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「遊ぶように働く」を本当に実現した人の発想

12月3日(火)8時00分配信 東洋経済オンライン

「遊ぶように働く」人たちの発想とは?(撮影:梅谷秀司)
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「遊ぶように働く」人たちの発想とは?(撮影:梅谷秀司)
組織に依存することなく、いつでもどこでも働けるように自分の市場価値を高める。そのためには、「働き方改革」より「生き方改革」が重要だ。
そう発信し続けているのは、モルガン・スタンレー、Googleを経て、現在は組織変革のコンサルティングを行っているプロノイア・グループ代表取締役のピョートル・フェリクス・グジバチさん。そして、リクルートマーケティングパートナーズ スタディサプリ教育AI研究所所長で、東京学芸大学大学院准教授の小宮山利恵子さんだ。
2人が、生き方改革のためにアクセルとブレーキの必要性を語った前編に続き、後編では、遊ぶように働いて高いパフォーマンスを発揮するために必要な大人の学びについて語り合ってもらった。
前編:「『レアな人材』になった人が歩んできた意外な道」

■遊ぶように働くにはどうすればいいか

 小宮山利恵子(以下、小宮山):ピョートルさんがおっしゃっているように、遊ぶように働くことができたらいちばん楽しいと思います。私自身も、好きなことややりたいことを積極的に周りにアピールすることで、人間関係も仕事も楽しい方向へとどんどん広がっていきました。ピョートルさんがとくに意識していることはありますか?  
 ピョートル・フェリクス・グジバチ(以下、ピョートル):質問の答えになっているかどうかわかりませんが、ぼくは趣味がないんですよ。典型的なサラリーマンの場合、1日に8時間から10時間くらい仕事を頑張って、終わったら暇つぶしに趣味を楽しむ、という考え方でしょう。だけど、ぼくがやっていることは、仕事も遊びもすべてつながっている大切なことだから、暇つぶしという考えがないんですね。

 小宮山:趣味がないって、面白いですね。
 ピョートル:例えば、ぼくは14年ほど前からダイビングをしているんですけど、日本の海って多様性が非常に高いんですよ。魚はもちろん、珊瑚礁もワカメも、電池もおもちゃも、わけのわからないものが海底にいっぱい眠っている(笑)。好奇心と観察力を研ぎ澄まして海の中を眺めていると、毎回、必ず発見があるんです。

 それに、海に潜る前には深呼吸するので、マインドフルネスな状態になります。海に入ると飛んでいるような感覚になるので、陸の上とは全然違うスピード、全然違う原則の中で動きますよね。そして、ゴミの間から見たことのない魚が出てきたりすると、多様性のパターンとか複雑な構造とか、哲学的なことも考えるんです。そうして、いろいろなことを振り返ることができるので、自分の深層心理を探るすばらしい時間になるんです。
 小宮山:すごく深い話ですね。そういえば私も、ハワイでトレッキングをしたときに同じような心境になって、それまでまったく興味がなくて、むしろ苦手だと思っていた山登りが好きになりました。

 ピョートル:山も面白そうですね。ぼくはダイビングに限らず何をしていても、これってどういう意味なんだろう? と考えたり、自分の状況に置き換えてみたり、パターンを見極めたりして、何かしら学習しています。そこまで好奇心や学習意欲が強くなったのは、民主化前で共産主義国だったポーランドの田舎で生まれ育ったコンプレックスが原因だと思っています。
 ぼくが生まれたのは、人間より犬が多くて、農家しかなくて、高校に行った人がいないような貧しい村でした。でも、ぼくが14歳のときに「ベルリンの壁」が崩壊して、民主化が進み始めたので、これからは知識が必要だろうと思って高校に進学したのです。

 お金がなかったので、途中、ドイツへ出稼ぎに行ったこともありましたが、なんとか頑張って大学まで出た頃に、時代が動きはじめた。自分もその波に乗って前に進むために、何としても何かを学んで価値を生み出していかなきゃいけないと思い始めたんですね。
 小宮山:私も複雑な家庭環境が原因で、小学校時代は問題児でした。でも、母に言われた「教育は機会を与えてくれる。学べば学ぶほど選択肢が増える」という言葉で勉強に目覚めたんです。高校までは受験勉強に必死でしたけど、大学時代からはバイトも旅行もすべてが学びだと思ってきたので、ムダな経験は1つもないですね。

