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日本の「アパレル危機」の想像以上に大変な実態

1月16日(木)5時53分配信 東洋経済オンライン

再開発が進む渋谷駅前。建築ラッシュの一方、昨年のアパレル業界界隈では……(写真:genki/PIXTA)
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再開発が進む渋谷駅前。建築ラッシュの一方、昨年のアパレル業界界隈では……(写真:genki/PIXTA)
 「渋谷ダンジョン(迷宮)」とも呼ばれる渋谷駅。駅周辺の再開発で道は複雑に入り乱れ、東京に慣れているつもりでもまるで初めての場所に来たような感覚に襲われる。まるで映画の『ブレードランナー』のように。先日改修工事が終わったばかりの銀座線も、動線が悪いといった不満が聞かれる。

■アパレル業界界隈の”異変”

 オリンピックを控え、東京ではビル開発が急ピッチで進む。Googleの日本本社が入る渋谷ストリーム(東急不動産)、昨年11月に開店した渋谷スクランブルスクエア(東急など)、渋谷パルコ(J.フロント)のリニューアルオープン、12月には東急プラザ渋谷(東急不動産)、2020年春には宮下公園跡に三井不動産が開発する商業施設のオープンまで。デベロッパーが仕掛けるオープンラッシュが続く。
好景気の象徴のような建築ラッシュの横で、アパレル業界界隈では昨年、いくつかの衝撃的な話題があった。フォーエバー21の破産、本国バーニーズNYの破綻、そしてオンワードホールディングスが発表した2020年2月期の業績見通しの大幅な下方修正だ。

 修正後は営業利益が12億円(修正前は55億円)、純損益が240億円の赤字(同55億円の黒字)。事業整理損など約250億円の特別損失となる見通しだ。不採算ブランドの国内600店舗を閉鎖するという報道もあったが、12月には資本金を中小企業レベルの1億円に下げるというニュースまで飛び出し、業界関係者を騒然とさせた。
 厳しいのはオンワードだけではない。同業の三陽商会も今年度の上期は黒字予想だったのが、営業損失は8.6億円、最終損失6億円という結果となった。

 アパレル大手が、事業モデルの転換期にあることは確かだ。ユニクロが過去最高益を出す一方、百貨店依存だったアパレル大手の業績は軒並み厳しい。

 百貨店も不採算店のクローズを続々と決めている。とくに地方都市では駅前の一等地の退店が相次いでいる。徳島そごう、伊勢丹相模原店、かつては地域の最高級の百貨店であり、地域の上顧客をしっかり押さえた外商が機能していた店だ。
 駐車場を完備した郊外型大型店に押され、苦渋の決断として、地方百貨店が潰れていく。

 地方百貨店の閉鎖と同様、地方のアウトレットや大型モールでも一部ではすでに空床化が問題になっている。上記のようにメーカーがブランドの閉鎖や店舗の削減をする中、かつて何百ものショップが詰まっていた売り場が埋まらなくなってきた。

ここ最近、好調と言われるコスメブランドで埋めたり、フードエリアを拡大したりと、店舗構成を変えてきてはいるものの、テナント撤退によってできた穴を埋めるのは難しい。とくにスペースが大きかったフォーエバー21、アメリカンイーグルなどの大型SPAブランドの撤退など、ファッションテナントの減少は進み、どこも苦戦している。
■多様化する購買チャネル

 ここ10年程、消費者にとっては当たり前の購買チャネルの多様化に、業界側はかならずしもついていけていない。

 百貨店、ショッピングセンター、アウトレット、駅ビル、ECでもアマゾン、ZOZOTOWN、楽天などのECモール、自社EC、また最近ではインフルエンサーがインスタから直接ECに誘導するなど“買い方”は多種多様になっている。加えて、メルカリなどフリマアプリまで出てくると、欲しいものをどこで見つけるかはさまざまだ。わざわざ行く百貨店より、スマホで比較購入もできてしまうECショッピングの手軽さがより進化している。
 大型のショッピングセンターの煩わしさ。車を駐車して、広い店内で疲れ、欲しいものが見つからないストレスより、ECで欲しいものが手軽に家に届くのであれば、リアル店舗の消費者離れが起きることも避けられない。

ここ数年、ショッピングセンターの出店は鈍化している。同様に、退店テナントも増えている。ファッション系だけでなく、インテリア、スポーツ、ホビー、飲食なども苦戦が続いている。

 既存のショッピングモールなどは依然、高い出店料がかかる。ファッション系であれば内装費用も店内平均坪当たり120万円くらいからかかる。10坪くらいでも1000万円は優に超えるのが現状だ。大手企業でなければ出店のハードルは高い。空床化していても、若いブランドが入りにくい背景がここにある。
 しかし、「いい話がない」と一概に言い切るのは危険だ。人気スタイリストである藤原ヒロシ氏がキュレーションする「ザ・コンビニ」のナイトマーケットは、ミレニアル世代の若者で大盛況だし、相変わらず原宿のゴローズには行列ができている。「売れない」のでななくて、消費者が「必要のないものを買わない」に近いのではないだろうか。

