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トヨタ「新型ヤリス」のデザインは何が売りか

12月2日(月)6時01分配信 東洋経済オンライン

2020年2月ごろの発売を予定してるトヨタの新型ヤリス(筆者撮影)
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2020年2月ごろの発売を予定してるトヨタの新型ヤリス(筆者撮影)
 1999年に発売以来、トヨタ自動車のコンパクトカーの代表格として親しまれてきた「ヴィッツ」が、車名を欧州と同じ「ヤリス」に改めて10月に発表された。発売は来年2月ごろになる見込みだが、それを前にサーキットでプロトタイプ試乗会が行われた。

 筆者はこの場で、チーフエンジニアの末沢泰謙(やすのり)氏に話を聞くことができたので、その内容を交えながら新型ヤリスを紹介していく。

■「ヴィッツ」を「ヤリス」に変えた理由
 まず日本仕様をヴィッツからヤリスに名前を変えた理由について、同氏はこれまでネッツ店専売だったものを全販売チャンネルでの販売に切り替えることにちなみ、ネッツのヴィッツというイメージ払拭を図るとともに、幅広いユーザーに乗ってもらいたいという思いを込めたという。

 加えて2年前からヤリスが参戦するWRC(世界ラリー選手権)との関連も挙げていた。WRC用マシンは市販車とは異なる部分も多いが、実戦で得られたノウハウは現行ヴィッツにも反映していたそうで、新型ヤリスでもボディー構造などにWRCでの経験をフィードバックした。
 WRCにおけるヤリスは昨年マニュファクチャラーズ(製造者)チャンピオンに輝き、今年はオィット・タナックがドライバーズチャンピオンを獲得している。これだけの活躍を示している車種が、「日本名ヴィッツ」と注釈をつけて紹介されるのはわかりにくい。

 モデルチェンジに合わせてヤリスに改名することは、WRC参戦を始めた頃には決めていたそうだ。

 トヨタはこのクラスに多くのコンパクトカーを持つ。その中でヤリスはどんな位置づけなのかも聞いていた。ヤリスは日本と欧州をメインマーケットとするBセグメントの車種になるという答えだった。
 さらに小さなAセグメントには、欧州ではグループPSAと共同開発生産する「アイゴ」があり、日本ではダイハツ工業が生産する「パッソ」がある。北米向けBセグメントは「アクア」が「プリウスC」としてラインナップしており、新興国向けには「エティオス」「アギア」などがある。

 トヨタもPSAも、Aセグメントは低価格、Bセグメントは高品質というキャラクター分けをしていることは共通しており、欧州仕様の生産拠点はヤリスがフランス、アイゴがチェコと異なる。ただしこの面については、複数のブランドを用意したフォルクスワーゲンやルノーの例もある。
■ダイハツやスズキとの関係を生かす

 ちなみに現在のトヨタではカンパニー制を敷いているが、乗用車はコンパクトカー、ミッドサイズビークル、レクサスに分かれており、カローラから上のトヨタブランドをミッドサイズで一括しているのに対し、コンパクトカーの持ち駒が少ないように感じる。

 これについては、コンパクトカーではダイハツやスズキとの関係を生かしながら開発を進めていくという意味も込めているという答えが返ってきた。
 もうひとつ、ヤリスの立ち位置について聞かれたのは、スターレットからの流れを受け継ぐ車種という言葉だった。

 トヨタのこのクラスは1961年発表のパプリカを起源としており、当初はパプリカのクーペ版として生まれたスターレットが1978年にハッチバックに生まれ変わって以来、ヴィッツにバトンタッチするまでトヨタ最小の乗用車であり続けてきた。当初から走りのイメージをアピールしていたこともスターレットの個性で、新型ヤリスはこの性格も引き継いだようだ。
 TNGAプラットフォーム第4弾であるコンパクトカー用GA-Bプラットフォームを初採用し、WRCでのノウハウも注入して、ドイツのニュルブルクリンク北コースをはじめ欧州での走り込みを重ねたというプロセスは、スターレットの走りの遺伝子を受け継ぐという考えによるものだろう。

■初代ヴィッツの凝縮感を取り戻した

 エクステリアデザインについては、コンパクトな正統派ハッチバックという伝統を守ることを大事にしたとのことで、3940mmの全長は現行ヴィッツより5mmだけではあるが短くなっており、全幅は5ナンバー枠内の1695mmにとどめた。
 一方ホイールベースはヴィッツより40mm長くなっており、4隅に置かれたタイヤと小ぶりなキャビンの組み合わせは、初代ヴィッツが備えていた凝縮感を取り戻した感じがした。

 前後のフェンダーは写真では大きく張り出しているように見えるが、間近で観察するとキャラクターラインでそう見せていることがわかる。ちなみに欧州仕様は幅を広げてほしいという声に応え、独自のフェンダーを与えている。つまりスズキ「スイフト」同様、日本仕様と欧州仕様で全幅が異なる。
 さらに気づいたのは、フロントまわりではヘッドランプからキャラクターラインへのつながり、後ろ姿ではリアウインドーからコンビランプ、フェンダーにかけてのつながりを考えてあり、まとまりのあるデザインになっていることだ。デザインに厳しい欧州市場を考えた、練り込まれた造形と感じた。

■抑揚を強調したインテリアデザイン

 インテリアデザインもエクステリア同様、抑揚を強調したダイナミックなデザインである。メーターは廉価版を除きデジタルだが、単なる大きなパネルとせず、小さな丸型2眼として、径が小さめのステアリングともどもスポーティーなイメージを出すことに成功している。
 インパネ中央の大型ディスプレーの下に、エアコンのルーバーが隠れるように付いていることが気になった人がいるかもしれない。センターのルーバーは後席に風を届ける目的もあり、その目的に徹した形だ。ドアグリップの近くにあるドアオープナーは、慣れると手の移動距離が少なくて楽だった。

 インパネは歩行者保護などの要件がある最近の車種としては低めで、視界は斜め後ろを含め不満ない。高めに座る後席は座面の傾きが強いのが特徴で、身長170cmの筆者は頭が天井に着くことはなく、ひざの前は10cmほどの余裕がある。外から予想するほど狭くはない。
 荷室のフロアはこの後席の背もたれを倒した高さにそろえてあり、下に収納スペースを持つ2段構造。スペースそのものは平均的で、キャビンを含め広さにこだわった本田技研工業「フィット」とは対照的だ。ただ広さで言えば軽自動車のハイトワゴンも選択肢に上がるわけで、欧州でも通用する走りを目指したヤリスとは方向性は異なる。

 走りついて少し触れておくと、今は輸入が途絶えた欧州フォード「フィエスタ」を思い出した。独自の味わいこそ薄いものの、硬質なボディーとトルク感のあるエンジン、軽快な身のこなしなどが似ていた。欧州のライバルと正面から勝負するコンパクトカーであることが理解できた。そこに躍動感あふれるデザインを個性として取り入れたのがヤリスなのだと感じた。
森口 将之 :モビリティジャーナリスト

最終更新:12月2日(月)6時01分

東洋経済オンライン

 

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