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新「MacBook Pro」が超高価でも支持されるワケ

11月13日(水)23時00分配信 東洋経済オンライン

11月13日に発表された、新しい16インチMacBook Proスペースグレイ(筆者撮影)
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11月13日に発表された、新しい16インチMacBook Proスペースグレイ(筆者撮影)
 アップルは11月13日、ポータブルコンピューターの最上位モデルであるMacBook Proを刷新した。新しい16インチMacBook Proは2.6GHz 6コアIntel Core i7・512GB SSDストレージ搭載の標準モデルが24万8800円(税抜)、2.3GHz 8コアIntel Core i9・1TB SSDストレージ搭載の標準モデルが28万8800円(税抜)~。アメリカでの価格は据え置かれたが、日本での価格は円高を考慮し値下げされた。11月13日から注文を受け付け、順次出荷される。
 アメリカ・ニューヨークで発売前の製品に触れる機会を得たので、この原稿を新型の16インチMacBook Proで執筆しながら、ファーストインプレッションをお届けする。

■ディスプレーを拡大し、キーボードを刷新

 新たにディスプレーを16インチに拡大し、プロセッサーやグラフィックス、メモリー、ストレージなどのオプションの幅を広げた。「クリエイティブ・プロの道具」としての可能性をより大きく広げる、非常に魅力的な刷新となる。加えて、新しいメカニズムのキーボードの採用や、これまでノートパソコンで軽視されがちだったサウンドに見違えるような進化を与え、とくにエントリーモデルは、たとえビデオ編集などをしないオフィス向けの道具としても、長く上質なコンピューター体験を約束してくれる。
 筆者は1年前にiPad Proが登場してから、原稿執筆、写真・ビデオ編集、コミュニケーションといった主要なコンピューターでの作業の9割をiPad Proに移行した。iPadOSの登場によって、よりMacの登場回数が減少し、外出先だけでなく仕事場でもiPadをメインマシンとして活用してきた。

 今回の16インチMacBook Proは、そのパフォーマンス、拡大された快適なディスプレー、そして上質なキーボードと驚きのサウンドから、再びMacへ回帰するきっかけを与えるには十分な存在となった。より多くの人々がMacに振り向く、そんな瞬間を作り出すことになる1台と評価できる。その理由は、アップルがユーザーと共に新しいマシンを作り込んできた過程に裏付けされる。
 アップルは2019年6月に、クリエイティブ・プロの制作現場にふさわしいデスクトップコンピューターとこれに組み合わせるディスプレーとして、Mac ProとPro Display XDRを発表した。アップルによると2019年12月に出荷し始めるこれらの製品のテーマは、「世界で最高の制作環境は何か?」という問いに答えることだった。

 アップルでMacBook Pro担当プロダクトマネージャを務めるシュルティ・ハルデア氏は、「世界で最も人気のある15インチMacBook Proを最高の製品へと変えていくため、ノートブックに対しても、デスクトップと同じ問いかけを行った」と開発を振り返る。その際、これまでの15インチモデルを選ぶプロに対して、なぜ選び、気に入って使っているのかを尋ねたという。その結果、MacBook Proが支持される6つの条件が浮かび上がった。
1.より大きなディスプレー
2.非常に速いパフォーマンスを誇り、高い負荷に耐えること
3.できるだけ大きなバッテリーを搭載すること
4.アイデアに集中できる最もいいキーボード
5.巨大なストレージを搭載できること
6.素晴らしいサウンドシステム
 試作の過程でもクリエイターに対してテストを繰り返しながら熟成を進め、これらの条件を余さず答えることによって完成したのが、今回の16インチMacBook Proだった。ハルデア氏はクリエイティブの世界で「ゲームチェンジャーになる」と自信をにじませる。
■不可能を許さない拡張性を実現

 MacBook Proの上位モデルとして長らく存在してきた15インチモデルは、今回の刷新でラインナップから姿を消し、16インチモデルに移行することが明らかとなった。

 ディスプレーサイズはこれまでより1インチ拡大し、3072×1920ピクセルに。最大輝度500ニト、P3高色域の表示に対応するディスプレーは、額縁を上部で25%、両サイドで34%縮小し、より没入感あるディスプレーへと完成させた。テクノロジーとしてはこれまでの高精細液晶ディスプレーであるRetinaディスプレーが引き続き採用されている。
 画面拡大に伴い、ボディサイズは15インチモデルと比べて長辺8.7mm、短辺5.2mm、厚みも0.7mm増している。また重量は2.0kgと170g重くなった。これは後述するパワフルなプロセッサーとグラフィックスを搭載してなお、11時間のバッテリー駆動時間を確保するだけのスタミナを擁する。アメリカ連邦航空局(FAA)が定める航空機内持ち込みの最大バッテリー容量である100Whに拡大され、重量増加の要因となっている。充電器はサイズをそのままに、これまでの87Wから96Wへ強化された。
 プロセッサーには第9世代のIntel Core i7もしくはi9が採用され、前者は6コア、後者は8コアを備える。ヒートシンクを35%拡大し、ファンの効率を高め通気性も28%向上させるなど、高いパフォーマンスを発揮するための冷却効率にこだわっている。グラフィックスにはAMD Radeon RX 5300Mもしくは5500Mシリーズが搭載され、ビデオメモリーは4GBに加え8GBのオプションが選択可能だ。
 またメインメモリーは最大64GB、SSDストレージは最大8TBを搭載することができるようになった。当然コストは本体がもう1台買えるほど追加されることになるだろう。それでも世界を飛び回るクリエイターは、あらゆるデータを持ち運び、デスクに戻らなくても満足いく編集環境を手に入れられることを、価格以上に重視する。16インチMacBook Proは、高い基本性能に加え、プロが手に入れたい環境を実現する拡張性を確保した点が重要な要素だ。
■キーボードとサウンド、高い体験の質を追求

