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深刻な「気候危機」、日本は石炭投資見直しを

12月8日(日)6時01分配信 東洋経済オンライン

スペインのマドリードで開幕したCOP25(写真:ロイター/アフロ)
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スペインのマドリードで開幕したCOP25(写真:ロイター/アフロ)
第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議、いわゆる「COP25」がスペインのマドリードで始まった。地球温暖化対策の国際枠組みを定めた「パリ協定」が2020年から本格的に実施されるのを控え、各国が削減目標を引き上げるかなどが焦点になっている。
メアリー・ロビンソン氏はアイルランド共和国第7代大統領を務めた後、国際連合人権高等弁務官などを歴任。現在、“The Elders”(エルダーズ)議長として、人権やジェンダーの平等に関する活動に関わっている。
ロビンソン氏は気候変動問題についても危機的な状況にあり、若者たちの将来を脅かしているという点で「正義に反する」状態にあると警鐘を鳴らしている。ロビンソン氏の来日に際してインタビューした(インタビューは10月9日に実施)。

■気候変動問題には正義が欠けている

 ──地球温暖化など、気候変動がもたらすさまざまな問題の深刻さについて、ロビンソンさんは「気候正義」(Climate Justice)という言葉を使っていますね。
 アフリカの貧困国や先住民社会、太平洋の小さな島嶼国では、干ばつや海面上昇などの形で気候変動は日々直面する現実になっている。これに対して、欧米や日本のような先進国では、多くの人が自分の問題として捉えていない傾向があった。

 そこで私は、「気候変動」ではなく、「気候正義」について話すようにしてきた。正義のない、公正さのない状態から、いかに正義のある状態にするかが重要だ。

 私はアイルランドで大統領を務めた後、1997年から2002年まで国連の人権高等弁務官を務めた。そこでは人権問題全般や、ジェンダー、障害者や先住民に焦点を当てて人権活動に取り組んできたが、それらが気候変動とつながっているとは当時、あまり考えが及ばなかった。
 高等弁務官の職を退いた後、小さな団体を設立してアフリカの人々に対する食料や水、住居などの支援活動を始めた。(国際NGOである)オックスファムの名誉会長も務めた。

 2003年から2005年ごろにはそうした活動を通じて多くの人々と会う機会があったが、自然災害によって被害を受けた開発途上国の女性の農民は、「自分の身に何が起きているか理解できていない」と語っていた。気候変動がもたらした被害について、その女性は「神が私たちに罰を与えているのだろうか」とも述べていた。
 人権問題に関わってきた者として、私は気候変動の領域においては正義が存在していない、公平さが欠如していると思った。

 この気候正義という考え方は最近、よりわかりやすいものになってきた。現在、全世界で若者たちが「Fridays for Future」(未来のための金曜日)と称した街頭行動を起こしている。これは、未来の社会の担い手である若者たちが、気候変動問題に関して世代間の公平さが欠如していると認識している証拠だ。
 私は現在、「The Elders」というグループの議長を務めている。これは南アフリカ元大統領のネルソン・マンデラ氏が創設した組織であり、世代間の対話を重視している。私たちは若い人たちの声に耳を傾け、彼らの考えが広く知れ渡ることができるように活動している。

■身近なところから脱炭素化に取り組もう

 ──日本と海外では、気候変動がもたらす危機への認識に差があります。

 来日に際して、(気候変動問題に日本の)若者がどのくらい関与しているか尋ねてみた。9月にニューヨークで気候行動サミットが開催された際、日本でも数千人規模のデモがあったという。欧米と比べるとその規模は小さいようだ。
 若い人たちにとって重要なことは、科学の視点に立って情報を入手し、現在が深刻な状況にあることをしっかりと認識することだ。大人たちは若い人たちの声に耳を傾ける必要がある。若者たちが声をあげれば、親である大人も耳を傾けるし、理解する。

 気候危機は政府だけの問題でもなく、ビジネス界だけの問題でもない。私たちの生命や人生に関わってくる問題だ。それゆえ、すべての家庭や社会が政府とともに脱炭素化に取り組む必要がある。
 その際、個々人が自分の行動をいかに変えていくかが重要だ。なるべくプラスチックを使わず、廃棄物を出さないようにする努力が必要だ、リサイクルを進め、自分が使っているエネルギーをいかにクリーンなものに変えていくか。肉を消費しすぎているのであれば、自身の食生活を見直していく必要もある。こうした問題にみんなが取り組むことが大切だ。

 ──母国アイルランドの人々は気候変動問題をどのように認識しているのでしょうか。気候危機は一般に知られるようになっていますか。
 最近に関して言えばイエスだ。2018年10月に発表された「国連気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第5次報告書、通称「1.5℃特別報告書」によれば、産業革命以降の世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えることの重要性が指摘された。

2015年に合意された「パリ協定」で定められた目標である2℃以内に気温上昇を抑えた場合と、パリ協定で努力目標とされた1.5℃以内とでは、地球環境に与える影響が大きく異なる。今のままではほとんどのサンゴ礁は死滅するし、北極圏の氷は溶けてしまう。現に永久凍土も溶け始めており、二酸化炭素(CO2
)のみならず、温室効果が格段に大きいメタンが大気中に放出されることになる。

 IPCCでは、生物多様性に関する報告書や、陸上や海洋に関する報告書も発表している。こうした報告書に書かれていることを知って、気候変動がもたらす危機がいかに深刻であるかをアイルランドの人たちも最近になって理解するようになってきている。アイルランドは国際的な活動である「炭素中立性連合」に国家として加盟し、2050年の脱炭素化目標を明らかにしている。
■日本の「脱石炭」に高まる期待

 ──日本の動きについてどうみていますか。

 日本が(石炭火力発電など)石炭に投資を続けていることに、国際的な懸念が広がっている。今回来日して「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の会合に参加した。私は日本の立場に理解を示しつつも、日本で脱石炭の動きが起こることを期待している。

 小泉進次郎・環境相とも会って、気候変動問題が極めて深刻であることについて意見交換した。小泉氏は9月に訪れたニューヨークでの気候行動サミットから影響を受けたように見受けられた。私たちが直面している問題が緊急の問題であることを、小泉氏は理解していると思う。
 小泉氏からは、日本政府も炭素中立性連合に加盟するとの説明があった。同連合のメンバーになることで、日本には同じく脱炭素化を掲げているほかのメンバー諸国からプレッシャーがかかる。すなわち脱石炭の圧力がより強まることになるのではないか。
岡田 広行 :東洋経済 記者

最終更新:12月8日(日)6時01分

東洋経済オンライン

 

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