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夢を育てよ~素敵なあの人に聞いた、夢と備えの話~吉本ばななさん

10月21日(月)11時30分配信 SODATTE

1987年、大学卒業直後に『キッチン』で鮮烈なデビューを果たした、吉本ばななさん。その後も発表する小説は、立て続けにさまざまな文学賞を獲得。現在、吉本さんの著書は、世界30カ国以上で翻訳・出版されており、日本を代表する作家のひとりです。吉本さんの紡ぐ言葉に救われてきた人が世界中に存在します。

書くために生まれてきたような存在である吉本さんは、なんと5歳のときにすでに小説家として生きていくことを決めていたのだとか。吉本さんはその夢を、どのようにして実現したのでしょうか。早くから才能を開花した吉本さんですが、貯金が底をつき、資金繰りに苦労したこともあったそうです。大切なお金のこと、そして、著名な評論家だった父・吉本隆明さんや、息子さんのことについても、お話を伺いました。

●吉本ばななさんプロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30カ国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『切なくそして幸せな、タピオカの夢』『吹上奇譚 第二話 どんぶり』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた単行本も発売中。

5歳の時に自立したいと思った

(写真:SODATTE)
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(写真:SODATTE)
「文章を書くことを仕事にしようと決めたのは5歳の時です。私は東京の下町に生まれたのですが、周囲の大人たちを見て、仕事がないと大変なことになる、私はひとりでも生きていけるように自立したいと思ったんです。そこで、まず自分に何ができるかを考えました。5歳くらいの時、幼心にも、朝早く起きて、同じ時間に会社に行くのは私には難しいと思いました。また、姉はすごく絵がうまく、姉は実際、漫画家になります(編集部注:ハルノ宵子さん)。絵では姉にかないません。それなら私は小説を書こうと決めました。ほかにできることがなかったからです。いろいろ考える前に決意したのが良かったのかもしれませんね」

吉本さんは、文芸評論家の吉本隆明さんの次女として、1964年、東京・文京区で誕生しました。7歳違いの姉の影響もあってか、漫画は、「物心ついた頃からよく読んでいました」そうです。

「いろいろな本を読みました。本や漫画はお小遣いとは別に買ってもらえたんです。いちばん最初に読んだのは、『オバケのQ太郎』です。『銀河鉄道999』『あしたのジョー』も夢中で読みました。その後、テレビアニメの『機動戦士ガンダム』も出てきて、漫画やアニメに勢いがある、いい時代だったと思います。大島弓子さんや萩尾望都さんの作品はバイブルでした。小説で印象に残っているのは、『シャーロック・ホームズ』シリーズです。作者のアーサー・コナン・ドイルは情景描写に長けていて、雰囲気が伝わってきて夢中になって読みました」

漫画や本に夢中になる一方、吉本さん自身も小説を書き始めます。最初に書き上げたのは7歳の時でした。

「書き上げるペースはいろいろでしたが、ひとつ作品が完成したら次の作品を書くといった感じで、書き続けることを意識していました。ジャンルは、ホラー的なものだったり、ファンタジー系だったりさまざまでしたが、異世界に行ってしまうようなものが多かったと思います。どの程度の労力で、どのくらいの長さのものが書けるのか知りたかったので、原稿用紙に書いて文字数を把握するようにしていました」

夢は親には絶対に言わなかった

(写真:SODATTE)
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7歳の頃から書き続け、そして、「(小説家に)なれない可能性は考えてもいませんでした」と語る吉本さんですが、19歳になるまで、評論家である父親に書いたものを見せることはなかったそうです。

「絶対に小説家になると決めていたので、父親に見せてなにか言われるのが嫌だったんです。ある程度までうまくなってから、読んでもらおうと決めていました。私は、両親に自分の夢を話さないというのも、夢を実現させるひとつの方法だと思っています。夢を口にしたことにより、可能性をつぶされてしまうこともあると思うんです。たとえば、ピアノが弾きたくても、親が良かれと思って決めた先生と相性が合わなくて、ピアノ自体を嫌いになってしまうこともあるかもしれません。私の両親は、“自分でやれ”というタイプでしたが、それでも絶対に親には言うまいと思っていました。

