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外国人労働者に頼る「人海戦術」が、日本経済の停滞を招くヤバい現実

12月15日(日)11時00分配信 マネー現代

写真:現代ビジネス
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(文 清水 洋) 12月4日、経済学者にして歴史人口学の泰斗であった、速水融・慶應義塾大学名誉教授が90歳で亡くなりました。

 速水さんは、18~19世紀のイギリスで起きた、資本(機械)によって労働生産性を向上させた「産業革命」(industrial revolution)に対して、16~17世紀の日本においては、資本(家畜)の労働を人間が肩代わりすることによって労働生産性を向上させた「勤勉革命」(industrious revolution)が起きたと提唱して、世界の経済史研究に大きな影響を与えました。

 速水さんの「勤勉革命」論は、単に江戸時代の日本の経済成長の仕組みを解き明かしたのみならず、経済成長を取り戻すために四苦八苦している現代の日本人にとっても、大きな示唆を与えてくれます。

 拙著『野生化するイノベーション』から、速水さんの「勤勉革命」に関する議論を再構成して紹介しましょう。

働かなくなった日本人

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 近年、長時間労働が問題になっていますが、労働時間に関する調査によれば、じつは昔に比べて日本人の労働時間は徐々に減っています。今は週休2日が普及していますが、以前は土曜日も勤務日としている企業がほとんどでした。

 また、1948年以降、国民の祝日も徐々に増えています。現在でもブラック企業問題は深刻ですが、平均的に見ると労働時間は減っているのです。

 日本の成長会計のグラフを分析すると、「高度経済成長期」から「安定成長期」までは、働いている人の数の変化はそれほどないことがわかります。むしろ、働く人の数は、1975年から1995年の期間では16%増えています。およそ5600万人だったのが、1995年には6700万人ほどに増加したのです。

 しかし、労働時間はといえば、実はそこまで増えていません。

 下記の図は労働時間を労働者数で割ったものです。つまり、ざっくりではありますが、平均の労働時間です。

 1970年には日本は2243時間でした。そのときのOECDの平均は1945時間ですから、当時の日本人は他の先進国の人より長時間働いていたということになります。ところが、その後、日本人の労働時間はどんどん少なくなっていき、1990年代後半にはOECDとほぼ同じ水準になっていることがわかります。

今さら「勤勉革命」は起こせない

 では、日本がかつての成長を取り戻すためには、私たちがもっとたくさん働けば良いのでしょうか。しかし、私たちは経済成長のために生活しているわけではありません。生活の質こそが大切です。

 考えるべきは、働いている時間をどうしたらもっと充実したものにできるのか、働く時間をもっと少なくして、同じだけ(あるいはそれ以上)の成果を得るにはどうしたら良いのかということでしょう。

 今さら「勤勉革命」は起こせません。勤勉革命とは、江戸時代に、農村部でそれまで家畜が行っていた労働を人間が代替し、よりたくさん働くことで、生産性を上げたことを指しています。勤勉革命という名前は、経済学者の速水融さんが名付けたものですが、イギリスでの産業革命とは異なる生産性の上げ方であったとして注目を集めました。

 現在の文脈で置き換えて考えると、機械がやっている仕事を人間が代わりにやるようなもので、当時の日本の人件費が資本財としての家畜を使うよりも安かったからこそ機能した仕組みです。

機械に敗北した「インドの人海戦術」

 一方、イギリスでは、人間の労働を機械が代替しました。

 オックスフォード大学のロバート・アレンは、産業革命期にイノベーション次々とイギリスで起こった重要な理由として、他国と比べてイギリスでは、人件費が資本の価格に対して相対的に高かったことを指摘しています。人件費が高く、資本の価格が安かったため、企業家にとっては労働力を節約できるような機械に投資をすることが合理的だったのです。

 これとは反対に、インドなどでは、人件費が安く、資本の価格が高い状況でした。そのため、機械化した工場に投資するよりも、たくさん人を集めて労働集約的な人海戦術でイギリスの繊維産業に対抗していたのです。

 しかし、技術はどんどん進歩します。機械化された工場で生産する方が、たくさんの安価な労働力を集めて生産するよりも低価格で良いものができるようになってしまいました。こうしてインドの繊維産業は、イギリスの機械化された繊維産業の前に敗れてしまったのです。

日本はインドの轍を踏んではいけない

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 現在の日本は少子高齢化が進み、多くの産業で人手不足が発生しています。そこで海外からの安価な労働者を増やして、彼らにたくさん働いてもらおうという考えが出てくるのは自然なことでしょう。

 しかし、気をつけなければならないのは、この考え方はまさに江戸時代の勤勉革命的なパラダイムにあるということです。このような発想では、長期的に見ればむしろイノベーションを阻害してしまいます。

 インドの繊維産業の二の舞にならないためには、このようなパラダイムから脱却して、むしろ高い人件費や人手不足をイノベーションのチャンスと捉えるような発想の転換が必要でしょう。

 現在の日本が考えるべきことは、「いかに安い人件費で多くの働き手を確保するか」ではなく、「少ない人手でも生産を維持できるように、いかにイノベーションを増やしていくか」なのです。
清水 洋

最終更新:12月15日(日)11時00分

マネー現代

 

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