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ELTいっくんが「いい人に見える」深いワケ

12月7日(土)5時35分配信 東洋経済オンライン

今やバラエティ番組でもおなじみの人となったELT(Every Little Thing)のギタリスト、伊藤一朗氏。その肩の力の抜けたマイペースさはどのように醸成されたのでしょうか?
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今やバラエティ番組でもおなじみの人となったELT(Every Little Thing)のギタリスト、伊藤一朗氏。その肩の力の抜けたマイペースさはどのように醸成されたのでしょうか?
今年、デビュー23周年を迎えたELT(Every Little Thing)。そのギタリストとして活躍する伊藤一朗氏は、プロデビューが決まった際、「2年で終わる」と冷静に思っていたという。
デビューと同時に思いがけずブレイクするものの、間もなくメンバーの脱退で解散の危機に。それを乗り越え、今やバラエティ番組でもおなじみの人となった伊藤氏。50代になった今、2回りも年下の若者に「伊藤さん、ギター弾けるんですね!」といわれることもあるという。
その肩の力の抜けたマイペースさはどのように醸成されたのか?  格好つけない、気合も入れない、それでも幸せな人生を送れる、ユルくて強い大人のメンタルを初公開します。
※本稿は、伊藤一朗『ちょっとずつ、マイペース。』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■自分でやれば、人のせいにしなくてすむ

 僕は、たまたま音楽の世界で働いているが、多くの人と同様、会社員だ。いうなれば、ミュージシャン界の中間管理職である。会社からはまず結果を求められるし、部下に怒っている人を見て「あの仕事は僕にはできないな」と思ったり、後輩に相談されてどう応えようか悩んだり、自分が失敗して落ち込んだのをどう持ち直そうか考えたりする。
 一方、中間管理職としての仕事以外に、僕個人としての仕事もたくさんある。今回は、自分で決めていることや心がけていることを、ちょっとだけ書いてみたい。ミュージシャン以外のビジネスパーソンの皆さんにも、共感いただけるといいなと思う。

 僕はいつも、温度計と湿度計を持ち歩いている。ギターのネックを補正するための必需品だ。とくに湿度計は大事。ギターは木でできているので、湿度によって縮んだり膨らんだりする。すると、弦の振動幅にも影響が出る。
 放っておくと、弾けるはずのフレーズが弾けなくなる、なんてことが起こる。例えば、速いテンポの曲の中の6連符(1拍に6つの音が入ること)とか、そういう1音0コンマ何秒の高速フレーズなどは、ちょっとした調整不足ですぐ弾けなくなる。

 だから、演奏前のネック補正は欠かせない。その日の天候や、土地ごとの気温や湿度に合わせて毎日調整するのはけっこう手間がかかる。それが煩わしくて、曲を作るときに高速の連符を入れないミュージシャンも、実はいたりする。でも僕は、演奏家としてそれはしたくない。ギターを通して表現する仕事をする以上、かけるべき手間だと思っている。
 そう思っていたら、いつのまにか、同業者の間でも「かなりマメ」な部類に入っていた。ほかのギタリストなら「スタッフさんの領分」と思うようなことも、自分で調整するので、ときどき驚かれる。「真空管のバイアス調整なんて普通やらないでしょ⁉」といわれるが、自分でやりたいので、やっている。

 これは「うまくいかない理由」を特定するためにもけっこう役立つ。うまく弾けなかったとき、自分の側に理由を絞り込める。「ツイてなかった」とかなんとか、あやふやな理由でお茶を濁さずに済む。
 スタッフさんの運搬の仕方がいけなかったんだ!  なんてことを言い出す理不尽クレーマーにもならずに済む。だから身の回りのこと、とくにこだわりのある事柄に関しては、自分で管理している。これは「怒らない」ことに役立っている。

■聞き役のときは「犬モード」

 僕はなんとなく「いい人」のように思われがちだが、ここで本邦初公開、”いい人の秘密”を告白したい。

 巷では、人としゃべるときのルールが、いろいろ語られている。自分の話ばかりしちゃダメとか、聞き役になってあげようとか、相手の話を覚えておいて「あれからどうなった?」なんてアフターケアもしようね、とか。それを全部きっちり守る人は、すごくいい人だ。でもそういう人って、あまりハッピーじゃなさそうだ。気を遣いすぎてヘトヘトになってるのかもしれない。
 僕は、そのタイプのいい人ではない。聞き役になっているとき、実は、ほとんど聞いていない。込み入った話を長々とされたら、「聞いてるフリ」モードに入る。そこに座って「そうかあ、うんうん」とかなんとかいっているが、言葉は右から左に流れている。話が終われば、内容はほとんど消え去る。

 これって不誠実だろうか?  バレたら相手は気を悪くするだろうか?  