初めて父に見せたのは、そろそろ投稿しようかなと考え始めた、19歳のときです。父はけっこう褒めてくれました。ただ、私の書く小説は、普段知っている私とは結びつかないようで、少し意外だったみたいですよ」

大切な人を喪う悲しみからの再生を描いた、デビュー作の『キッチン』は、海燕新人文学賞を受賞。以降、出版する本は軒並み、ベストセラーとなり、出版界を席巻します。

「デビュー後は毎回、父に本を渡していました。少しでも気が抜けたものは気が抜けていると指摘されたし、失敗作は失敗作だと言われました。それが、すべて納得がいくんです。『キッチン』の時だったでしょうか、一度だけ父が評論文を書いてくれたことがあるのですが、そこには、今の私が読んでも活かせるようなことが書かれているんです。父の批評で印象に残っているのは、『どんぐり姉妹』を書いた際、『あとは読むほうの好みの問題で、もう完成している』と言ってもらったことです」

夢を叶えるための「近道」はない

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5歳にして明確に夢を定め、それを実現した吉本さんにとって、「夢がわからない、やりたいことがわからないのは、正直、私にはない感覚なんです」それでも講演会などで、そういった相談を受けることも多いといいます。

「何がやりたいのかわからない人にアドバイスするのは難しいです。小さくても自分のやりたいこと、好きなことを見つけたらどうですか、とお伝えしています。そして、それを続けることです。積み重ねる以外に夢を実現させる方法はないと私は思っています。近道はありません。物事が、ばっとうまくいくときがあるのは、積み重ねがあってこそ。コツコツやるのが楽しいという気持ちを持つことが大切です」

そのやりたいこと、好きなことがわからず、自分を模索し続けている人も少なくありません。

「“やりたいこと”と“向いていること”が違うこともあります。たとえば、歌が好きでCDを出したけど誰も買ってくれないという相談を受けることもあるのですが、ニーズがあったのかどうか考えるなど、現実に向き合うことも大切だと感じます。家族や親しい友人など、自分のことをよく知っている人に、客観的に自分を見てもらうのもいいと思います。

自分を客観的に知ることは大切ですが、やりたいのに前に進まない人が多すぎるようにも感じています。私は夢を実現させることとお金があるかないかって関係がないと思っています。やりたいことがあるならやればいい。大抵のことはお金がなくてもできると思うんです。たとえば、私の場合、ノート一冊あれば小説は書けますし、どうしてもお金が必要なら、多くの人の場合、借りることができると思うんです。奨学金制度もありますし、1カ月に1万円ずつ貯めれば、10年で120万円になります。それだけあれば、引っ越しくらいはできると思うんです。まずは行動することです」

一文無しになったときの話

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吉本さんの口調によどみはありません。長年、ベストセラー作家として君臨している吉本さんに、お金に関する心配ごとなどあるはずはない、だからそう言えるのだろうと考える人も多いでしょう。しかし、多くの人が避けては通れない、親の介護に関わる費用がかさみ、一時期は、「一文無しになりました、本当に」と吉本さん。2012年、吉本さんは、父・隆明さんと、母・和子さんを立て続けに亡くします。その数年前から、ご両親ともに介護が必要な状態だったそうです。

「介護は姉が主体でやってくれていて、私は経済担当でした。お金を入れるために必死で仕事を入れましたが、出ていく金額がすごく、貯金もあっという間になくなりました。両親は入退院を繰り返し、何度も救急病院に運ばれましたし、家の改装の費用も必要で、地獄を見ましたね。出版社に印税の前借りもしました。本当にぎりぎりでした。

父もそれほどお金を持っていたわけではありません。文筆業って、それほどお金にならないんです(笑)。父は家のローンを返済し、その後は年金で細々と暮らしていました。ただ、父は、姉と私、それぞれの名義で積立貯金をしてくれていたんです。それも300万円程度で、介護にかかる費用に比べたら大きな金額ではありませんでした。すぐに介護でなくなってしまいましたが、それでもとても助かりました。
そして、一文無しになった頃、これから介護の費用をどうしようと考えていた矢先に、両親は相次いで亡くなりました」

