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ジム・ロジャーズ「日本は東京五輪で衰退する」

11月10日(日)5時30分配信 東洋経済オンライン

「歴史を振り返れば、オリンピックは国民に富をもたらさない」と著名投資家のジム・ロジャーズ氏は指摘する(写真:筆者撮影)
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「歴史を振り返れば、オリンピックは国民に富をもたらさない」と著名投資家のジム・ロジャーズ氏は指摘する(写真:筆者撮影)
ファイナンシャルプランナーの花輪陽子です。先日、ジム・ロジャーズ氏の『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』の講演が東京、京都、大阪で行われました。講演や書籍などを中心に、私が印象に残っている日本人へのメッセージをお伝えしたいと思います。

 ロジャーズ氏は「オリンピックがあるからといって、その国の株を買ったり売ったりする材料にはならない」と言います。今回は、投資目線でオリンピックはどうなのかを解説します。
■五輪で借金だけが膨らみ、最後は弊害にむしばまれる

 「日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かって景気が上昇すると考えている人もいる。確かに、表向きにはオリンピックによるいい面もあるだろう。道路は改善され、真新しいスタジアムが出来上がる。こうした事業に関わった人たちは一定の恩恵を受けられるかもしれない。政治家も、ポジティブな成果をアピールするだろう。

 しかし、歴史を見れば、オリンピックが国家にとってお金儲けになった例がないことがわかる。一部の人に短期的な収入をもたらすことはあっても、国全体を救うことにはならず、むしろ弊害を及ぼす」
 私も「オリンピックに向けて不動産を買うべきか、あるいは売るべきか」と、よく聞かれますが、そうした材料は一過性のものにすぎないのです。とくに不動産はデベロッパーが建設をしているときとのタイムラグがあるために、オリンピックが終わってすぐに安くなるということも起こりにくいのです。

 それよりも、ハザードマップや地盤などもしっかり調べて、その不動産そのものに本当に投資価値があるかどうか、長期的に検討するほうがずっと大切といえそうです。
 「結局のところ、オリンピックのせいで日本の借金はさらに膨らむのだ。これは一般の人々にとって悪い結果にしかならない。やがてオリンピックが2020年に東京で開かれたことを、ほんの一握りの人しか思い出せなくなった頃に、オリンピックがもたらした弊害が日本をむしばむ」

 東京オリンピックのマラソン・競歩をめぐり、国際オリンピック委員会(IOC)は札幌開催を決めました。東京都はすでに、暑さ対策に約300億円をかけ、マラソンのコース上に遮熱性舗装をほぼ完了させています。マラソンは沿道で観戦することができるので、周辺エリアへの消費効果もあるほか、街並みを世界に発信する機会にもなります。マラソン中止で東京都は数百億円の機会損失を被るという試算もあります。
 当然、札幌変更で追加負担も発生します。東京都は追加負担しないと明言していますが、もし、結局は日本が負担するとなれば、誰が払うのでしょうか。オリンピックに興味がない人も追加負担する、ということになるかもしれません。そればかりか、まだオリンピックというものを理解していない子どもたちが「国の借金」として将来返済する羽目になるかもしれないのです。

■「公務員」に憧れ、リスクを取らない若い世代

 ロジャーズ氏は言います。
 「もし私が日本の若者だったら、こうした現実を前に、強い怒りと不安でいっぱいになることだろう。実際、不安を抱えている若者は少なくないようで、日本で就職活動をする若者を対象にした調査では、就きたい職業の第1位が公務員だったという。これは世界のほとんどの国では考えられない事態だ」

 与信管理を手がけるリスクモンスター社による「大学1、2年生が就職したいと思う企業・業種ランキング」調査(2019年10月発表)では、「地方公務員」(27.5%)、「国家公務員」(19.5%)がワン・ツーで、調査対象の大学生の約半数が公務員を希望しています。
 本来、今後稼げる人的資本が大きい若い世代は、リスクを取って外資系企業で働いたり、海外に飛び出したりしてもよいはずです。リスクを取ってこそ、リターンが最大になります。私の周囲では、リスクを取って起業したりしている人は高齢者です。人脈や資金をもとに起業する場合が多いですが、本来、リスクを取るべき人が取らずに、元気なのは高齢者というのが現実です。

 マネー相談に来る若い世代の多くも将来不安を抱えており、「お金を使うことができない」と言います。一般的な給与額にもかかわらず、まったく使わずに貯金をしているので、30歳になる前に1000万円以上貯めている若者もいます。それでも不安は消えないので「どうすればよいのか」と来るのです。資産運用をしている中心世代も高齢者で、本来は預貯金や債券を中心に運用すべき高齢者が、アクティブに株などで運用をしたりしています。
 ロジャーズ氏は続けます。

 「私は、2017年11月にアメリカの投資情報バラエティー番組に出演し、『もし私が今、10歳の日本人ならば、自分自身にAK-47(自動小銃)を購入するか、もしくは、この国を去ることを選ぶだろう』と発言した。この発言は放送開始から間もなく大きな話題になったようだが、これは将来の日本社会を見据えてのものだ」

 今回のインタビューの際にも、私に小さな子どもがいるということで、ロジャーズ氏はしきりに、「このままでは、あなたの子どもの生活水準は低下し続ける」と警告しました。
 私の子どもは、日本にいれば幼児教育・保育無償化の恩恵を受けられる年齢ではありますが、さまざまな恩恵が受けられなくても、海外に踏みとどまりたいという気持ちのほうが高まるばかりです。若者が「将来が不安で、今お金を使えない」という日本社会はおかしいからです。

■社会不安が増大し、30年後は犯罪多発国家に

 ロジャーズ氏は日本の将来をこう予測します。

 「30年後、日本では今より多くの犯罪が起きているだろう。現代の日本人が将来世代に回してきたツケを払う段階になれば、国民全体が不安を覚え、社会不安は募るものだ。50年後には、日本政府に対する反乱が国内で起きている可能性さえある。
 社会不安は、犯罪や暴動、革命といった形で明らかになる。『日本人は違う』『暴動など起きない』と言いたいかもしれないが、これは歴史上、どの国でも起きてきた社会現象なのだ」

 英国『エコノミスト』誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表した「世界の都市安全性指数ランキング」では、幸い東京が1位、大阪が3位に選ばれました。調査は世界の主要60都市を対象に、57の指標を「サイバーセキュリティ」「医療・健康環境の安全性」「インフラの安全性」「個人の安全性」の4分野で分析したものです。
 しかし、希望のなさが絶望に変わったとき、この数字は変わってしまうかもしれません。投資家目線で冷静に日本のことを考えると、オリンピックにかける危うさに気づくことができるかと思います。
花輪 陽子 :ファイナンシャルプランナー

最終更新:11月10日(日)7時45分

東洋経済オンライン

 

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