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災害復旧作業に潜む「意外な健康リスク」の正体

10月19日(土)5時00分配信 東洋経済オンライン

台風19号による阿武隈川の氾濫で被害を受けた民家の後片付けをする高校生ボランティア(写真:時事通信)
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台風19号による阿武隈川の氾濫で被害を受けた民家の後片付けをする高校生ボランティア(写真:時事通信)
台風19号の通過から1週間が経過し、被災地の復旧作業も徐々に進みつつある。こうした状況の中、ワールドカップラグビーで来日した各国の選手がボランティアで片づけを手伝う姿が報道され、温かい気持ちになった読者も多いだろう。
だが、その活動には危険が背中合わせであることをご存知だろうか。
災害後の復旧作業に潜む「健康リスク」とは何なのだろうか。国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長に聞いた。
■長袖シャツと長ズボン、ゴム手袋の着用を

 ――ラグビー選手が、サンダル履きで半そでのシャツ、半ズボン姿で災害ボランティアに参加していました。医学的に問題はないのでしょうか。

 彼らの行動には心から敬意を表したいと思います。ひとりの日本人としてありがたいことだと感じました。

 ただ、今後への教訓として知っておいていただきたいことがあります。軽装での災害復旧支援作業は、感染症予防の観点からは決してお勧めできないということです。長袖シャツと長ズボン、ゴム手袋を着用し、水が入らず釘などを踏んでも踏み抜かないような底の厚いしっかりした靴をはいて自分の身を守ることが大切です。
 ――災害支援ではどんな危険があるのでしょうか。

 ケガそのものに加えて、ケガによる感染症があります。なかでも破傷風には気をつけなければならない。

 初期の破傷風は口が開けにくくなり、筋肉が突っ張る感じがするといった程度の症状ですが、重症化すると全身の筋肉が緊張、痙攣を起こします。こうなると集中治療室で人工呼吸器をつけなければならなくなります。抗血清剤の投与で回復に向かいますが、完治には2~3週間はかかります。手遅れになれば亡くなることもあります。
 破傷風菌は嫌気性菌で通常は土の中にいます。ところが洪水などで土砂が削られ流れてくると、地表面に出てきます。小さな傷口から体の中に入り込み、膿などの中で空気に触れない状態で増えます。傷口は小さくても深い傷で感染、発症しやすいといわれています。が、浅い傷であっても発症に至る可能性はあります。

 ただ、破傷風だという診断は案外難しい。感染からおおむね3日~3週間で発症しますので、短期間で発症する場合はともかく、3週間も経ってからでは中々わからない。潜伏期間には症状がほとんどないので医師も患者さんもピンと来ないことが多い。破傷風と診断するには、いつ頃こんな野外活動をした、などという患者さんの情報も必要です。
 ――破傷風にはワクチンがあります。

 1968年以降に生まれた日本人には定期接種が行われています。しかし、それ以前は自治体により差があります。まったく接種していない人も多いとみられ、破傷風のリスクについて知らない人もいると考えられます。このため、若い人よりも現在52歳以上の中高年のほうがリスクが高い。

 また、子どもの時に接種していたとしてもほぼ10年で効果が切れますので、若い人でも災害ボランティアに行く前に追加で接種しておいてほしい。
■「たかが風邪」とあなどってはいけない

 ――それ以外に注意すべきことはありますか。

 土壌中の細菌には地域性もあるので今回の被災地と同じかどうかはっきりわかりませんが、霧状になった水から呼吸器感染するレジオネラ菌やフィリピンなどで洪水後に多い経皮・経口感染するレプストラ菌があります。ただ、国内での感染例はそれほど多くありません。

 それよりも、東日本大震災や最近の豪雨災害などでいちばん多いのが単純な風邪です。たかが風邪とあなどってはいけない。避難所生活が長期化すればストレスがたまって体も弱りますから、こじらせて肺炎を起こす高齢者が多いという調査結果が出ています。
 今年はインフルエンザの流行がすでに始まっていますし、風疹や麻疹の流行も終わっていません。集団生活ではノロやロタといった消化器系の感染症も多くなります。

 予防するには、無理をしないこと、マスクをするなど咳エチケットを守る、手をしっかり洗うといった基本的な衛生管理が必要です。また、被災者自身の手では難しいことかもしれませんが、栄養バランスのいい食事も大切です。ボランティアに行く人も同じです。ケガをしたら傷口を良く洗って消毒することにも気を配ってほしいですね。
小長 洋子 :東洋経済 記者

最終更新:10月19日(土)5時00分

東洋経済オンライン

 

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