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アマゾンを圧倒的に成長させた14カ条の大原則

11月18日(月)6時10分配信 東洋経済オンライン

シアトルにあるアマゾンの本社(撮影:長瀧 菜摘)
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シアトルにあるアマゾンの本社(撮影:長瀧 菜摘)
 もし、創業者兼CEOのジェフ・ベゾスが、アマゾンの桁外れな成長を生み出す方程式をあっさり見せてくれて、私たちも同じやり方を実践できるとしたら、どうだろう。実は、それが「レター」なのだ。

■ベゾス・レターとは何か? 

 アマゾンの創業から20年。その間、2000年代初頭にはドット・コム・バブルがあり、2007年から2009年には世界金融危機と世界同時不況が起き、その後も数え切れないほどの不況によって多くの競合他社が倒産へと追い込まれたが、アマゾンはすべて乗り越えてきた。
 アマゾンの時価総額が1兆ドルを超えた2018年、ベゾスの資産は約1370億ドルに達した。ビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、そしてもちろん世界中の70億人すべての資産を上回って、世界一裕福な人物になったのである。

 過去、これほどの成長を遂げた会社はない。その原動力はどこにあるのだろうか。そして、他のテクノロジー企業や書店は総崩れしたというのに、同じ時期にベゾスはどうやって一介のオンライン書店を1兆ドル規模の会社にまで成長させたのだろうか。
 もし、その秘訣をベゾス自身が説明してくれるとしたら、どうだろう。アマゾンが時価総額1兆ドルになった背景や、自分が世界一裕福な人物になった理由をベゾス自身が話してくれるなら、ぜひ聞きたいとは思わないだろうか。

 幸い、『オズの魔法使い』とは違い、ベゾスはカーテンの裏側で暗躍しているわけではない。仕事の仕組みも戦略も、隠されてはいないのだ。

 ベゾスには著書がない。しかし、彼は、毎年株主宛てにレターを発表している。このレターを見れば、アマゾンの創業から現在までのベゾスの考え方や戦略がすべてわかってしまうのだ。
 これは株主でなくても誰でも読めるようになっていて、レターは昨年1年の事業を振り返る形で、翌年の4月に発表されるのが恒例となっている。発表は1997年に始まり、すでに今年で21回にも上っている。

■レターから見えてくるアマゾン急成長のパターン

 一見すると、ベゾスから株主へのレターは、世界一成功している会社のことがおぼろげにわかる面白い読み物でしかない。だが、レターを深く読み込んでいくと、これが20通以上にわたる別々の手紙ではなく、全体として1つの物語のように見えてくる。
 そして、アマゾンを他の企業にはありえない速さで成長させてきた、ある「パターン」が浮かび上がってくる。さらに、このレターをアマゾンの事業という文脈の中で読んでみると、また、レターが書かれた時期に世界で何が起きたかも合わせて考えてみると、今の事業に応用できる部分がもっとあると気づくだろう。

 アマゾンには、「リーダーシップ14カ条」というものがある。ベゾスはアマゾンの創業当初から、あらゆる面で社員のリーダーシップを重視してきた。どんなに優れた社員を集めても、優れたリーダーシップがなければその能力も出し切れないからだ。
 だが、事業におけるリーダーシップは事業の成長とは別物だ。もちろん重なる部分もあるが、人がどう働くかに用いるのがリーダーシップ14カ条で、「事業や組織をどう動かすか」に用いるのがここで紹介する「成長への14カ条」なのだ。

こうして見えてきたビジネス成長の原則を私は共著『ベゾス・レター:アマゾンに学ぶ14ヵ条の成長原則』としてまとめた。

■アマゾンの「成長サイクル」と「成長への原則14ヵ条」

 また、レターを研究していくうちに、何度も使える「成長サイクル」とでも呼べるものにも気づいた。「実験(test)」「構築(build)」「加速(accelerate)」「規模の拡大(scale)」の4つで、成長への14カ条の各項目は成長サイクルのいずれかにあてはまるようになっている。ベゾスは、ほぼどの事業に対してもこの「成長サイクル」を使っている。
 これらを書き出すと次のようになる。

