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「住宅ローン破綻」増加の背景~気がついたら自宅の評価額が大幅下落していることも

11月22日(金)20時00分配信 LIMO

住宅ローンの貸出残高は約180兆円、国家予算の1.8倍規模

写真:LIMO [リーモ]
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写真:LIMO [リーモ]
「人生最大の買い物」と言われている住宅(マイホーム)ですが、多くの人がローンを組んで購入します。もちろん、一括購入する人も一定割合存在しますが、何らかの形で借入をして購入する人が圧倒的に多いでしょう。住宅ローンは金額も多額で返済期間も長期に及ぶことが多いため、新規でも借り換えでも大きな決断を必要とされます。

ところで、国内における住宅ローンの貸出残高はどれくらいあるのでしょうか。

住宅金融支援機構の貸出し分を除いた、いわゆる純粋な金融機関による貸出残高は約180兆円と見られます(2019年3月末で約174兆8,000億円、四半期ベースで変動あり)。180兆円と言われてもピンとこないと思いますが、日本の国家予算が約100兆円ですから(2019年度は101兆円強)、その規模の大きさが分かるのではないでしょうか。

“事件扱い”となった住宅ローンの破綻率は3%前後、非常に高い比率

さて、突然ですが、こうした住宅ローンの破綻率はどれくらいだと思いますか? 

結論から先に言うと、2%~4%です(NPO法人「住宅ローン問題支援ネット」による。以下同)。金額にすると3.6兆円~7.2兆円。少し幅が広いのは、当該業界から正式データが公表されていないこと、及び、競売の範囲が広いためと見られます。

それでも、この公表値に基づけば、破綻率はザックリ約3%、金額にすると約5~6兆円というところでしょうか。結構大きな金額です。

さらに、ここでいう「破綻」とは、単に返済が数カ月滞っているというレベルではなく、完全に“事件扱い”された案件が対象です。この“事件扱い”とは、返済不能に陥ったため、(住宅ローンの対象である)住宅が競売に掛けられたり、任意売却を迫られたりした案件を指します。

競売は裁判所から情報公開され、任意売却は信用機関のブラックリストに載ります。事実上、世間に“住宅ローンが返済できませんでした”と公表することになり、多くの場合は自己破産の申請を余儀なくされます。

表現が適切ではないかもしてませんが、完全な「黒」という状況でしょう。

破綻予備軍は約3倍という調査結果もある、約10兆円が焦げ付きの危機?

また、こうした“事件扱い”には至っていないものの、長期間の滞納や将来の返済困難に陥った事例など、いわゆる破綻予備軍は前述した破綻件数の3倍程度あると見られています。つまり、既に破綻済みの分を除いても、約10兆円弱がいつ焦げ付いても不思議ではないということです。

前述した表現を使えば、かなり黒に近い「灰色」ということでしょうか。

ちなみに、住宅に次ぐ高級耐久消費財である自動車の場合、前述した“事件扱い”と同じレベルの自動車ローン破綻比率、つまり、返済不能でクルマを強制差し押さえされるレベルは0.3~0.5%程度と見られます。金額やローン期間が異なるので一概に単純比較はできませんが、住宅ローンの破綻率の高さが理解できます。

厳格な事前審査を行っているはずの住宅ローン破綻が増えている背景

そもそも、住宅ローンを組む際(金融機関から見ると貸し付けの際)は、厳格な審査が行われているはずです。確かに、スルガ銀行の不正な過剰融資事件に代表されるように、個人向け融資を伸ばそうとする金融機関は増えてきました。

それでも、低所得層など返済が滞る懸念がある人に、最初から住宅ローンの融資をする可能性は低いはずです。本来ならば、3%とか4%の破綻比率は考え難いのです。

しかしながら、現実には住宅ローンの返済に困窮する債務者は後を絶ちません。その背景には、住宅ローンを組んだ後に、外的要因(自営業者の会社経営不振、投資運用失敗、ギャンブル等の浪費)、健康問題(病気、ケガによる収入減)、職場問題(リストラ、転職の失敗、退職金の減額)、家庭問題(離婚、介護、年金減額)などによって、借入債務者の財政状況が大きく悪化することが珍しくなくなったことがあります。

しかも、返済が順調に進んでいたにもかかわらず、気が付いたら返済困難に陥ってしまっていたケースが少なくないようです。

住宅ローン返済に困窮する債務者の最後の一手は売却だが…

住宅ローンの返済が滞り、いよいよ破綻が迫った時、多くの債務者が“最後の一手”として考えるのが売却による返済です。つまり、今現在住んでいる自宅を売却して、その売却金額を返済に充てるというものです。