そんな苦しい期間を経て、吉本さんのお金への考え方はどう変化していったのでしょうか。

「親の介護もそうですが、出版不況の影響も大きかったですね。息子の出産時期にも重なり、今後、どうやって生活していこうか、本当に悩みました。

今感じているのは、お金には芯となるものが必要だということです。まとまったお金がないとお金は貯まりません。まとまったお金があれば、お金は磁石のようにくっついてきます。100万円くらいでいいと思います。まずは塊を作ることです。また、自分が理想とする生活をするためには、どの程度の収入が必要か、知っておくことが大切だと思います。収入は多ければ良いというわけではありません。それぞれの生活に適した収入があると思います」

子どもに「こんな人になってほしい」と思ったことはない

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吉本さんは2003年、39歳の時に第一子となる長男を出産しています。彼への思いを聞いてみたところ、少し意外な答えが返ってきました。

「生きていてくれれば、それでいいと考えています。ある時、父に、息子は自由に育てるべきだと言われたんです。『あの子の自由さはすごい。君たちはとても自由に彼を育てているつもりだろうけど、あの子は君たちが思う以上に自由な子だし、彼にとっては自由がすべてだ。もっと自由にさせてあげるべきだ』と」

吉本さんの息子は義務教育を受けていません。私立の小学校を1年でやめたあと、自由を尊重し、「好きなことを徹底的にやらせる」教育を特徴とする「サドベリー教育」を提唱する学校に入り、卒業しました。

「義務教育を受けさせないと決めるときは私もさすがに迷いましたし、動揺もしました。学歴ゼロになるわけですから。でも、彼は卒業後、自分の意思で、中卒認定を取得しました。それまで勉強を一切してこなかったわけですから、大変だったと思います。放っておけば、自分で考え、決断できるようになるものですね。放っておいてみるものだと思いました(笑)。息子の学校の子の多くは中卒認定をとっていますし、息子がとくに優秀というわけでもありません。それでも、小・中学校の9年間の勉強は、本気を出せば1年でできるということです」

とはいえ、大切な自分の子どもを“放って”おくのは、多くの人にとって、そう簡単なことではありません。つい口を出してしまうのではないでしょうか。

「何か問題が生じたとき、その問題が深刻であればあるほど、彼はすぐには言ってきません。私も息子から言い出すのを待ちます。放っておけば、いつか自分から話してきますから。ただ、危険なこと、礼儀に関することは真剣に怒りましたよ。その点ではかなり怖い親だったと思います。また、通っていた学校の学費が高かったので、無駄にしないでほしいということは伝えていました(笑)」

息子さんに、どんな風に育って欲しいかという質問にも、吉本さんはしなやかにこう答えます。

「本当に何も期待しません(笑)。息子も私がそう思っていることをわかっていると思います。子どもを産んで感じたのは、子どもは思い通りにならないということ。生きていてくれさえすればいいんです」

インタビュー・文/長谷川あや 写真/杉山和行

●これまでの夢や目標

5歳の時から、書く仕事で自立したいと思っていました。

●夢を実現するためにやってきたこと

7歳で小説を書き始め、以来、書き続けています。

●夢を実現するために大切なこと

続けることだと思います。積み重ねる以外に夢を実現させる方法はないと思っています。近道はありません。コツコツやるのが楽しいという気持ちを持つことが大切です。

●大切な時間やお金の使い方

自分が理想とする生活をするためには、どの程度の収入が必要か、知っておくことが大切です。

●お子さんの可能性を伸ばすために大切にしていること

放っておいています(笑)。そもそも息子にはなんの期待もしていません。生きていてくれればいいと思っています。

●これからの夢や目標

特にないですね、ただ、書くことを続けていきたいです。

●読者へのメッセージ

海外に行って感じるのは、日本人だけが楽しくなさそうな顔をして歩いているということ。もっと笑って生きたほうが、人生は楽しいと思います。

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・投資判断の参考となる情報提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではありません。
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商号等:大和証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第108号

最終更新:10月21日(月)11時30分

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