 まず、戦略的な「実験」の中でアマゾンを成長させたのは、次の3カ条だ。

 第1条 「いい失敗」を促す

 第2条 大きなアイデアに賭ける

 第3条 ダイナミックな発明や革新を実践する

 次の3カ条は、アマゾンを「構築」して未来へと進展させたものだ。

 第4条 顧客にこだわる

 第5条 長期的な考え方を採用する

 第6条 自分の「弾み車」を理解する

 そして、アマゾンの成長を「加速」させたのは、次の4カ条だ。
 第7条 決定は迅速に行う

 第8条 複雑なことは単純化する

 第9条 テクノロジーで時間を短縮する

 第10条 所有者意識を持たせる

 最後に、アマゾンの「規模の拡大」に役立ったのは、次の4カ条だ。

 第11条 企業文化を守る

 第12条 高水準を重視する

 第13条 重要な項目を計測し、計測項目を疑い、自分の直感を信じる

 第14条 つねに1日目だと信じる

 驚くべきことに、これらの原則は、どんな業種のどんな事業にでも役に立つし、実行するために大金が必要な項目が1つもない。アマゾン自体も、起業時に大金を投じてはいない(それどころか、ベゾスが起業するときに持っていたのは、両親から借りた30万ドルだけだった)。
 さらに言えば、事業の拠点がシリコンバレーでも、テネシー州ナッシュビルでも、ロンドンでも、アイオワ州デモインでも、おそらく日本でも、変わらずこの原則は使える。テクノロジー系の会社にも、ピザ店にも、NPOにも簡単に応用できる。

■1通目のレターにすべてがある!? 

 ジェフ・ベゾスが株主へのレターを最初に書いたのは、1997年だ。このレターこそがアマゾンにとっての「1日目」であり、起業時の興奮や、顧客に対して期待を超えるサービスを全力で提供するという声明や、スタートアップの燃料に火をつけるような最新サービスに関する情報が盛り込まれている。
 だが、面白いのはここからだ。翌年、1998年版レターを書いたベゾスは、レターの最後にまた1997年版レターをつけたのだ。1999年版レターにも、最初の1997年版レターをつけた。翌年も、またその翌年も、毎年、レターの最後には欠かさず1997年版レターが添付されている。

 そのうち、レターの最後にも同じ内容の文言が入るようになり、それも簡略化されていった。

 「例年と同じく、最初の1997年版レターの写しを添付します。毎日が1日目だからです」
 これはいったいどういうことなのだろう。

 これまでのアマゾンの成長に欠かせないのが、一定のサイクルと14の原則だとわかってから、私はレターに戻ってもう1度詳しく検証してみた。すると、文言は異なっていたものの、成長への14カ条すべてが1通目である1997年版レターに書かれていたのだ。これが、ベゾスが1通目のレターを後年になっても載せ続けている理由の1つではないかと、私は考えている。

 このように、アマゾンが急拡大した成長原則を知って、自分の仕事や組織に応用できるものを見つけて、そして実際に組織を育ててアマゾンのような市場リーダーにする。そのためのヒントがぎっしり詰まっているのがベゾス・レターなのだ。
 とはいえ、残念ながら、21年分のレターすべてを読む時間のある人はそういないだろう(とはいえ、可能ならすべて読むことを強くお勧めする。極めて含蓄のある内容だからだ)。しかし、できれば1通目である1997年版レターと最新のレターだけでも、機会があれば目を通してみることをぜひお勧めしたい。

 アマゾンは「完璧な会社」だろうか。そんなことはない。ジェフ・ベゾスは「完璧な人間」だろうか。そんなことはない。アマゾンを好きな人も嫌いな人もいるだろう。ジェフ・ベゾスのことが好きな人も嫌いな人もいるだろう。アマゾンやベゾスに対してどのような感情を持っていようが、問題ない。
 ただ、いったんアマゾンやベゾスへの感情はおいて、地上10キロメートルくらいの高さから俯瞰してみてはいかがだろうか。そうすれば、世界一速く売り上げ1000億ドルに達するという歴史上に残る偉業を成し遂げるまでに、ベゾス(とアマゾン)が何をしてきたかが見えてくるかもしれない。
スティーブ・アンダーソン :ビジネスコンサルタント

最終更新:11月18日(月)6時10分

東洋経済オンライン

 

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