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パッと見「イケてる会社」がどん底に陥る6兆候

11月18日(月)5時40分配信 東洋経済オンライン

若いCEOは、未熟ゆえに自ら「危険信号」を発してくれるといいます(画像:Gearstd/iStock)
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若いCEOは、未熟ゆえに自ら「危険信号」を発してくれるといいます(画像:Gearstd/iStock)
「期待のユニコーン」から一転、上場取りやめになったばかりか、さまざまなスキャンダルが露呈したWeWork。
その凋落を年始の時点で予言していたのが、「ビジネス書大賞2019 読者賞」「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」のダブル受賞作、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』著者、スコット・ギャロウェイ氏だ。
5000人が受講、WEB公開後わずか10日で100万人が視聴した「伝説の授業」をもとにした最新作『ニューヨーク大学人気講義 HAPPINESS(ハピネス)――GAFA時代の人生戦略』の中で、ギャロウェイ氏は「一見イケている会社の危険な兆候」を紹介している。本記事では書籍を再編集し、「伝説の授業」の一部を紹介する。
■「プライベートジェットを持つに値する」という過信

 1999年、私はほかのサンフランシスコのIT企業創業者やCEOの一団とともに、ある小さな飛行場でプライベートジェットを物色していた。

 34歳でマッハ0.8で飛ぶワンルームマンションを持つのは、ごく当たり前のことだった。なにしろ私はビジネスの天才で、理論的には、母の給料の1000倍の額をエグゼクティブ御用達のビジネスジェットにつぎ込むことができたのだ。
 30人以上の男たちがジェット機を見ている光景が普通に思えたら、それは炭鉱のカナリアが死にかかり、新たな世界の支配者候補たちが逆襲にあうという、明白な危険信号である――そして実際にそうなった。

 ある程度の年齢になると、実際の景気循環を経験する。そのときの経済状況は曲線上の一点であり、思った以上に速く、線の方向が(よい方であれ悪い方であれ)変わることに気づき始める。

 資産バブルとは楽観主義の大波であり、それがファンダメンタル相当以上に価格を上げ、最後に暴落する。ではどうすれば危険地帯に入ったことを知り、適切な対応が取れるだろうか。
 バブルの頂点に近づいていると考える基準はいくつかある。この特殊な炭鉱の中でカナリアが察知するのは、もっとソフトな現象だ。

■「一見、イケている企業」がヤバくなる兆候

兆候1:企業が高いビルを建てるようになったら要注意
 パンナム・ビル(現・メットライフ・ビル)、シアーズ・タワー(現・ウィリス・タワー)など、新興市場の母なる大地に突き刺さる高層ビルは、数十億円の価値があるペニスの写真と大して変わらない。
 つくった当時はいいアイデアに思えたのだろうが、ただ異様なだけだ。

兆候2:商業不動産の入札合戦
 投資家が次のグーグルと信じている企業は、安い資本という武器を持ち、ニューヨークやサンフランシスコの通りをさまよい、商業不動産の価格をつり上げる。そしてニューヨーク市の商業地区を買いあさっているGAFAに対抗する。

兆候3:凡人+2年間のIT企業での就労経験=収入が6桁を超える
 コードが書けて卒業後2年目の若者は、凡人でもIT市場で年間10万ドル稼げる。さらに厄介なのは、彼らが自分にはそれだけの価値があると信じていることだ。
 コードが書けるなら、自分を褒めていい。しかし本当の技術力やマネジメント能力を持っているわけではない。能力以上の報酬をもらっていると気づかないと、本当に不況が来たとき、資金が足りずに親の家の地下室に戻る羽目になる。

兆候4:CEOのファッションもいろいろ語る
 CEOが(男女問わず)黒いタートルネックでステージ上に現れるようになったら(「私は次のスティーブ・ジョブズ」)要注意だ。

