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12月15日に総選挙?与野党に広がる疑心暗鬼

10月22日(火)6時20分配信 東洋経済オンライン

10月11日の衆議院予算委員会で答弁に立つ安倍晋三首相(右手前、写真:時事通信)
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10月11日の衆議院予算委員会で答弁に立つ安倍晋三首相(右手前、写真:時事通信)
 ラグビーW杯での日本の大健闘や、相次ぐ台風被害で国会論戦の影が薄くなる中、与野党議員が「12月15日衆院選」説に神経をとがらせている。

 史上最長政権という「宰相の勲章」を手にする11月20日に安倍晋三首相が衆院解散を断行、投開票は大安の12月15日という選挙日程になっている。野党側も「安倍さんならやりかねない」(立憲民主幹部)と身構えるなど、永田町に疑心暗鬼が広がっている。

■盛り上がりに欠ける与野党の攻防
 参院選後初の本格論戦の舞台として10月4日に召集された臨時国会は、消費税10%をめぐる混乱や台風災害への対応、さらには関西電力をめぐる巨額な原発マネーの闇など、野党側にとって「突っ込みどころ満載」にもかかわらず、与野党攻防は一向に盛り上がっていない。

 天皇即位に伴う一連の皇室行事や、安倍首相が設定した重要な外交日程などで飛び石の審議日程になっていることもあるが、臨時国会の召集前から取り沙汰されていた年内の解散・総選挙説に野党側が浮足立っていることが背景にあるとみられている。
 10月21日で前回衆院選からちょうど2年が経過し、「これからはいつ解散があってもおかしくない」(自民幹部)のが現実だ。それだけに、統一会派を組んで政権攻撃を強めようとする立憲民主党などの主要野党は、「首相が狙う国会での本格的憲法改正論議にわれわれが徹底抗戦すれば、いら立った首相が伝家の宝刀を抜きかねない」(国民民主幹部)と緊張感を隠さない。

 今後の政治日程をみても、安倍首相が衆院解散を断行する機会は限られている。自民党総裁の任期満了まで2年を切り、解散のタイミングは「事実上、年内か東京五輪後の来年秋の2択になる」(自民選対)との見方が支配的だ。
 現在の衆院議員の任期は2021年10月21日までで、首相の自民党総裁任期は2021年9月末。このため、政府与党幹部の多くは「首相が解散するとすれば、2020年夏の東京五輪・パラリンピックの終了を受けた同年秋しかない」(有力閣僚)と読む。

 ただ、政府与党にとっては「今年12月の選挙のほうが、来秋より政治環境が有利」(自民長老)とされる。立憲民主、国民民主両党など旧民主党系党派が、1強政権打倒に向けて臨時国会前に統一会派を組んだが、再結集による早期の新党結成への展望は開けておらず、共産党も含めた野党統一候補擁立への調整も難航必至だ。
 しかも、政府与党が懸念する消費税10%による日本経済への悪影響も、GDP速報値など具体的な数字が明確になるのは年明け以降となり、「年内の政権への打撃は少ない」(財務省幹部)とみられている。本命とされる来秋選挙では「野党の選挙協力も進み、東京五輪後の急速な景気悪化などで、選挙への不安要因が拡大する」(自民長老)との見方が少なくない。

■12月選挙ではいずれも自民党が圧勝

 もちろん、「解散は時の首相の専権事項」(政府首脳)で、安倍首相も訪米中の9月下旬の記者会見では「頭の片隅にも、真ん中にもない」とこれまでどおりの表現で年内解散を否定していた。しかし、2夜連続で開催された衆参与党国対幹部との懇親会では、「あいさつと解散は急に来る」(10月8日)、「12月の選挙に勝ったことがある」(10月9日)と軽口をたたき、出席者をざわめかせた。
 確かに、第2次安倍政権発足直前も含めた3回の衆院選のうち、2012年は12月16日(11月16日解散)、2014年は12月14日(11月21日解散)が投開票日で、いずれも自民が圧勝している。このため、それまでは「単なる与太話」(自民若手)とされてきた12月15日衆院選説が、にわかに現実味を帯びた。

 国会と皇室行事と首脳外交が錯綜する年末までの過密な政治日程からみても「選挙をやるなら、この日程(12月15日衆院選)しかない」(自民選対)のは事実。さらに、10月22日の即位礼正殿の儀に伴うパレードを台風対応を理由に11月10日に延期したことも、「解散への布石では」(国民民主幹部)との臆測につながっている。
 1993年6月の両陛下結婚の儀の際のパレードでは、沿道の大観衆が拍手と歓声で祝福した。それだけに、今回首相らがあえてパレードだけ日程を延期したのは、「解散直前に明るい話題を設定する狙いでは」(共産党幹部)と受け取る向きもあるからだ。

 そもそも主要野党には、臨時国会召集前から「首相が改憲の是非を争点に会期中に解散に打って出るのでは」との警戒感が広がっていた。改憲の前提となる国民投票法改正案をめぐる与野党対立で、衆参両院の憲法審査会の審議は難航している。
 自民党は今国会で早期に改正案を成立させ、自民改憲案(イメージ)を軸にした本格的な改憲議論に入ることを目指しており、野党側は「改正案の成立さえ見通せない状況となれば、首相が解散に打って出る」(立憲民主幹部)と読む。

■与党内の動きは今のところ鈍いが…

 しかし、与党内では今のところ「解散・総選挙の可能性が高まっているという皮膚感覚はまったくない」(鈴木俊一・自民党総務会長)など年内選挙には否定的な見方が支配的だ。首相の女房役の菅義偉官房長官も、民放テレビ番組で「消費税率を引き上げた今は、経済をしっかり軌道に乗せていくことがものすごく大事だ」と年内選挙説を否定した。
 首相発言が飛び出した会合についても、「国会運営の引き締めと、統一会派を組んだ主要野党へのブラフ(脅し)だ」(細田派幹部)と解説する向きが多い。

 年内の政治環境をみても、菅氏が力説する増税対策だけでなく、来年1月1日発効が前提となる日米新貿易協定の承認が今国会の最優先案件となっている。新貿易協定について、主要野党は「一方的な譲歩で、国益を損じている」(国民民主幹部)として国会審議で厳しく追及する構えで、現状では解散日とされる11月20日までの決着は極めて困難だ。
 これを踏まえ、解散・衆院選の日程をそれぞれ1週間遅らせる選択肢もあるが、12月下旬の投開票では来年度予算編成が越年も含めて大幅遅れとなることが避けられず、与党内に要望が強い台風被害対策のための早期補正予算編成にも支障が出る。さらに安倍首相は12月中下旬にはインド、24日前後には中国訪問を控えており、「12月22日投開票は実質的に困難」(政府筋)だ。

 安倍首相は参院選前の5月30日の経済団体会合で、トランプ大統領との強風下のゴルフ対決に絡めて「風という言葉には今、永田町も敏感だが、1つだけ言えるのは、風というのは気まぐれで、コントロールできるものでない」と発言し、衆参ダブル選説を加速させたことがある。
 与党内では「今回も野党をおびえさせて、改憲論議も含めて国会運営の主導権を握るのが首相の狙い」(自民長老)との見方が多く、半年前とは違って与党衆院議員による選挙準備の動きも鈍い。ただ、「選挙が好きで、大胆な勝負に出たがるのが首相の性格」(自民長老)とされるだけに、永田町に広がる疑心暗鬼は当面、消えそうもない。
泉 宏 :政治ジャーナリスト

最終更新:10月22日(火)6時20分

東洋経済オンライン

 

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