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台湾人と中国人の考え方が天と地ほど違う訳

1月18日(土)6時10分配信 東洋経済オンライン

筆者は今年も4年に1度の台湾総統選に行ってきた。現地で見た台湾は、中国とはまったく異なるところだった(写真:AP/アフロ)
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筆者は今年も4年に1度の台湾総統選に行ってきた。現地で見た台湾は、中国とはまったく異なるところだった(写真:AP/アフロ)
 台湾の総統選挙(1月11日)の熱気を感じようと、筆者は今回も彼の地へ出張してきた。選挙結果は周知の通り蔡英文氏の圧勝だったが、翌日、少し時間があるから、「台北101」に行ってみようと思いついた。

 4年に1度、総統選挙が行われるたびに台湾に来ているのに、まだ1度も登ったことがなかったからである。本当は「台灣高鐵」こと新幹線にも乗ってみたかったのだが、そこまで暇ではない。その点、「台北101」ならMRT(地下鉄)ですぐに行って帰ってこられそうだ。
■2004年時は世界一だった「台北101」

 「今さらなあ…」という気もする。台北市のこの超高層ビルは、その名の通り地上101階建て。高さ509.2メートルは、2004年に完工した時点では世界一の高さであった。

 ところがその後、ドバイのブルジュ・ハリファという828メートルの超高層ビルができたので、有難味はかなり失われている。ちなみにこのドバイのお化けビル、2年前に行ったけれどもあまりに浮世離れした代物で、なんだか展望台に上がる気にはなれなかった。
 その点、「台北101」は施工が熊谷組で、エレベーターは東芝製と聞く。いわば日台合作の高層ビルである。ここはひとつ、応援だと思って訪ねてみることにした。

 到着してみると、この手の高層ビルは世界中どこでも似たようなものであった。5階まではショッピングモールで、万国共通のブランド店が並んでいる。オフィス階にはグーグルやマッキンゼー、日本企業では野村證券などが入っているようだ。

 展望台への入場料は一般600NTD(ニュー台湾ドル)。日本円にして2200円くらいか。日曜日であったが、5分ほど行列するとすぐに入れた。東芝製エレベーターは、日本では出せないような速さで一気にてっぺんまで駆け上がる。
 高層からの360度の眺めは、まあ、どうということはなかった。それよりも驚いたのは、さりげなく表示してあったのだが、このビルは既に世界第12位に「転落」しているのである。

 2004年時点では確かに世界一だったのに、1位であるドバイの化け物はさておいて、この間にこれだけ高層ビルが新しく建っているのだ。
 
2位:上海中心 (上海)  632m 2015年
4位:平安国際金融中心 (深セン) 600m 2016年
5位:高銀金融117 (天津)  597m 2016年
8位:CTF金融センター (広州)  530m 2016年
9位:天津CTF金融センター(天津)530m 2017年
10位:CITICタワー (北京)  528m 2018年

 いやはや恐れ入った。ここ数年の間に、大陸側に「台北101」を超える新しい高層ビルが6つも誕生しているのだ。こんな事実を突きつけられて、台湾の人たちの心中はいかばかりか。まるで中台の経済関係の逆転を、見せつけられているようではないか。
■2010年頃から中台の力関係が変わった

 このビルが誕生した2000年代は、まだまだ中国に対して台湾の方が優位であった。中国は常に外国の技術や投資を求めており、台湾のハイテク企業は優遇措置を受けて、大陸に工場をどんどん建てた。2007年に登場したアップル社の初代iPhoneも、鴻海の中国工場がなかりせば、あれだけの成功を収めることはなかっただろう。そして台湾の若者にとっては、「大陸に渡ればチャンスがある」という時代が長く続いた。
 2010年に中国が日本を抜き、「世界第2の経済大国」に浮上した頃から中台の関係が変わり始める。この年、国民党の馬英九政権は中国との間で、事実上のFTAとも言うべきECFA(Economic Cooperation Framework Agreement=両岸経済協力包括合意)を締結する。なぜか途上国である中国がより多くを譲歩し、先進国である台湾がよりメリットを得るという不思議な貿易・投資協定であった。この頃から、「台湾はひょっとすると、中国に呑みこまれてしまうのでは…」という不安が募り始める。しかし2012年の総統選では、馬英九は民進党の蔡英文候補の挑戦を軽く退けて再選したのである。
 その後、馬英九政権は中国とのさらなる経済連携強化を目指し、「海峡両岸サービス貿易協定」を締結する。ところがこの法案の批准が難航する。2014年3月、法案への反対デモに参加した学生たちが、台湾の国会である立法院を占拠してしまう。世にいう「ひまわり学生運動」の始まりである。

 学生たちによる立法院の占拠は1カ月近くに及んだ。もちろん違法行為なのだが、不思議と平和的な運動であって、世論の受けも悪くなかった。学生たちに食料を差し入れる市民がいた一方で、馬英九政権の支持率は1割程度まで急低下した。結局、政府は譲歩を迫られ、学生たちは大手を振って立法院から退去した。そしてサービス貿易協定は、今に至るも発効していない。
 ちなみにこの年の秋、台湾の動きに便乗するかのように、香港では「雨傘運動」が始まっている。香港における民主主義の後退に抗議した学生たちが、金融街セントラルを占拠したのである。

 こちらは香港政府の厳しい弾圧を受けて、学生たちはほろ苦い思いを抱えて撤退することになる。そして、2019年6月から今日に至る香港デモの導火線となっていく。台湾と香港における政治のシンクロニシティは、実はこの頃から始まっている。
■選挙戦はネット空間に「完全移行」

 振り返ってみると、台湾が中国に対して優位であった2000年代と、中国が台湾を呑み込もうとし始めた2010年代とは、中台関係の景色はくっきりと変わっている。それでは2020年代の中台関係は、これからどうなるのだろう? 