 では16インチMacBook Proが、金額に糸目をつけない現場のプロだけのものかと言われると、そうではない。例えば日本では値下げとなった2.6GHz 6コアIntel Core i7モデルというベーシックモデルであっても、16GBメモリーと512GBストレージを備え、上位モデルと同様のディスプレー、高性能グラフィックス、そして新モデルで追求した高いモバイルコンピューター体験を、より長い耐用年数で実現できる。
 今回のモデルでは、新たにMagic Keyboardが搭載された。このキーボードの名称はアップルのデスクトップモデルに付属もしくは別売されており、これをノート向けに再設計したものだという。

 2016年以降、MacBook Proには「バタフライキーボード」という薄型キーボードがTouch Barと共に搭載されてきた。個人的には0.55mmという薄いストロークが疲れにくく、指を滑らせるようなタイピングが可能で気に入っていた。しかし埃が詰まるなどの問題が生じやすく、筆者も時折念入りな掃除を強いられてきた。そこで新たに、デスクトップと同じシザーメカニズムを採用するストローク1mmと十分な深さを持ったキーボードに刷新された。
 新しいMagic Keyboardでは、バタフライ機構の際と同様のキーの安定性、正確性を担保しつつ、独自開発のラバードームで静粛性と打鍵感を作り出した。実際、この原稿は新しいMagic Keyboardを備えるMacBook Pro 16インチモデルで書いているが、非常に静かなタイピングを、安定して行うことができる。またこれまでTouch Barに統合されていたESCキー、Touch IDを兼ねる電源ボタンは独立したキーとなり、Touch Barの幅はやや縮まった。独立したESCキーはとくにプログラミングを行うソフトウェアエンジニアからのニーズが強かった仕様であり、ここでもユーザーの要望を聞いて製品に反映させる姿勢を見せた。
 オーディオの進化は耳を疑うほどだった。

 新しい16インチMacBook Proには左右合計6つのスピーカーを搭載しており、ウーハーは2つのドライバーを背中合わせに搭載することで振動を打ち消し合うことで、半オクターブ低い低音を鳴らすことを可能とした。そこから再生される音声は、まるで小型の高音質スピーカーをデスクに置いているかのような深い低音と広がるステレオ感で、非常に満足度の高い音楽や映画の体験を実現していた。iPhone 11、AirPods Proなど、昨今のアップルデバイスのサウンド品質には驚かされてきたが、 16インチMacBook Proにはそれらを上回る驚きがあった。
 加えて3つのマイクをデバイス左側のメッシュ部分に搭載してオーディオ処理を行うことで、ヒス音(シューという背景ノイズ)を40%低減させたという。Podcast番組の収録を外部マイクに頼らず行うことはたやすく、またノイズの少なさはビデオ会議の音声をよりクリアに届けることができるようになる。クリエイティブ制作の現場だけでなく、ビジネスの現場でも、これ1台で質の高い遠隔会議を実現できるメリットを見いだすことができた。
■モバイルワークステーションの金字塔として

 現在のコンピューターのトレンドを見渡すと、ハイエンドモデルはMacではなく、WindowsベースのゲーミングPCが主導権を握っている。それはノート型でも同様で、Windows PCではすでに有機ELディスプレーを搭載し、デスクトップをも凌ぐパフォーマンスを誇るマシンを選ぶことができる。

 そうした環境の中で、アップルはMacBook Proをどう育てるのか、難しい判断があったはずだ。スペックという側面で見れば、何をやってもWindows PCには敵わないとわかっていたからだ。そこでアップルはクリエイターの声を傾聴し、MacBook Proが選ばれる理由を強化する戦略に打って出た。その結果が、今回の16インチMacBook Proとして登場した。
 おそらく日本でのオプション価格が発表されれば、全部のオプションを盛り込んだ金額とその高さに注目が集まるだろう。しかしいくら高くなってもクリエイターにとっては「その仕様が存在すること」が重要であり、いくらお金を出しても手に入らないことのほうが問題なのだ。

 しかし幸いなことに、16インチMacBook Proのドルでの金額は据え置かれ、日本円ではむしろ価格が安くなった。プロの過酷な環境に備える高い基本性能はベーシックモデルにも共通している。例えばビジネスの現場で、5年以上の長い期間、より快適なコンピューター体験を手に入れる目的にも、16インチMacBook Proは最適なモデルといえるだろう。
 2020年以降、13インチMacBook Pro、MacBook Airといった小型モデルに対しても、16インチモデルのテクノロジーやノウハウが踏襲されていくことになるはずだ。それでも、パフォーマンス、そして余裕のあるディスプレーサイズを備えるノートパソコンの存在価値は、長く維持されることになる。
松村 太郎 :ジャーナリスト

最終更新:11月13日(水)23時00分

東洋経済オンライン

 

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