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監視か、プライバシーか──お金をめぐる新たな戦い【世界経済フォーラム】

1月25日(土)7時00分配信 CoinDesk Japan

監視か、プライバシーか──お金をめぐる新たな戦い【世界経済フォーラム】
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監視か、プライバシーか──お金をめぐる新たな戦い【世界経済フォーラム】
世界の主要な銀行家や政治家が今週、第50回目となる世界経済フォーラムのためにダボスに集まった。彼らのブロックチェーン技術への関心は圧倒的だった。

中央銀行デジタル通貨のためのフレームワーク

「政府が推進するブロックチェーン技術の一番のユースケースは、データ共有」

スタートアップ企業Guangzhishu TechnologyのCEO、チャン・ジャーチェン(Zhang Jiachen)氏はWEFの会場で、そう語った。またジャーチェン氏は、同社は複数の中国の政府機関と仕事をしていると述べた。

参加者の中には、中国人民銀行のCBDC(中央銀行デジタル通貨)開発を大きな期待とともに見守っている人もいる。MIT(マサチューセッツ工科大学)のデジタル通貨イニシアチブ(Digital Currency Initiative)のディレクター、ネハ・ナルラ(Neha Narula)氏は2020年、多くの中央銀行がデジタル資産の実験を行うことは「必然」と語った。これに関連してWEF(世界経済フォーラム)は1月22日(現地時間)、そうしたプロジェクトが必要に応じて国際標準にアクセスするためのフレームワークとして「Central Bank Digital Currency Policy-Maker Toolkit」を発表した。

「タイ銀行はプロジェクト・インサノン(Project Inthanon)と名付けた大規模なCBDCプロジェクトで大きな前進を遂げている」とタイ銀行のウィーラタイ・サンティプラポップ(Veerathai Santiprabhob)総裁はプレスリリースで述べた。

「我々の経験から言うと、ユースケースがもたらすメリットと関連するリスクの間のトレードオフをさまざまな次元で見極める必要がある」

一方、ジャーチェン氏は中国の技術者はフェイスブック(Facebook)のリブラ(Libra)プロジェクトやイーサリアムからインスピレーションを受けていると語った。だが同氏は、どのような取り組みがイーサリアムからインスピレーションを受けているかについて具体的なコメントは避けた。

「中国人民銀行が参加している地域的なデジタル通貨の利用を望む国々のコンソーシアムに我々は参加できるだろうか? それが現実的な選択肢となるかどうかについては、戦略的に考えるべきことが数多くある」とジャーチェン氏はインタビューで語った。

各国でのさまざまな取り組み

ダボスに集まった専門家の多くは、ブロックチェーン技術は独自デジタル通貨ではなく、より多くのデータ収集に利用すべきという点で一致しているようだ。

例えばニジェール大統領の技術顧問のイブラヒマ・グインバ-サイドウ(Ibrahima Guimba-Saidou)氏は、新興国にとっては横領や他の金融犯罪を防ぐためにデジタル・レポーティング・システムを利用することはきわめて重要になると述べた。

「私の目標は2028年までにペーパーレス政府を実現すること」と同氏はWEFの会場で述べた。

「指導者や政府の役人はどのようにして気付かれずにお金を持ち出しているのか? 仮想通貨が防止策となる。ブロックチェーンを使えば、お金がどこにあるかわかる」

中国同様、ニジェールも地域トークンというアイデアに興味を持っているとグインバ-サイドウ氏は述べた。

ビットコインがアフリカの国々で使われるかどうかを見極めることは時期尚早だろうとグインバ-サイドウ氏は続けた。だが、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of West African States)加盟の15カ国はユーロのようなアフリカ共通通貨の発行を議論している。

WEFの金融システムの責任者、マシュー・ブレイク(Matthew Blake)氏は、ユーロは共同での通貨発行はかなり困難であることを示したが、アフリカでのデジタル地域通貨はきわめて理にかなっていると述べた。

ビットコインの進化を見守ることに興味を示しつつも、ブレイク氏は国家がビットコインを使用したり、企業がビットコインを大規模に使うようになることについては懐疑的だった。アゼルバイジャン共和国のミカイル・ジャバロフ(Mikail Jabbarov)国税大臣も同様に、国家が分散型通貨の使用を許可することは想像し難いとCoinDeskに語った。

完全な禁止を示唆したわけではないが、ジャバロフ大臣は主にビットコインの所有に関する顧客確認(KYC)情報の収集について懸念を示した。大臣は投機や違法行為以外のユースケースにおけるビットコインの可能性についても否定的だった。

少なくともグインバ-サイドウ氏の場合、焦点は国民ではなく、役人の金融取引を監視することにある。同様の観点から、民間の金融記録やより広範な監視記録へのアクセスを保護するために、中国人民銀行は先日、データへのアクセスを許可するブロックチェーンベースのシステムの特許を申請した。

