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外国人が「ラーメン」に感じる超高いハードル

1月18日(土)5時40分配信 東洋経済オンライン

外国人にも人気のラーメンだが、日本で「初心者」が食べようと思うとそのハードルは意外と高い(写真:kuri2000/PIXTA)
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外国人にも人気のラーメンだが、日本で「初心者」が食べようと思うとそのハードルは意外と高い(写真:kuri2000/PIXTA)
 ご無沙汰しております。 アナスタシアです。ついに待ちに待った2020年が始まりましたね。今年は東京オリンピック・パラリンピックの年。多くの方にとって、思い出に残る年になるのではないでしょうか。

 ギリシャはオリンピック発祥の国、そして今回は日本での開催ということで、ギリシャ人で日本人の伴侶を持つ私もとても楽しみです。2004年にアテネで開催されたオリンピック・パラリンピックでは、バレーボールの試合とパラリンピックの閉会式を会場で見ましたが、今でもはっきりとその様子を覚えています。競技だけではなく、海外から日本を訪れる人にとっては、日本という国に触れる、またとない機会になるはずです。
■ついにこの味に出会ってしまった

 今回の東京オリンピック・パラリンピックでは、埼玉県の三郷市がギリシャのホストタウンとして登録されていて、ギリシャの陸上チームが本番前にキャンプを行う予定です。私も夫と一緒に、三郷市の取り組みに協力させてもらっています。先日も三郷市へ行って、いろいろと打ち合わせをしたのですが、そこで思わぬ出会いがありました。

 一通り打ち合わせが終わり、「食事でも一緒に……」という流れになりました。職員の1人がラーメン好きということで、オススメのお店へ行くことになりましたが、そこで出会ってしまったのです、油そばに! 
 ギリシャ人は濃い味が好きなので、ラーメンよりつけ麺を好む人が多いのですが、私の中で油そばは完全にその上を行っています。一口食べた瞬間、醤油ベースのタレの味がガツンと来て「これだ!!」と思い、一気に食べ終えてしまいました。

 ヨーロッパでもラーメンの人気は高まっていて、「毎日ラーメン健康生活」を掲げるユーチューバーのすするさんではありませんが、日本に来たら毎日ラーメンを食べたいと考えている人も少なくありません。スウェーデン人で剣道家の友人は、毎日のように食べたラーメンをインスタグラムに投稿していたので、「ラーメンが好きすぎるスウェーデン人」として、日本の稽古仲間の間ではちょっとした話題になっていました。
 私の住むギリシャでも、ラーメン愛好家は存在します。ギリシャでも大人気のアニメ「NARUTO -ナルト-」ではラーメンを食べるシーンが出てくるので、それをまねしようとラーメンを食べる人は結構います。

 ただギリシャでは、本格的な日本風のラーメンを食べるのは難しいため、そういう人はインスタントラーメンを買って家で食べたり、アジア料理のお店でヌードルを食べたりしていましたが、最近ようやくアテネにもラーメン専門店ができました。
 日本で数カ月研修したスタッフが作るラーメンは、なかなか本格的です。10代、20代の若者の間では、日本と言えばすし、と言われるほど、おすしが人気になりましたが、これからはラーメンもそうなっていくかもしれません。

■すぐに「バリかた」と答えられれば…

 ただ、日本に慣れていない外国人が、日本でラーメンを楽しむのは少し難しいかもしれません。日本のラーメン屋には、独特のやり方があって、それを正しく迅速に行わないといけないからです。
 例えば、先日福岡でラーメンを食べたとき、食券を渡すと麺の硬さを聞かれました。そのことを知らなかった私は、面食らってしまい動揺してしまいました。すぐに「バリかた」と答えられていたら格好よかったのに……。悔いが残ります。

