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1年目から「即死攻撃」、コインランドリー投資で見た地獄《楽待新聞》

11月12日(火)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
福岡市に住むアインさん(37)。2016年に約3000万円を借り入れ、コインランドリー投資をスタートさせた。不動産よりも投資額を抑えられ、常連客が付けば売り上げは右肩上がり、返済後にはサラリーマンの平均年収ぐらいの額が手元に残る──そんな夢のような計画だった。

「所有していた木造アパート3棟の、将来的な家賃下落対策にもなると思ったんです」。投資を始めたきっかけをアインさんはこう振り返る。ところが待っていた現実は、毎月40万円もの赤字を垂れ流し続ける地獄のような日々だった。

■魅力的なシミュレーション

2011年ごろ、サラリーマンとして働きながら、将来への備えとして不動産投資を始めたというアインさん。その後約6年間かけて、物件価格5000万円前後、利回り8%程度の新築木造アパートを3棟ほど買い進めていった。3物件とも満室が続き、さらに規模を拡大すべく次の物件を探していたが、2016年ごろになると市況が変わり、付き合いのある不動産会社から「これまでのような出物はもうない」と言われてしまう。

そんな時、広告でたまたま知ったのがコインランドリー投資だった。不動産に代わる新たな投資先として興味を持ったアインさんはメーカーのWebサイトにアクセスし、自ら資料請求をして営業マンと会うことにした。

営業マンから提示されたシミュレーションには魅力的な数字が並んでいた。初年度は利益が少ないものの、開業後しばらくすると常連客が増え、売り上げも徐々に増えていくという内容だ。月の売り上げ額は70万~90万円ほど。家賃や光熱費などのランニングコスト、借入金の返済額を差し引いた手残りは毎月17万~25万円ほどになる計算だ。

「アパートの家賃は下がっていく一方ですが、コインランドリーの売り上げは徐々に上がっていく。これは家賃下落に対するすごい武器になるぞ、と感じました」

新たな事業として、コインランドリーへの投資を決意したアインさん。アパート購入時から付き合いのあった地銀にこの案件を持ち込み、無事、機器購入費1600万円、工事費1400万円、計3000万円を、返済期間10年のフルローンで借り入れることができた。

機器は大型乾燥機が2台、2段式乾燥機(小型の乾燥機が上下に2台連なったタイプ)が4台、大型洗濯機が2台、小~中型洗濯機が3台、そしてスニーカー専用の機械が1台という構成。店舗面積は約30坪ほどと、比較的大規模なコインランドリーだ。

■繁忙期なのに、売り上げは想定の半分

アインさんが店舗を構えたのは福岡県某市、県道沿いに建つ建物の一角。メーカーから紹介された新築間もない平屋建ての物件だ。飲食店や美容室なども入居していた。駐車場も複数台完備、周辺にはマンションや飲食店もあり、コインランドリー店の立地としてはまずまずに思えた。

店がオープンしたのは2016年の11月半ば。初月は15日間のみの営業で、売り上げは約15万円。営業マンのシミュレーションには初年度でも月に70万円の売り上げが見込めるとあったが、その半分にも満たない。しかも年末年始のこの時期は、コインランドリーにとっては書き入れ時のはず。

「本当に大丈夫なのか」

不安が胸をよぎったが、「オープン初月だし、来月に期待しよう」と言い聞かせるしかなかった。

翌12月。月間の売り上げはやはり、想定を大きく下回る約34万円。諸経費を考慮すると収支はすでにマイナスだ。

「これはヤバいんじゃないか」

ここからが地獄の始まりだった。オープンから4カ月たっても、売り上げが大きく上がる気配はない。この月から借入金の元本返済も始まり、収支はマイナス50万円に。所有するアパート3棟から得られたキャッシュフロー約20万円を充ててもまだ30万円足りない。貯蓄を切り崩してなんとか返済したが、生きた心地がしなかった。

破産の文字が何度も頭をよぎった。この頃から、店舗の稼働状況が気になり、落ち着かない毎日が続いた。「店内の様子をWebカメラで確認できるシステムがあるんですが、毎日病的にそればかり見ていました。お客さんがいれば心が落ち着くんですが、空っぽだと激しく落ち込んだりして。とにかく毎日イライラしてましたね」

その後も相変わらず30万円以上の赤字が続いた。10月は1カ月の約8割が雨天という長雨となったことから、初めての単月黒字となった。しかし、黒字額はわずか8682円。

「こんなに雨に恵まれても、これだけなのか……」。貯金を切り崩しながら赤字地獄に耐え続けるアインさん。結局、2017年の年間売り上げ額は約484万円、家賃や電気、ガス代などの支出が541万円、そして借入金の返済が315万円、最終的な収支はマイナス372万円という、あまりに悲惨な結果であった。

■SNSでの出会いに「救われた」

経営が2年目に入ると、売り上げにわずかながら改善の兆しが見られるようになる。オープンから1年が過ぎ、周辺住民への認知度が上がったこと、また、洗濯機の料金を半額にするキャンペーンを打ち出したことなどが要因とみられた。

諸経費や返済を差し引いた最終的な収支はマイナス20万円台に。赤字であることに変わりはないが、所有するアパートのキャッシュフローでほぼ相殺できる金額だ。この頃を境に、アインさんの考えも少しずつ変わっていった。

「深く考えすぎて、イライラしてもしょうがない、って。破産を覚悟したこともありましたから、もう腹は据わっていました。あとはもう、とにかくやれることをやるだけだと開き直れました」

少しでも足しになればと、日中は知人が経営する会社を手伝っている。シングルファザーであるアインさんにとって、子育てと大家業、そしてコインランドリー事業を両立できる、融通の利く仕事はありがたかった。

