◆50歳でのリタイアは可能か悩んでいます
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今回の相談者は、数年後のリタイアを希望する40代の女性会社員です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんが担当します。
▼相談者
女性/派遣社員/47歳
東京都/シェアハウス在住
▼家族構成
▼相談内容
実家(一戸建て)をもらい受けることにはなっていますが、築35年くらいになるので、建て替えをしなければなりません。もしくは地方都市の空き家に手を入れて住むか、あるいは海外という可能性もあります。
仕事は短期の派遣等で、収入は年間200万円くらい。うち100万円を貯金しています。働いていないときは実家にいるか、海外に行っています。移動の費用は金融資産の運用益を当てています。
50歳くらいまでこのペースで、リタイアするか、それ以後60歳くらいまで生活費のみ(年間100万円)で稼ぐのがよいか悩んでいます。
物書きを目指しています。年金等を考えて、計算上リタイアが可能な年齢というのは何歳くらいになるでしょうか。
▼家計収支データ
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▼家計収支データ補足
・がん保険=保険料1万562円(年払い)
・医療保険(終身タイプ)=保険料前納済み
・個人年金保険(60歳から10年確定、年金額48万円)=保険料前納済み
・養老保険(53歳満期/240万円)=保険料前納済み
(2)年金の支払い状況
学生のとき50カ月、国民年金の未納期間あり。厚生年金加入期間は12年。
(3)シェアハウス家賃
シェアハウスの管理会社に200万円の預け金を入れているため、家賃は2万円の割引。
▼FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス2:実家をどうするかがリタイア生活のカギ
アドバイス3:貯蓄の取り崩しをいかに遅らせるか
◆アドバイス1:年金受給が始まるまでの生活費を備える
ご相談者が正社員時代にどの程度の収入だったかは不明ですが、厚生年金加入期間から類推して、老齢年金の受給額を11万円とします(ねんきん定期便等で実際の金額を確認してください)。
年金生活となったときの実質の生活費が仮に現在と同じとするなら、社会保険料を考慮しても、公的年金で生活費はまかなえて、かつ多少貯蓄もできます。
もちろん、公的年金だけで足りるからといって、安心ではありません。予期せぬ大きな支出も想定されますので、手元に貯蓄=老後資金は必要です。
これも一概にいくらあれば安心とはいえませんが、終身で医療保険、がん保険にも加入されていますし、一人暮らしであれば1000万円程度あればさほど心配する必要はないでしょう。
問題は、年金受給が始まるまでの生活資金をどうするか。とくに早期リタイアということは「早期に無収入になる」ことを意味しますから、その間、貯蓄を含めた金融資産を取り崩しての生活となります。
50歳でリタイアすれば65歳まで15年間。生活費が今と同じなら1530万円。この間、これだけ使える資金が用意できていれば、50歳からリタイアしても生活費に関しては問題ないことになるわけです。
◆アドバイス2:実家をどうするかがリタイア生活のカギ
相続の時期はまだわかりませんが、そこに住むのか、売却するのか。住むのであれば現在すでに築35年ですから、おっしゃるとおり建て替えかリフォームが必要になります。
単にリフォームで済むなら1000万円程度を見ておけばいいでしょうが、建て替えとなると解体費用も発生しますし、家を新築するわけですから、一人暮らし用としてもトータルで2000万~2500万円程度は見ておく必要があるはず。
また、売却して地方都市の空き家に手を入れて住む場合も、それこそ家の程度、住む地域によって幅がありますが、少なくとも別途リフォーム費用が発生するのであれば、建て替えと同程度の予算は見ておいてもいてでしょう。
現在の金融資産が4050万円。20代、30代で頑張って貯めたのだと思いますが、これが今後のマネープランで大きなプラス材料です。
さらに個人年金保険と養老保険の満期金で720万円があり50歳まであと3年働くとすれば、貯蓄の上積みが約300万円ありますから、50歳で合計5000万円超になります。
また、住宅取得後は家賃が発生しませんから、リタイア後の生活費も今より家賃に含まれている水道光熱費や通信費を加算しても抑えられるはず。
つまり、2500万円程度残るよう、住宅資金を調整し、今と同じ生活水準を維持できるなら、50歳からのリタイアは計算上可能ということになります。
◆アドバイス3:貯蓄の取り崩しをいかに遅らせるか
また、いろいろな可能性を考えて、よりリスクを回避するなら、相談文にもありますように「60歳くらいまで生活費のみを稼ぐ」ということは、ぜひしておきたいこと。
収入は下がってもいいので、65歳まで働ければさらにいいでしょう。年金生活は、いかに貯蓄の取り崩しを遅らせるか。これがもっとも効果的な対策のひとつなのです。
もうひとつ気を付けたいのが、「海外移住」を選択した場合。海外生活の経験があるとのことですから、よく事情はご存知だと思いますが、たとえば物価が安い国でも医療費が高い、治安が不安定といったリスク要因を抱えています。
それらの問題をクリアするには、今ある資産では不足するかもしれません。十分に検討してください。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:清水京武
あるじゃん 編集部
最終更新:11月14日(木)22時20分
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