 オリンピック・パラリンピックで日本を訪れ、ラーメンを楽しみたいと考えている外国人も多いと思いますが、外国人が日本人のように振る舞うのは少し難しいかもしれません。そんなとき、少し広い心を持って対応してくれたら、外国人にとって大きな助けになるはずです。そこで、今回は日本のラーメン屋さんで外国人が戸惑いがちな点について、詳しく見ていきたいと思います。
 まず注目したいのが、自動券売機です。外国人にとって、これはなかなか見ないシステムですので、スムーズに食券を買うのは難しいはずです。

 有名店ともなると外国人のお客さんもたくさん来るということもあってか、英語のできる店員さんが自動券売機の横にいて、外国人のお客さんを手伝うこともあるようですが、それでも難しくて時間がかかってしまうことも多々あります。そんなときの気持ち、わかります。私にも苦い経験があるからです。
 浦和のあるラーメン屋さんのつけ麺を食べようと思ったときのこと。お店に到着し、順番待ちの列に並んで待っていました。私のプランはつけ麺と煮卵です。魚介系濃厚スープのつけ麺もおいしいですが、それより私がいつも楽しみにしているのが煮卵です。醤油で甘辛く煮込まれた卵は絶品ですね。それが半熟だったらもう、言うことはありません。

 いよいよ自分の順番が来ました。お金を入れ、まずはつけ麺用の食券を購入。 ここまでは順調です。ところが問題は煮卵。ボタンが多くて、煮卵のボタンがなかなか見つかりません。時間がかかると余計に焦ってしまって、時間だけが過ぎていきます。カウンター越しの店員さんの視線も気になります。外で待っている方々からの黒く、電気が流れているような雰囲気も背中に感じます。
 普段なら簡単にできることが、プレッシャーを感じた途端、突然難しくなる。そんな感じでした。そうこうしているうちにお釣りが出てきてしまい、時間切れ。楽しみにしていた煮卵は、泣く泣く諦めました。自動券売機でスムーズに買うためには、経験が必要ですね。

■初めて一蘭で食事をしたときの驚き

 外で並んでいて、食券だけ買ったらまた外で待っているというシステムも、自動券売機で食券を買うことを難しくしている原因かもしれません。自分が券を買う順番が来たときだけ中に入るので、前の人が買っている様子をみることができません。何も情報のない中で、パッと券売機の前に立たされては、いくらその場をやり過ごすことが得意なギリシャ人でも歯が立ちません……。
 2点目は、ラーメンを食べている間、話をしないことです。時代劇なんかでは、食事をするときには話をせず、静かに食べているシーンをよく見ますが、昔からそういった文化があるからか、日本には食べているときに話しづらい雰囲気のあるお店もありますね。ラーメン屋さんでは、この傾向が強いように感じます。

 そのいい例が、一蘭の「味集中カウンター」です。初めて一蘭で食事をしたときは、訳がわかりませんでした。一つひとつ区切られているので、初めは仕事熱心な日本人のことだから、皆ラーメンが運ばれてくるまで仕事をしているのかな? と思っていましたが、それは間違いでちゃんとラーメンを食べていました。
 戸惑いながら席につき、ラーメンが運ばれてきましたが、そのとき、なんだか懐かしい感覚に陥りました。区切られた空間に、ラーメンと私。そう、剣道の試合をしているような感覚でした。剣道も試合場に入れば、基本的には監督やコーチは指示が出せないので、自分1人で相手と戦わなくてはいけません。その感覚に似ていました。まさに、ラーメンとの真剣勝負!! 