 20代たちと話していると、「買う」こと自体を避けているのではないということを感じる。むしろ、無駄なものを買うことへの罪悪感が大きい。
 ある女子大生(22歳)は、「ファストファッションはすぐゴミになってしまうからできるだけ買わない」と言う。自分の好きなデザイナーズブランドをシーズンにお小遣いをはたいて、数点だけ買って、大切に着る。

 一方で「ユニクロは質がよく、コスパがいいから買う」という。大好きなブランドやアイテムがあれば、公式サイトやセレクトショップのECを見たり、メルカリもチェックしながら探し当てて買うなど、コスパ意識が発達している。
 そんなミレニアル世代が立ち上げた環境保護運動組織「Extinction Rebellion」の呼びかけで、52週間(1年間)新しい服を買わないファッションボイコットキャンペーン「#boycottfashion」が始まっている。

 世界中で50万人を超える若者たちが気候変動のために行動を起こす現在。リサイクルやアップサイクルされた衣類のみを手に取るよう呼びかけるこの運動が、Z世代を中心に支持を集め始めている。
 インフルエンサーのぷるこ(@purukousagi)さんは自分でブランドをプロデュースしていたが、「余剰の服が廃棄されることがわかって、一旦新作を作ることをやめる」と宣言した。

 昨年は環境サミットにおける当時、16歳のグレタ・トゥーンベリさんのメッセージが大きな話題になった。自分たちの未来の地球がどういう環境になるのか?  ミレニアル&Z世代が強い意志でサスティナビリティーへの関心を強く持っていることは確かだ。
 これから淘汰されていくのは「過剰」なものだ。オーバーストア、オーバーサプライ、オーバープロダクション。これらが生み出す「無駄」は、環境破壊につながる。それを敏感に感じているのが若者世代である。

■新たなリテールのムーブメント

 昨年11月にリニューアルオープンした渋谷パルコのオープニングは活況だった。新旧の日本ブランドが並び、初出店ブランドや初業態が並び、ラグジュアリーブランド、地方名産品、アートやポケモンセンターまで、本来の渋谷のエネルギーを閉じ込めたフロア構成。往年の渋谷を知る人にとっては音楽の殿堂であったWAVEが新たに復活したことも話題となった。
 一方で昨年9月に表参道のワールド本社ビルの1階で開催された「246st MARKET」では、基本店舗を持たないD2C(Direct to Consumer)ブランドが15社集まり、10日間にわたり、POP-UP型百貨店”を開催した。ここでは普段ECを中心に集客しているブランドたちが、期間限定の店舗を開くことで新顧客を獲得したり、既存ユーザーとのコミュニケーションをするなど、リアルではできない体験、情報収集をした。
 そのブランドたちの取材をすると、「表参道ならではの新しい顧客を獲得できた」「実際に商品を手にすることで、顧客とより深いコミュニケーションができた」「買わなかったお客様から、“こういうものを作ってほしい”などの意見が聞ける」など大方ポジティブな意見が多かった。

 リアル店舗の役割は、単なる売り場から変化してきている。

売り手側
・新規顧客獲得
・ユーザーとのコミュニティ
・情報収集基地
買い手側
・ECでは体験できない出会い
・手に取れて、試着ができること
・作り手の思いに触れること
 前出の「246st MARKET」開催中に印象的な場面があった。「Beyond the reef」というカゴとニットを合わせたバッグブランドがある。そこが開催した編み物ワークショップ。教えるのはブランドを立ち上げた女性の70代の義理の母。編み物の先生として、ユーザーをネットで集い、小学生から年配の方まで、8名ほどのグループで編み物講習をする。2時間ほどで小さなバッグが完成。その間、笑い声が絶えず、買うだけじゃない、作る楽しみもシェアしていた。
 先日、実家近くの水戸で聞いたことだが、大洗にあるアウトレットでも、空床問題は深刻なのだそうだ。都会と同じ利便性を求めて地方に誘致されたショッピングモール。地元の個人商店があおりを食って、続々と廃業した。しかし、オーバーストアのあおりを受けここ数年、ここでも空床問題は深刻だ。

 だが、そのあいた空間に今、地域の手作りサークルが小さなお店を出し始めているのだという。地域の有志で破格の値段で場所を借り、そこに自分たちで作ったアイテムを置いたり、ワークショップを開いて、地域の女性たちで集まったりと、あらたな“地域活性”の拠点となり始めているのだという。
 こういった“体験”型ショップも小売りの原点回帰現象の1つだ。

 どこでも買える何か、ではなく、ここでしか出会えない何か。

 均質化したショッピングモール、モノ余り、供給過多、オーバーストアという今のリテールの次の形とは何か?  次回はアメリカで起きている、リテールの大変革について、現地レポートを含めてお伝えしたい。
軍地 彩弓 :編集者

最終更新:1月19日(日)11時05分

東洋経済オンライン

 

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