■優秀な人材に学歴は関係ない

 ピョートル:ぼくも同じです。ただ、その学びの中で、必要なものとそうでないものを見分けないといけませんよね。おかしいと思うことがあれば、これはおかしいとちゃんと気づかなくちゃいけない。ぼくはよく「世界を止める」という言い方をしていて、5秒でも10秒でも間を置いて、「なぜ?」をいつも考えるようにしているんです。
 「この人はなぜこんな話をしているんだろう」、「なぜ自分は今この仕事をしているんだろう?」と、一瞬立ち止まって「Why?」を考えると目的が明確になって、より自分らしい生き方に近づいていけます。ところが日本人は、「What」や「How」ばかり気にして、「何をどうすればいいのか?」だけを求める印象があります。

 小宮山:確かに。

 ピョートル:とくに、受け身のまま川に流されるように生きていると、「何をどうすればいいんだ?」と方法ばかり考えて苦しくなります。けれども、「なぜ?」を考えながら目的を確認して納得して生きていると、自分で楽しみながら川を泳げるようになる。人によっては、川から飛び出すこともできる。その違いですね。
 Googleで当時、人事開発担当をしていたときに気がついたのですが、高いパフォーマンスを発揮する人の共通点は、人生でものすごく苦労したり、挫折した経験のある人でした。挫折を経験した人は必ずと言っていいほど、自分自身を見つめ直しますから。優秀な人材に学歴は関係ありませんね。

 小宮山:私の人生でどん底だったのは、幼少期と30歳前後の転職活動がうまくいかなかったとき。苦境に立たされるたびに、徹底的に自分と向き合いました。そして、苦手なことやつまらないこと、自分にとって価値がないと思ったことは、やらないと決めたんです。
 ピョートル:「なぜ?」を考えて、自分の価値観が明らかになると、人生がすごくシンプルになりますよね。それは、普段の生活にも言えること。ぼくは、昔は腕時計やアクセサリーが大好きでかなり浪費していたんですが、今はユニクロで買った黒シャツとジーンズが定番のビジネススタイル。装飾品や高価なファッションは仕事の結果に全然関係ないというのが、ぼくの価値観だからです。

 小宮山:私もよくメルカリで洋服を買いますよ(笑)。それと本にも書きましたが、「モノより体験」がモットーなので、自分の目で見て確かめて体験できることに惜しみなく自己投資してきました。教育とテクノロジーの分野に興味を持ち始めたときは、自腹でIT先進国のエストニアまで取材に行って、東洋経済オンラインに記事を書かせてもらったこともあります。
 ところで、ピョートルさんが仕事を選ぶ際に、自分の価値観や信念のなかでいちばん重視したことは何ですか? 

■選択肢を増やす状況をつくることとは

 ピョートル:簡単に言うと、選択肢を増やす状況をつくることです。とくに新しい仕事とやりたかった仕事を同時にできると、選択肢が増えますよね。でも、ベルリッツ、モルガン・スタンレー、Googleと、どの会社で働いているときも、いつか自分が組織を作って独立したいと思っていました。
 小宮山:私は、大学院時代に韓国に留学したとき、自分が日本の政治に関してあまりにも無知だったことに気がついて、まずは政治の世界を知ろうと国会議員秘書になったんですね。当時の就活生の中では「激レア」で(笑)、変わったキャリアからスタートしましたけど、後々その経験がどれほど役に立ったかわかりません。

 民間企業は、永田町の仕組みや情報に詳しい人を求めていることを強く実感しましたから。そのレアな強みを活かして転職を繰り返し、30代後半でいちばんやりたかった教育とテクノロジーの領域で働けるようになりました。今はさまざまな企業とコラボレーションしたり、大学で教えたり、仕事の幅が広がって楽しいです。
 ピョートル:ぼくの本にも書きましたけど、キャリア形成している人には、「T型人材」「π型人材」「H型人材」がいます。

 「T型人材」は特定の専門分野があって幅広い経験も兼ね備えているタイプ。「π型人材」は、2つ以上の専門分野を持っていて、分野を横断して能力を発揮するタイプ。「H型人材」は、特定の専門分野を持ちながら、他の領域に越境して橋渡しをしたり、他の専門分野を持つ人とのコラボレーションが得意なタイプ。小宮山さんは、「H型」ですね。
 小宮山:私はよく仕事で海外に行くのですが、そのたびに感じるのは、世界のエリートは非常に学びに貪欲だということです。オンライン学習はもちろん、見るもの聞くものすべてから何かを学び取ろうという姿勢がある。ひるがえって日本を見てみると、「学びの習慣」がない社会人が多くて愕然としてしまうんですね。「この国は大丈夫だろうか?」と。ピョートルさんはその状況についてどう思われますか? 