しかし、この考えは甘過ぎると言わざるを得ません。最大の理由は、その自宅に(金融機関の)抵当権が設定されているからです。抵当権が設定されたままでは不動産を(勝手に)売却できません。自宅の売却には金融機関の許可が必要になります。

「アンダーローン」と「オーバーローン」はどのような状況か

ここで重要になるのが、「アンダーローン」と「オーバーローン」という状況です。簡単なモデルで考えてみましょう。

たとえば、何らかの理由(リストラや病気等)によって収入が激減し、住宅ローン残高3,000万円の返済が難しくなったとします。

この時、自宅の評価額(=市場取引額。相続税評価額ではない)が3,500万円の場合、金融機関は抵当権を抹消して売却を承諾するでしょう。なぜならば、金融機関は残額3,000万円を回収できるからです。これが「アンダーローン」です。

しかし、もし自宅の評価額が2,500万円の場合、単純に売却しても金融機関は残債3,000万円を回収することはできず、▲500万円の不良債権が発生します。

金融機関は、この不足分▲500万円の返済を繰り延べたり、新たなローンとして設定したりするような生温いことはしません。自宅は強制的に競売に掛けられ、自己破産を迫られます(もう自己破産するしかありません)。

あるいは任意売却の手続きが取られますが、どちらにしても抵当権設定者である金融機関の主導で行われます。これを「オーバーローン」と称します。

“まさか、そこまではしないだろう”、“一定の猶予期間はあるだろう”という希望的観測はハッキリ言って楽観的過ぎます。

住宅ローンを組んでいる方(借入債務者)にとっては、アンダーローンの状態が望ましいことは言うまでもありません。

しかしながら、最初からオーバーローンで借入するケースが多いため、アンダーローンの状況は稀とまでは言いませんが、非常に少ないのが実情です。それでも、オーバーローンならば、常日頃からローン残高と自宅の評価額を把握しておくべきです。

元利均等返済はローン残高の減り方が遅くなる

ここで注意すべき点があります。まず、ローン残高に関しては、返済方法が元利均等返済か、それとも、元金均等返済なのかです。恐らく、多くの方が元利均等返済(毎月の返済額が一定の方法)だと思われます。

元利均等返済は、返済開始当初は負担が少ない一方で、支払金利分が多くなるため、借入残高の減り方が遅くなります。

たとえば、一定期間が経過した後(例えば10年経過後)、住宅ローン残高が思いのほか多額である(減っていない)ケースが多く見られています。実際、最初の数年間は、毎月コツコツと返済している額の3分の2以上が金利ということも珍しくありません。

住宅の評価額は、自然災害による類似物件の価格変動にも左右される

自宅の評価額に関しては、様々なサイトで大まかな額を調べることが可能です。ただし、この評価額(=市場取引額)は、買い手と売り手の需要で決まりますから、何らかの理由で大きく変動することが多々あります。具体的には、投資家のニーズ、大きな経済変動、自然災害による類似物件の価格変動などです。

これらは全て注意が必要ですが、最後の自然災害による影響は見落としがちです。実例を挙げれば、東日本大震災が発生した時、津波リスクがある湾岸地域や、液状化リスクの高い埋立地の不動産価格が急落しました。

また、最近では台風による河川氾濫の災害があり、郊外のタワーマンションも断水等で大きな影響を受けたのは記憶に新しいところです。今後、類似物件が何らかの影響を受けて価格下落を起こす可能性は払拭できません。

そして、最大の注意点は、こうした自然災害による価格変動は一定のタイムラグを置いてから表面化することです。いずれにせよ、ある日調べてみたら、自宅の評価額が考えていた以上に下落していることは決して珍しくないのです。

ローン残高と自宅の評価額をチェックしてみよう

住宅ローンの返済が順調に進んでいて、この先も滞る懸念がないならば、こうした心配は無用です。しかしながら、前掲の既に破綻した2~4%の借入債務者も、最初から破綻のリスクに直面していたわけではないでしょう。ある日気が付いたら、住宅ローンの返済が困難に陥っていたというパターンが多いのです。これは、破綻済みの3倍程度いると見られる破綻予備軍も同様です。

何の懸念もなく順風満帆な人でも、ぜひ一度調べて見てください。危機が突然やって来ても対処できるように。
葛西 裕一

最終更新:11月23日(土)19時45分

LIMO

 

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