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【欧州経済】英国中銀ベイリー次期総裁に問われる経済安定への手腕

1月19日(日)15時30分配信 週刊 金融財政事情

大和総研 ロンドンリサーチセンター長 シニアエコノミスト 菅野 泰夫
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大和総研 ロンドンリサーチセンター長 シニアエコノミスト 菅野 泰夫
〔図表〕BOE総裁候補
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〔図表〕BOE総裁候補
 2019年12月20日、英国中央銀行(BOE)は、20年3月15日をもって約7年の任期を終えるカーニー総裁の後任に、英国金融行為規制機構(FCA)のベイリー長官が就任することを発表した。ベイリー長官は1985年にBOEに入行した生え抜き行員であり、総裁秘書や国際経済分析を担当した後に、副総裁を務めるなど、セントラルバンカーとして広範な役職を経験してきた。さらに、戦後のイラクにおける新通貨発行に携わり、ノーザン・ロックの公的救済を取り仕切るなど、困難な課題にも取り組んできた。FCA長官の経験から、規制・制度面の見識は豊富だ。ただし、金融政策委員会の経験はなく、ブレグジットが決定した今日、今後の英国経済の浮沈を安定させる中銀総裁としての手腕は未知数である。
 中銀総裁選出にあたっては、候補者の実績や、ブレグジットに関するスタンスなどが綿密に調査された。女性で外国出身者という属性からも筆頭候補と目されていた、ミノーシュ・シャフィク氏は、ブレグジットへの反対を公言してきたことが落選につながったとみられている。一方、ベイリー長官は、FCAがブレグジットに対し、特定の見解を持たないと強調したことが功を奏した。ブレグジット後は、EU規制に従うというコンセプトに反対するものの、EUとの将来的な通商関係に関する協定内で同等性認証を獲得することを推奨するなど、政治的な敏しょうさを発揮している。
 だが、就任早々のベイリー次期総裁を迎えるのはブレグジットによる英国経済停滞という荒波だ。EUとの通商協定が締結されない限り、英国の持続的な景気回復は期待できない。通商協定を巡る不確実性により、企業投資は20年を通じても抑制される可能性が高く、賃金に対する下押し圧力や失業率上昇のおそれが生じてくるとの見方もある。
 その際、まずは保守党政府が選挙公約で打ち出した、9年ぶりに実施する財政拡大に期待がかかる。しかし、その景気刺激効果は、ブレグジットがもたらす英国経済の停滞の影響を部分的に相殺する程度にとどまるだろう。ブレグジット直後に想定される大きな景気減速と公的支出拡大によるインフラプロジェクトの完成にかかる時間のタイムラグがあるためだ。
 だが、BOEでもブレグジットの荒波に備える政策ツールは限られている。ブレグジット後のポンド安への警戒から、躊躇なく利下げすることは難しい。総裁任期は8年間に及ぶため、これから続く荒波を乗り越えるには、ポリシーミックスの推進に向けて政府と緊密に協力する関係を構築するなど、ベイリー次期総裁が得意の政治的スキルを存分に発揮することが求められる。(「週刊金融財政事情」2020年1月20日号より転載)
大和総研 ロンドンリサーチセンター長 シニアエコノミスト 菅野 泰夫

最終更新:1月19日(日)15時30分

週刊 金融財政事情

 

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