今年に入ると、自身の経験をSNSで発信するようになった。Twitterで半ば自虐的に投稿したTweetがいきなり反響を呼び、多くの人の目に触れた。

「僕よりもずっとベテランの不動産投資家の方にも注目されたりして、驚きました。同じように赤字に悩んでいる人とつながることもできて、『自分だけじゃなかったんだ』って。それまで自分は特別運が悪かったのかと思っていたけど、そうじゃないことを知って救われた気がしたんです」

すぐにブログも開設。これまでの収支を丸ごと公開した記事が再びインターネットで話題となった。こうした反響についてアインさんはこう話す。「コインランドリー投資に関する中立な情報って意外と少ないんです。書籍やWebサイトもあるにはありますが、そのほとんどがメーカーが発信したもの。自分のように実際に投資をして、赤裸々に数字まで公開している人は少なかった。だからウケたんでしょうね」

■単体での挽回はほぼ無理

アインさんの発信した情報を見て、直接会いに来た投資家もいる。区分を中心に複数物件を所有する武井さん(仮名)だ。ちょうどコインランドリー投資を検討していたものの、不動産投資に比べて詳細な情報が少ないと感じていた。

そんな時に出会ったのがアインさんのTwitter、そしてブログだった。さっそく連絡を取ってみると、物件が近所にあることが判明。すぐに会う約束を取り付けた。

「会ってすぐに収支表や帳簿を見せてくれて、日々のクレームとかトラブルとか、いろいろと教えてもらいました。すごく参考になりましたね」。そう語る武井さんだが、初めてアインさんの収支表を見たときにはかなり驚いたという。「正直、これはひどいな、と。アインさんの場合、アパートがあったから生き延びられたけど、もしなかったらサラリーマンの給料では払いきれなかったと思う」

この日、2人の話題は「アインさんの今後」へ。この状況を脱するためには何が必要なのか──。まずはこの店の売り上げを改善していくことだが、売り上げが増えれば稼働率も上がり、ガス代や水道代などの変動費も上がるため大幅な売り上げ増は簡単ではない。家賃や金利の交渉は望めず、売却するにしても多額の出費を伴う損切りとなる。最近はコインランドリーにカフェを併設する業態が流行しているが、初期投資と人件費を考えるとリスクが高すぎて手が出せない。

結局、「単体での挽回はほぼ無理」というのが2人の結論だった。ローンが完済する10年目まで耐えきったとしても、収支は良くてトントン。返済がなくても雨が降らなければ即赤字という状況下では、できることは限られている。「ゆくゆくはアパートを1棟売却して、その売却益と残債を相殺できれば」。満室で稼働中の所有物件にかすかな望みを託すしかなかった。

■すべては「雨」次第

アインさんは自らメーカーにコンタクトを取り、自分の意志でコインランドリー投資をスタートさせた。現実とはほど遠いシミュレーションを提示された点には怒りもあったが、「自己責任と言われてしまえばそれまで」とも考えている。

後悔を口にすればキリがないが、そんな中でも「少しでも誰かの役に立てば」と、コインランドリー投資に関する具体的なアドバイスを話してくれた。

最も重要なのは、営業マンのシミュレーションをそのまま信じてしまわないこと。今回の投資でアインさんは「(売り上げは)多少下振れするとは思っていたが、まさか半分とは思わなかった。サブリース付きのアパート投資などとは違い、コインランドリーは1年目からいきなり『即死攻撃』を仕掛けてくる」と話し、赤字地獄の最大の要因となった「売り上げの予想と実績のかい離」に注意すべきだと話す。

アパートなどでは周辺の家賃相場が簡単に調べられるが、コインランドリーではそれも難しい。シミュレーションの妥当性はどうやってチェックすればよいのだろうか。これについてアインさんは「例えば近隣のコインランドリーで数時間張り込んで、どのくらいの売り上げがあるかを数えてみる方法だってある。本当はそこまでやるべきだったんだと思います」と厳しい表情で語った。

今回、アインさんはシミュレーション上の、言わば空想のような売り上げ予測を基にして店舗づくりを進めてしまった。「例えば洗濯機。5台のうち小~中型の3台はこの2年間、1日1回しか稼働していません。これが分かっていたら洗濯機の設置台数を減らして、店舗ももう少しコンパクトにして家賃を抑えられた。でも当時の私は、『どうせやるなら大きく始めた方がいい』という営業マンのセールストークに乗ってしまったんです」

そうしてもう1つは、すべては「雨」にかかっているということ。

「ちょっとここ、見てください。間接照明が仕込まれてて、夜だけ光るようになってるんですよ。少しでもおしゃれな内装にした方がよいと思い、営業マンに言われるままに導入してみたんですが、今のところまったく効果はないです。結局ね、雨ですよ、雨。雨が降るか降らないか。本当にこれだけなんです」

また店内の壁には動物の柄をあしらったクロスも張られている。「集客につながればと、十数万円をかけた」(アインさん)ものの、その価値があったかどうかは疑問だという。

晴天が続くと「不安で吐きそうになることもあった」というアインさん。「ここまで雨を待ち望む仕事って、農家とコインランドリー屋だけだって、誰かが言ってました。うまいこと言いますよね」と自虐的に笑う。



今、アインさんの原動力となっているのは2歳になる一人娘の存在だ。「(子供には)辛い思いをさせたくない。苦しい状況は続きますが、子供のためにも逃げるのではなく、正面から向き合うしかないと今は思っています」

アインさんは今まで、この店に娘を連れてきたことはないという。「いい思い出がないですから。いつか彼女が大人になって、その時にまだこの店が続いていたら、いろいろ話してもいいかな。その時は『オイシイ話には簡単に乗っかるな』って、伝えたいですね」
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:11月12日(火)20時00分

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不動産投資の楽待

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