 それは決してジョブズがよみがえったわけではない。その会社の株価が暴落する(ツイッター社のジャック・ドーシー)、あるいはその人がアメリカ食品医薬品局(FDA)から自社のラボに出入り禁止を言い渡される(セラノス社のエリザベス・ホームズ)可能性が高いという指標だ。
兆候5:何よりも明白な危険信号はCEOのエゴの表出
 最も強烈な売り信号は、CEOがハリウッドに行く、あるいは自分がファッション誌の表紙や広告を飾るべきだという固い信念を持つことだ。

 デイヴィッド・カープ(タンブラーの創業者)のJ.クルーの広告。デニス・クローリー(フォースクエアの創業者)のGAPの広告。これらは彼らがつくった会社が、まもなく昔の業績や評価の陰に隠れることを教えてくれる。

 マリッサ・メイヤー(Yahoo! の元CEO)がヴォーグ社主催のメット・ボールにスポンサーとして300万ドル出したのと時を同じくして、『VOGUE』誌に3000語に及ぶ彼女のプロフィール記事が出た。これは判断力の低下の表れだった。
 このような考えが高じると、さらに10億ドル(株主の金)で、J.クルーの広告に出た男が運営するブログのプラットフォーム(タンブラー)を購入してしまう。結局は収益のほとんどないポルノサイトに11億ドルを支払う羽目になった。

兆候6:皆が若いことを高く評価している
 私は金融危機が起こる以前、32歳のときにダボスで開かれる世界経済フォーラムに招かれた。当時はインターネット世界の起業家は新たな世界の支配者だったのだ。
 そこでは私からビジネスについての見識を学ぼうとするCEOたちと会った。私はユニークな見識を持っていたからだ。と言いたいところだが、そうではない。

 私はそこそこの才能に恵まれたというだけの32歳で、時代が違えばそこそこの生活を送っていたはずの人間だ。しかしそこでは、私はグランドマスターのヨーダであり、自分より才能のある実業家たちに、彼らの企業はどうすればいいかレクチャーしていた。

 ITバブルがはじけたとき、私は34歳で再びダボスに行った。そこなら私は逮捕される心配はなかった――誰も私に会おうとはしないから。
■若い起業家の大半は「未熟者」にすぎない

 景気が悪いときは、白髪がリーダーシップの象徴とみなされる。景気がいいとき(浮ついているとき)は、若さがありがたがられる。

 エヴァン・シュピーゲル(スナップチャット創業者)やジャック・ドーシー(ツイッター創業者)は並はずれた才能に恵まれた若者たちだ。彼らが起こした会社の価値は何億ドル、ときに10億ドルの値をつけているが、何百億ドルにまで達することはないだろう。
 スナップ、ウィワーク、ウーバー、ツイッター(すべて合わせるとボーイング社の時価総額を超える)を運営する若者たちは、才能にあふれている。しかし来世にはおそらく(楽観的に見ても)大企業の副社長にとどまり、それで心から満足するだろう。

 20代でニューエコノミーの会社をいくつかつくった先人の1人として言えることは、若いCEOの最大の美点は、愚かすぎて自分が失敗すると考えられないことだ。若いCEOたちは常軌を逸した道を進み、それで常軌を逸した天才になることがたまにある。
 しかし大半は未熟者であり、何百人、何千人もの社員の家族を養うだけの能力は持ち合わせない。

 ITブームが今後も続くなら、これから10年の間に、ティーンエイジャーが時価総額10億ドルのIT企業をつくってCEOになる可能性はゼロではない。そのようなことが本当に起きたとき、私たちは経済が全面的に破壊される窮地に立ったことになる。

 そのティーンエイジャーは黒いタートルネックを着ていたり、従業員をクソみたいに扱ったり、タトゥー、鼻輪など、若者が好む装身具をつけているかもしれない。社会はそいつをイエス・キリストのように扱うだろう。
 いま私たちは性格や思いやりといったものではなく、イノベーションと若さを崇拝している。

 (翻訳:渡会圭子)
スコット・ギャロウェイ :ニューヨーク大学スターン経営大学院教授

最終更新:11月18日(月)5時40分

東洋経済オンライン

 

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