 その日の勝負は、麺はすべて食べたものの、スープを飲み干すまでには至らず、私の完敗でした。言い訳になってしまいますが、あの濃厚なスープは、飲み会の後だった私にとっては難敵でした。ちなみに、隣で食べていた夫は、その濃厚スープを物ともせず、最後までスープを飲み「この一滴が最高の喜びです」の一文を誇らしげに見つめていました。さすがです。
 一蘭での勝負に少し熱中しすぎてしまいましたが、これは日本人ならではの発想ですね。一生懸命作った料理をお客さんも集中して真剣に、一生懸命味わうのが礼儀、と考えているのかもしれません。

■ヨーロッパ人は食事しながら会話を楽しみたい

 一方で、ギリシャ人もそうですが、ヨーロッパの人は基本的に、食事をしながら会話も楽しもうとします。新横浜ラーメン博物館に行ったとき、多くの外国人観光客がいましたが、彼らは普段の食事のように話しながら食事をしていました。もちろん時間がかかるので、麺が伸びてしまい、スープも冷めてしまっていたようですが、これが彼らのスタイル。
 もし彼らがラーメン屋の真剣な雰囲気の中に入っていったら、その雰囲気に戸惑ってしまいそうですね。

 そして3点目は、「熱々」なうちに食べることです。2点目と少しかぶってしまいますが、これも日本独特なことではないかと思います。ラーメンに限らず、たこ焼きやお好み焼きなど、日本の食べ物って熱いものが多いですよね?  そして、熱いものを熱いうちに食べるのがよいとされているように思います。

 「冷めないうちに食べちゃいなさい」という言葉も、よく耳にします。ただ、この熱いものを食べるのが本当に難しい!  ラーメンをすするのもその1つですが、私もこの技術をマスターするまでには、結構時間がかかりました。
 以前、ギリシャから剣道の生徒を連れて日本へ来たとき、2人の生徒はラーメンを食べることをとても楽しみにしていました。日本での最初の稽古が終わり、夫の高校時代の先生が食事に誘ってくれました。ラーメン以外にも選択肢はありましたが、日本でラーメンを食べることを心待ちにしていた2人は、迷わずラーメンを選びました。

 ラーメンが到着し、1人が早速麺を口に運びましたが、その瞬間、熱さにビックリした猫のように飛び上がりました。あまりの熱さに驚いたようです。それを見ていたもう1人は、慎重に食べないといけないと思ったのか、スパゲティを食べるように、フォークとスプーンを使って食べていました。しかも、「フー、フー」と念入りに冷ましてから。
 こんな調子だったので、食べ終わるのに30分以上かかりました。周りにいた日本人からすると面白かったみたいですが、ラーメンを食べていた本人たちは必死で、ようやく1杯を食べ終えたという感じでした。

 このことからもわかるように、ラーメンをすするのは、外国人にとってとても難しいことです。すすることによって、麺と一緒に空気を吸い込めるので、熱いものも食べられると聞いたことがありますが、そもそもヨーロッパの人はそんなに熱いもの食べる機会が多くありませんし、熱すぎれば適温になるまで待ちます。
■広い心を持って対応してほしい! 

 たまに夫は、アテネの日本食材店で日本のブランドのカップラーメンを買って食べていますが、あまり食べた気がしないそうです。なぜかと言うと、麺が日本のカップラーメンのものより短く、麺をすすらなくても食べられるようになっているからだそうです。これだと、日本人にはちょっと物足りないかもしれませんね。

 以上の3点以外にも、外国人が戸惑ってしまうことは多々あると思います。日本は規律がしっかりしていて、ルールを守る人が多いので、どうしても外国人の振る舞いが少しルーズに見えてしまうかもしれません。
 ラーメン屋さんには、その店ならではの美学を持っているお店も多いですし、お客さんがそのしきたりに従うことも含めて、そのお店で食事することなのではないかと思います。確かに、それもすばらしい文化だと思いますが、冒頭書いたように、戸惑っていても広い心を持って対応していただけると、そのぶん外国人もハードルを高く感じなくて済むはずです。

 日本人に比べると、マイペースな人が多いかもしれないけど、寛容に受け入れてもらえるとうれしいです。でも、度がすぎるようだったら、怒っても大丈夫ですよ!! 
アナスタシア・新井・カチャントニ :通訳、翻訳家、ライター

最終更新:1月18日(土)5時40分

東洋経済オンライン

 

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