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相鉄沿線で人気沸騰、「そうにゃん」とは何者か

11月10日(日)6時01分配信 東洋経済オンライン

雨の中レインコート姿でポーズをとる「そうにゃん」。列車の表示は「特急 新宿」だ=2019年10月(記者撮影)
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雨の中レインコート姿でポーズをとる「そうにゃん」。列車の表示は「特急 新宿」だ=2019年10月(記者撮影)
 神奈川県の中央部を走る相模鉄道(相鉄)が11月30日、JR東日本との相互直通運転を開始する。

 相鉄線の西谷駅(横浜市保土ケ谷区)とJR東海道貨物線の横浜羽沢駅(同市神奈川区)付近との間に約2.7kmの連絡線を新設。相鉄沿線からは横浜駅で乗り換えをする必要がなくなり、渋谷・新宿など東京都心へのアクセスが便利になることが期待されている。

 11月7日には報道関係者向けの試乗会も開催され、いよいよ都心直通が目前に迫ってきた。さらに2022年度下期には相鉄・東急直通線も開業し、都心への路線ネットワークが拡充。新横浜での新幹線への乗り換えといった利便性向上が図られる予定だ。
■相鉄のイメージ戦略

 相鉄は2017年12月の創立100周年と、JR・東急との相互直通運転の開始を見据え、グループを挙げて数年前からブランドイメージの向上に注力してきた。同社沿線以外のエリアでも認知度を上げ、利用者数の拡大につなげる狙いだ。

 2016年にまず、既存の9000系車両を「ヨコハマネイビーブルー」と呼ぶ濃紺の車体色にリニューアル。新造した東急直通用の「20000系」とJR直通用の「12000系」は当初からこの色を採用した。既存車両も濃紺色への塗り替えを進めていく方針だ。車体色以外にも駅や鉄道・バスの制服のリニューアルなど、統一したコンセプトでイメージアップに取り組んでいる。
 大変革が進む相鉄の「顔」として活躍するのが、幅広い世代に人気の同社キャラクター「そうにゃん」だ。車両基地の一般公開やステージイベントでは欠かせない存在になっているほか、いまではそうにゃん自体が主役の企画まで開催されている。

 そうにゃんは相鉄の「広報担当」として、自らのオフィシャルサイトで参加するイベントの予告や活動報告をしている。サイトのプロフィール欄によると、誕生日は3月10日で、出身地が相鉄線沿線の「新種のネコ」。「好奇心旺盛で人が大好き」な性格だが「ネコなのにタヌキに間違えられるのが悩み」という。
■なぜネコなのか

 関東の私鉄には東急電鉄の「のるるん」や京浜急行電鉄の「けいきゅん」、京王電鉄の「けい太くん」など鉄道車両をモチーフにしたキャラクターが多い。

 相鉄は「一方的な情報発信ではなく、お客さまと双方向のコミュニケーションをとるため」にイメージキャラクターの採用を決めたという。

 では、なぜネコをグループの顔に選んだのか。

 同社担当者によると「沿線に身近にいる、親近感のある動物だから」という理由のほか、「相鉄(SOTETSU)の頭文字、Sをモチーフにした相鉄のグループマークがネコの耳っぽく見える」のがきっかけのようだ。青い胴体もマークの色と同じだ。
 2014年に“入社”したそうにゃん。当初は社内にも「いまさら『ゆるキャラ』なんて……」(同社関係者)との意見もあったようだ。だが、持ち前の親しみやすさと同社の積極的なPR活動で知名度をどんどんと上げていき、2017年の「ゆるキャラグランプリ」では神奈川県のキャラのなかで1位(同社調べ)を獲得するまでに成長した。

 2017年12月に相鉄グループ100周年を記念して、横浜高島屋の特設会場で開催した「大相鉄展」では、実際の車内にもある「そうにゃん」をイメージしたオリジナル吊り革が来場者の目を引いた。
 「100th」の刺しゅうを入れた会場限定のぬいぐるみは2種類計400個を用意したが15分で売り切れ、担当者も「さながら昭和のバーゲン会場のようだった」と振り返る。

■新型車両の輸送に同乗

 ラッピング車両「そうにゃんトレイン」は2014年にデビューして以来、毎年デザインを変え、現在は「六代目」が活躍中だ。今年3月に営業運転を始めた六代目は「幼い頃のそうにゃん」をモチーフにした「ベビーそうにゃんトレイン」。車内にはそうにゃんをあしらった座席シートやゴールドの「そうにゃんつり革」まである。
 そうにゃんは神奈川県外にも出張して相鉄のPRに励んでいる。新造した20000系が2017年夏に山口県の工場から貨物機関車に牽引されて運ばれる際には、全区間乗車して運転台から新型車両のデビューと都心直通をアピールした。

 駅の話題作りにも一役買っている。小田急電鉄や横浜市営地下鉄との乗換駅である、相鉄いずみ野線の湘南台には、駅名をもじった「そうにゃんだい」の看板を掲げ、季節に応じて装飾を変えるフォトスポットを設置した。
 “駅名標”に記されている駅のナンバリングは本来の「SO37」でなく、そうにゃんを連想させる「SO28」とするなど芸が細かい。

 そうにゃんは鉄道の現場を盛り上げる役だけにとどまらない。沿線の保育園や幼稚園を訪問したり、車両センターに園児を招待したりして相鉄線に親しみをもってもらう努力を続けている。

 子ども向けには絵本まで作られた。2018年5月にそうにゃんの幼少期をテーマにした『そうにゃんとえきいんさん』、続いて同年11月に相鉄社員を目指すきっかけを描いた『そうにゃんとえきちょうさん』を発売した。舞台はかしわ台の駅だ。
 担当者は「絵本を通じて駅の業務を知ってもらいたい」と狙いを説明する。これまでに、1作目は約1万2000部、2作目は約7000部が売れたという。

 販売開始当初、そうにゃん自らが絵本に「そ」と書き込むサイン会を開催した。1作目のときは、各回30人×7回の先着順という事前の案内だったが、会場となった書店「有隣堂 横浜駅西口ジョイナス店」には約800人のファンが押し寄せた。

■お誕生会にファンが集合

 また、2019年3月10日にはそうにゃんの「バースデー サンクスフェスタ」を開催。会場は横浜駅西口のビルにあるイベントスペースだ。担当者は「車両基地のほうが鉄道らしいが、小さなお子さま連れだと線路を歩かせるのが危ないので屋内で開催することにした」と話す。
 当日のそうにゃんは、大勢のファンが待ち構える中、テーマ曲「そうにゃんです!」に乗って登場した。1年の活動を振り返るステージショーのほか、グッズ販売コーナー、子どもたちが色を塗ってオリジナル缶バッジを完成させるワークショップも用意された。

 思い思いにそうにゃんの缶バッジを作る子どもたちを見て、同社グループの広報担当者は「小さなお子さまもこれを機にファンとなり、将来の相鉄線のユーザーになってもらいたい」と目を細めていた。
 都心直通を機に知名度を上げて未来の利用者をいかに獲得するか。そうにゃんの愛嬌のある姿には相鉄の生き残りをかけた戦略が込められている。
橋村 季真 :東洋経済 記者

最終更新:11月10日(日)6時01分

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