 1月11日の台湾総統選挙に合わせて、現地に乗り込んだ筆者の目に飛び込んできたのは、前回(2016年)や前々回(2012年)に比べると、看板もポスターもめっきり少なくなった台北市内であった。「昔の台湾選挙は、もっとお祭り騒ぎだったけどなあ…」とぼやいたところ、現地のジャーナリストに即座に否定された。
 「違うんです。選挙戦がネット空間に移行してしまったので、看板におカネをかけても無駄なんです」

 台湾の人たちはSNSが大好きだ。何しろLINEの普及率が96%、フェイスブックは79%だという。「LINEに入っていない」と正直に言ったら、さる台湾人女性ジャーナリストは「信じられない!」と叫んで筆者のスマホを取り上げ、そのままアプリをインストールされそうになったくらいである。

 各選対陣営がどれほどSNSに力を注いでいるか。今回、再選された蔡英文総統は、いつも中国語と英語と日本語の3カ国語でツイッターを発信している。この日本語が信じられないくらい高度なのである。例えば1月1日、新年のツイートはこんな文面である。
 
 蔡英文 Tsai Ing-wen‏認証済みアカウント @iingwen 1月1日

 o 新年あけましておめでとうございます。 皆様におかれましては希望に満ちた令和最初の新春をお迎えのことと心からお慶び申し上げます。 本年は台日関係が一層深まるとともに、皆様一人ひとりのご健康とご多幸を、心よりお祈り申し上げます。

 o 「世の中をゆり直すらん日の始め」

 たぶん日本語ネイティブ、もしくはそれと同等のスタッフが総統府にいるのであろう。でなきゃ「ゆり直すらん」なんて言葉は出てこない。日本語がこうであれば、中国語や英語はどれだけ手が込んでいることだろう。これはもう、看板やポスターに手間暇をかけている時代ではない。
 そして案の定、ネット上では無数のフェイクニュースが飛び交っている。大陸は台湾の選挙に介入、干渉し、あわよくば国民党の韓国瑜候補を勝たせようとし、それが無理でも台湾の民主主義に対する信頼を失わせようとしている。今回は中国から距離をおこうとする蔡英文総統が大差で再選されたけど、将来を楽観できる状態ではない。

■中台関係は波乱含みで推移する

 中国の習近平国家主席は、「一国二制度」による和平統一をあきらめないだろう。それがダメなら武力統一を辞さず、とまで言っている。しかるに中国に統一されて、「中華民族の偉大なる復興」を寿(ことほ)ぎたい、などと考えている台湾人はごくごく少数派である。昨年11月、中国が台湾への優遇政策を発表した際に、CCTVの女性キャスターが「台湾ちゃん、帰っておいで(湾湾、回家吧)」と呼びかけたところ、台湾のネットは炎上した。
 1月25日にアジアは春節を迎える。24日の夜には、「台北101」は盛大に花火を打ち上げて旧正月の到来を祝うだろう。その情景は、大陸側の高層ビルと大差ないはずだ。文化的には同じ中国人。しかるに考えていることは天と地ほど違う。われわれの眼から見ても、まったく別の国である。

 結論として、2020年の中台関係は波乱含みで推移するだろう(本編はここで終了です。次ページでは競馬好きの筆者が週末のレースを予想します。あらかじめご了承下さい)。
 ここから先はお馴染みの競馬コーナーだ。筆者が台湾から帰国したのは13日月曜日の午後であった。成田空港から家に帰る途中、電車の中でフェアリーステークスとすばるステークスをネット経由少しだけ買ってみた。3000円浮いた。いやあ、旅の疲れが吹っ飛びましたなあ。勝ちはすべてを癒してくれるのである。

 今週末(19日)は日経新春杯(京都競馬場、G2、芝2400メートル)が行われる。古馬のハンデ戦だが、過去10戦で4歳馬が7勝と、若い馬が活躍する重賞レースである。
■日経新春杯は「女炎鵬的牝馬」メロディレーンから

 となると、今年も4歳馬に目が向く。まずは昨年秋の菊花賞6着から直行するレッドジェニアルで、過去に京都競馬場で2勝しているので、これは順当なところ。

 しかしこのレースには、菊花賞5着だった牝馬メロディーレーンも出走する。こちらは340キロ前後と超小型で、相撲取りで言えば炎鵬みたいなタイプである。斥量は49キロと、前走から4キロ減と恵まれている。どうせなら、こっちから狙ってみたい。
 穴馬には5歳馬だが、過去に7戦しかしていないレッドレオンが面白い存在だ。2年前には、同様に6歳馬でもキャリアが少なかったパフォーマプロミスが勝っている。大事なのは年齢よりも鮮度、と心得たい。
かんべえ(吉崎 達彦) :双日総合研究所チーフエコノミスト

最終更新:1月18日(土)6時10分

東洋経済オンライン

 

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