 バレていい、と僕は思う。相手はただ「話したい」のであり、そんなときは目の前に人がいるだけで安心するものだ。だから十分、役割は果たせている。ペットを飼っている人ならわかるのではないだろうか。
 悲しいことがあったときに、ワンちゃんに「今日、落ち込んでるんだ~」なんて話しかけることがあるでしょう?  その話をワンちゃんが理解していなくても、癒やされませんか?  僕が目指しているのはその感じ。犬モード。とても楽です。

 自分が話したいときはどうかって?  もちろん、僕にも話したい欲はある。なんだかわからないけれど、話したくなるときってある。相手が人間でも動物でも、下手すると生き物じゃなくっても。
 最近は、動画やテレビについ話しかけるようになった。流れてくる情報に対して、「うそ~」「いや、それはないっしょ」とか言ってしまう。でもこのクセは、意外に役に立っているかもしれない。

 僕はトークが下手だ。なのにテレビに出ている。そのせいで、プチ放送事故みたいなのをしょっちゅう起こす。言葉がすぐ出てこなかったり、出てきたと思ったらアサッテなこと(僕的にはつながっているんだけど)を言ってキョトンとされたり。それを防ぐための、簡単トレーニングが、テレビとの会話。効果が出ているかどうかはわからないが、そういうことにしている。
■ジェネレーションギャップは「植物図鑑」で解決

 若い世代は、「飲みニケーション」をしたがらない。「飲みに行くか!  今日は俺のおごりだ!」と上司に誘われても、「いや、いいっす」とアッサリ断る。一方、おじさんたちは誘い好きだ。僕より上の世代には、バーンと怒鳴った数時間後に「よし、飲みに行くか!」となるような、ややこしい人も多かった。

 僕は、そういう熱い世代と低温世代との間にいる。誘われたら「いや、いいっす」とは言わずについていくが、下の世代を積極的に誘うこともない、中途半端。いや、中温を保っている。そのうえで僕は、高温低温どちらも「アリ」じゃないかと思っている。若い人はともすれば、上の世代に対して「性懲りもなく何度も誘ってきてウザイ」なんていうけれど、いいじゃないか。そういう「種」だと思えば。
 植物図鑑を開くと、木だの草だのがいっぱい載っていて、それぞれの生態が書いてある。あのイメージだ。「多年草、全長1~2m、繁茂地域はオフィスビル」。で、備考欄に「こっちがどれだけイヤな顔をしても、性懲りもなく誘い続ける」みたいなデータが載っている。これなら、このタイプの種が現れても「ああ、こんなところに木が茂っているね」というふうに、まったりと受け止められないだろうか。

 誘いには、気が向かないなら応じなくていい。僕が若いころは誘われたら行ったけれど、今の若い世代が誘いを断るのは、もちろんアリだ。むしろ若者は、上の世代と無理してまで交わらないほうがいいんじゃないかな。
 というのも、これから日本はどんどん高齢化していくからだ。高齢者の数が多くなれば、自然と「おじいちゃん、おばあちゃん主導」の社会になる。高齢者が喜ぶような文化が栄えて、商品のトレンドとか経済動向も高齢者中心になる。高齢者の声のほうが、響きやすい世の中になる。頭数でいえば、若者は全然太刀打ちできない。

 それなら、若い人は若い人のコミュニティーをつくって、その中で文化を生成したほうがいい。そのほうが楽しいだろうし、生産的だ。無視するわけでも嫌うわけでもなく、高齢者・中年・若者が、それぞれ楽しんで、必要な範囲で適宜コミュニケーションもとって。
 いろんな植物があるんだね、とそれぞれ思いながら、それぞれが葉を茂らせていたら、そこそこ平和で穏やかな社会になりそうな気がする。
伊藤 一朗 :Every Little Thing ギタリスト

最終更新:12月7日(土)5時35分

東洋経済オンライン

 

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