良いアイデアとは? Photo:PIXTA
● 社員を苦しめる社長の“思いつき” 「良いアイデア」とは何か

 経営コンサルタントの大先輩・一倉定先生は、「アイデア社長は会社を潰す」という名言を残しています。社長であればいろいろとアイデアを思いつくでしょう。しかし、たくさんアイデアを出すことが、いいとは限りません。特にワンマン社長の場合、会議の場で部下が何も発言しない(実態はワンマン社長が聞く耳を持たないために誰も発言しなくなる)ため、会社を成長させることができるのは自分しかいないと思い込んでどんどんアイデアを披露しますが、それがビジネスにつながるのかは別問題です。

 アイデアを思いつくこと自体は悪いことではありませんが、その段階では「思いつき」であり、仮説検証されたものではありません。実現可能性を考えていないアイデアを押し付けても、かえって社員の負担になるだけです。社長に思いつきを「実行せよ」と命じられれば、社員は実行するふりはするでしょうが、うまくいくはずがありません。

 では、ビジネスにつながる「よいアイデア」とはどのようなものでしょうか。私の高校の先輩で、経営者でもある原幸一郎さんの例を紹介しましょう。実際の現場でのお客さまのニーズや不満をどんどんビジネス化し、大成功したのです。
 原さんは、マンションなどの宅配ロッカーのシェアで約7割*を占める「フルタイムシステム」という会社の創業社長です。当初、マンション管理やビルメンテナンスの事業を手がけていたのですが、1983年にマンションに設置する宅配ロッカー(宅配ボックス)を開発し、86年にフルタイムシステムを設立しました。
*「全国マンション市場動向2017年実績・展望」(株式会社不動産経済研究所)をもとに、2019年3月フルタイムシステムにて調査

 原さんはマンション管理を手がけているとき、日中不在にしがちな住民が宅配便の受け取りに苦労していることに気がつきました。管理人が代理で受け取ると、管理人室が荷物だらけになるし盗難に遭うこともありました。近所付き合いがあまりないマンションでは、隣の人に預かってもらうわけにもいかない。そこで不在時にも宅配便を受け取りたいという住民のニーズに応えるために、24時間受け取れる宅配ロッカーを開発したのです。

 しかも、事業が軌道に乗るかどうか分からない段階でコールセンターをつくり、遠隔操作でロッカーの開閉ができ、24時間問い合わせや苦情に対応しました。おかげで宅配ボックスの認知が進み、使い勝手が改善され、住民はもちろん、宅配業者も再配達の回数が減って負担が軽減されました(そのこともあり、環境大臣賞も受賞しました)。

 原さんはさらにマンションの住民の声を聞き、クリーニングの集配や食品の宅配、駐輪場不足を解決する電動自転車のシェアリング事業、フルタイムロッカーを活用してエンジンキーの受け渡しをするカーシェアリング事業も手がけるようになりました。住民が品質の良い農作物への関心が高いことを知ると、北海道の十勝地方に自社農場を作り、安全な野菜の販売や、農業体験のような農園イベントの企画運営を行う会社も立ち上げました。

● 資金に乏しい企業こそ 今ある市場での勝ち方を磨け

 思いつきのアイデアを述べるだけの社長と原さんの大きな違いは、アイデアのベースに社会やお客さまのニーズがあること、そしてアイデアを形にするための具体的なイメージと、そのアイデアをQPS(Quality=品質、Price=価格、Service=サービス)に落とし込んで顧客に提供する行動力を持っていることです。
 しかし、誰でも原社長のような“世界初”と称されるアイデアを思いつくわけではありません。また市場をゼロから開拓するためには資金力も必要です。そこで、私がよく言っているのは、他社がやらないことをやるのが大企業、他社がやっていることを「よりうまくやる」のが中小企業だということです。

 資金に乏しいベンチャー企業にとって、まったく新しいアイデアを検証し市場を創造していくことは容易ではありません。そういう意味では、他社がすでに手がけている事業(つまり市場が存在する事業)を、他社よりもうまくやった方が会社を成長させやすいのです。他社の事業のやり方を徹底的に分析して、QPSのどこで差別化を図るのかを見定めてから参入する。資金力はないがスピード感のあるベンチャー企業にとっては、こうした戦い方にも一理あるでしょう。

 この場面では、必ずしも斬新で素晴らしいアイデアが必要というわけではありません。しかし、自社が何を強みとするのか、きちんと市場や競合他社を分析して戦略を立てること、そしてその戦略を実行するための行動力とやりとげるための強い意志が不可欠です。そのベースとなるのは素直さや謙虚さであることは言うまでもないことです。

 (小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)
小宮一慶

最終更新:1月25日(土)6時01分

ダイヤモンド・オンライン

 

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週刊ダイヤモンド

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2020年2月22日号
発売日2月17日

定価730円(税込み)

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