「我々は公開鍵インフラを導入する予定」とニジェールのグインバ-サイドウ氏は述べた。

「そうすることで透明性とトレーサビリティー、そこから生じる説明責任を確立できると考えている。それらはすべて、独立した複数の組織が行わなければならない。でなければ、1つの組織が情報を手に入れ、書き換える可能性がある」

プライバシーの問題

実質的に「秘密の銀行口座」を可能にしてしまうビットコイン・ウォレットをめぐる懸念は広がっているとウクライナの反汚職アクションセンター(Anti-Corruption Action Center)の共同創業者、ダリア・カレニウク(Daria Kaleniuk)氏は語った。

インタビューの中でカレニウク氏は、ビットコインマイニング事業も行っている国営の原子力発電所を持つ国家はロシアにとどまらないと語った。この傾向はウクライナやモルドバにも広がっており、ウクライナの新興財閥は国内のビットコイン市場で支配的な役割を握っていると同氏は述べた。

「ビットコインについて力説する政治家がいると、我々はその人物を『ハイリスク』と見なす。ビットコインはプロパガンダキャンペーンに利用できる」

中央銀行のプロジェクトの中には、単なるIDチェックにとどまらないものもある。中国では民間が提供する金融サービスを形成するために、医療データから通信記録まであらゆることに政府のデータを利用する取り組みがすでに行われている。

「政府は多くのデータを保有している」とジャーチェン氏は述べた。

「政府は民間セクターがデータを利用できるようにしたいと考えているが、データの所有権は渡したくない。そこで我々は政府のデータ共有構想をサポートしている」

ほとんどの生データはブロックチェーンに記録されていないとジャーチェン氏は述べた。その代わり、ブロックチェーン技術は元ソースを共有することなく、記録が元ソースで検証あるいは計算されたことを証明するために使用されている。ジャーチェン氏は、そうしたデータをリクエストしたり、アクセスできる人を規制する厳格な方針が作られることを望んでいると語った。MITのネルラ氏もこの懸念に同意した。

「プライバシーは中心的な関心事であり、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を念頭に実装されることを望んでいる」とネルラ氏は語った。

世界経済フォーラム2020(#WEF2020)の今日の最初のセッション。@jerallaireは、ステーブルコインは「コミュニケーションやデータの共有と同じくらい簡単に他の人と決済」することを可能にすると述べ、国家仮想通貨の実現は大きな変革をもたらし、金融包摂にとって「真のディスラプション(創造的破壊)」となると付け加えた。

悲惨な結末を避ける努力

匿名で取材に応じたさまざまな国の個人投資家でさえも、中央銀行の実験に興味を示したが、自身が保有する資産には慎重な姿勢を見せた。

ダボスでデジタル資産について楽観的な見方をしている人たちは、ガバナンスへの依存を減らすためではなく、ガバナンスを改善するための方法として捉えている。

「金融フロー全体を追跡することが容易になり、より良い金融政策を作ることができる。ブロックチェーン・ベースのシステムのおかげで、より良いフィードバックループを持つことができる」とジャーチェン氏は述べた。

デジタル人民元以外の数多くのブロックチェーンはデジタル人民元に似ているものの、国境を超えた取引をターゲットにしていると同氏は述べた。

一方、エコノミストでイーサリアム・コミュニティーの大物であるグレン・ウェイル(Glen Weyl)氏は新興経済国の政治家との会議に忙しい。ウェイル氏は中国の共産主義的アプローチは好きではないが、中国の共同体的・市民的な精神が伝統的資産を超えた価値システムを切り開くために活用されることを期待していると語った。

「最終的にはお金を減らし、より社会的文脈を持った価値形態にする必要がある。中国には社会的な信用が存在し、ある意味では(お金の)社会的側面にはるかに調和している」とウェイル氏は述べた。

悲惨な結末を避けるために、ウェイル氏は世界銀行(World Bank)などの組織と共同で、データ・フリーダム・アクト(Data Freedom Act)の作成に取り組んでいる。これはデータの収集者にデータを保護し、同意なしにデータを濫用しないための「受託者責任と民主的責任」を持つことを求めている。また問題の状況に対処するために、市民に一個人としてよりも大きな力を与えるために「団体交渉」の枠組みを提供することを基盤としているとウェイル氏は述べた。

CBDCの実験についてより広範に語りつつ、WEFの実行委員会のメンバーを務めるブレイク氏は、WEFはCBDCに「関与」し、「積極的に活動」したいと考えていると語った。

翻訳:山口晶子 | 編集:増田隆幸 | 写真:Blockchain thinker Glen Weyl (center, gray blazer) speaks with other attendees of the World Economic Forum Annual Meeting. (Photo by Leigh Cuen for CoinDesk) | 原文:Notes From the WEF: The Coming Battle Between Surveilled and Private Money
CoinDesk Japan 編集部

最終更新:1月25日(土)7時00分

CoinDesk Japan

 

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