 ピョートル:結局、人生に教科書はないんですよね。でもどの分野でも、結果を出している人は、意識と無意識を越境できて、無意識の中でいろいろなパターン、サイクル、トレンドを回しているんです。そのレベルに達するためには、やはり社会人になってからの学びこそが不可欠で、多様な刺激、多様な情報に触れることが必要です。それをいかに早くキャッチできるかが、ポイントになるんじゃないでしょうか。
 ぼくは講演会に呼ばれると必ず参加者に、「好奇心を持って集中して聞いてください」とお願いします。なぜなら、その話が面白くないと思った瞬間に学びが終わるからです。逆に言うと、目の前にあることを何でも面白がって、好奇心と集中力で分析したり観察すれば、何らかの学びを得られるはずなんですね。

■「学び」を得る手段

 小宮山:私も、好奇心のおもむくまま行動して、興味のカケラを拾い集めることがとても重要だと思います。そのカケラをたくさん集めるためには、旅行でも留学でも、興味あるイベントでも何でもいいので、今いるところから抜け出して知らない世界を見ることですね。
 ピョートル:自分とは関係なさそうに見えるものって、実は大事ですよね。そんな時間も金もないという人は、Netflixで「south park」を観るだけでもすごい学びがありますよ。

 今の政治や経済や社会のトレンドやでたらめを、リアルタイムでアニメ化していて、「だまされてるあなたはバカだよ」って言われているような気がして(笑)。常識がひっくり返される面白さがあるから「これめちゃ面白くてヤバイ」と思いながら見てしまいます。
 小宮山:私は一時期、原始時代の技術進化を再現していく「Primitive Technology」という動画をよく見ていました(笑)。アメリカですごく人気があるんですよ。「大人の学び」というと、資格や試験を考える人が多いんですが、本当の学びはそういうことじゃないんですよね。生きて生活していること自体が、その人次第でいくらでも学びになる。

 ピョートル:もちろん、資格がないとできない仕事もあります。そう思ってぼくも、大学院にいくつか通ってマスター2つ、ディプロマ3つとりましたけど、博士課程は2回通って2回とも途中で辞めたんですよ。
 なぜなら、博士になっても名前の前に肩書が1つ増えるだけで、当時働いていたGoogleの給料にも自分のスキルにも反映しないし、仕事上は何も変わらないからです。むしろ、博士論文を書く時間と労力があるなら、自分の本を出したほうがいいと気がついたんですね。

 小宮山:なるほど、確かにそうかもしれませんね。

 ピョートル:ですから、国家資格が必要な仕事をするなら別ですけど、起業家になりたい人にMBAを取ることはおすすめしないんです。資格を取るために、与えられた枠のなかで課題解決の方法を学んでも、新しい世界を創り出せませんから。
 イノベーションを起こす人というのは、常識を破って、問題を再定義する力があります。そういう人ほど町をブラブラ歩いて、「最近の高校生は何をやっているんだろう?」とか、「この地方のコンビニにはご当地名物があるのかな?」とか、「この町の何が変われば、住民たちは喜ぶんだろう?」とか、一見くだらないように見えることを考えていたりするんですよ。

 小宮山:私も地方に行くと必ず、タクシーの運転手さんに気になることを聞いたり、時間があれば銭湯に行って地元の女性たちと雑談します。その地域で発行されている地方新聞も必ず買って熟読しますね。どれもレアな情報なので。
■自分の「人生の棚卸し」をしてみる

 ピョートル:先日、ぼくの会社にインターン生が来たんです。

 その女性が、「インターン生としてどんな貢献をすればいいか、ピョートルさん教えてください」と言うので、「教えるんじゃなくて考えてきてね。ぼくの会社でのインターンシップは世界でいちばん自由で自律性を求められるので。何をするか考えてきて」と言ったんです。

 そのためには、彼女が今までどんな体験をして、どんな刺激を受けて成長してきたのか?  今までいちばん面白かったことや、最高だったと言えることは何か?  ちゃんと定義づけできなければいけない。
 その経験をもとに課題を見つけて、自分のポテンシャルを発揮できる解決策によって人が喜ぶことを目標にすると、人って燃えるんです。

 小宮山:これまでの自分の「人生の棚卸し」ができているかどうかってすごく重要ですよね。社会人でもできていない人が多いと思います。日々の仕事に追われていると立ち止まることさえ忘れてしまいがちです。まず時間を確保して棚卸ししてみる。それができると、今の仕事のままでいいのか? という点も明確になると思います。
樺山 美夏 :ライター・エディター

最終更新:12月3日(火)8時00分

東洋経済オンライン

 

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