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カローラから始まったカーナビ専用機の大転換

10月14日(月)5時20分配信 東洋経済オンライン

iPhoneとつないでCarPlayを活用も(筆者撮影)
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iPhoneとつないでCarPlayを活用も(筆者撮影)
 日本車の新車では今後、カーナビが消滅することになりそうだ。正確に言えば、カーナビの機能は残るが、新車では旧来のようなカーナビ専用機器は消滅する運命にある。

 そう言い切れる理由は、日本市場で軽自動車以外の乗用車(登録車)で新車販売約5割という圧倒的シェアを誇るトヨタが、新車組み込み型の「ディスプレイオーディオ」を、国内販売モデルのほぼすべてで標準装備することを決めたからだ。

■ユーザーの好みに合わせてカスタマイズ
 「ディスプレイオーディオ」とはその名のとおり、オーディオ機能を持つディズプレイ(画面)だけの状態。パソコンやスマホのように、最低限の機能はあるが、ユーザーの好みに合わせてアプリやサービスなどを購入してカスタマイズする、という考え方だ。

 カーナビやオーディオの専用ディスプレイ化は、ダイムラー(メルセデス)やマツダですでに量産されているが、ディスプレイだけの「素の状態でも売る」というトヨタ方式は珍しい。また、「ディスプレイオーディオ」にはCD/DVDプレーヤーはない。
 導入は2019年9月に発表された新型「カローラ」がキックオフとなり、今後はマイナーチェンジやフルモデルチェンジのタイミングで各モデルに標準装備される。

 こうした先進機器の導入は、従来ならば上級モデルから始めるのが自動車メーカーの常套手段だ。にもかかわらず、あえて大衆車に属する「カローラ」で行ったのは、モデルとしてのフルモデルチェンジが「ディスプレイオーディオ」導入時期にたまたまマッチした、ということもあろう。
 だが、それ以上に「カローラ」という商品の成り立ちに深く関与している。1966年の初代登場のときから「カローラの使命は、お客様の期待にプラスアルファ」をモットーとしてきた。さらには「良品廉価」「時代のニーズに合わせた変化」を掲げてきたクルマでもある。

 それゆえに、大きく変わるのは「カローラからだ」と、トヨタは主張する。「ディスプレイオーディオ」はそれほどまでに、トヨタにとって大英断なのである。

■フル装備でも旧来型カーナビより安い? 
 「ディスプレイオーディオ」の詳細は新型カローラのホームページで確認していただくほうがわかりやすいと思うが、本稿では概要を紹介する。

 標準装備の状態では、AM/FMチューナーやBluetooth接続機能、そしてスマートデバイスリンクと呼ばれるスマホと車載器との連携サービスを使って無料ソフト「LINEカーナビ」が使える。さらに、遠隔でのメンテナンス管理や駐車場での位置を検出するサービスなどを備えたT-Connectが5年間無料で使用できる。
 つまり、「素の状態」では「LINEカーナビ」以外のカーナビ機能はない。この先は、オプション設定となる。まず、iPhoneと接続する「CarPlay(カープレイ)」とアンドロイドフォンと接続する「Android Auto (アンドロイドオート)、さらに地デジTV放送が見られるキットが初期費用のみ3万3000円。これで、どのスマホ経由でもカーナビ機能が使えるようになる。

 これから先は、「ディスプレイオーディオ」そのものにカーナビ機能を組み込むオプションとして大きく2つある。
 1つが、エントリーナビキットが初期費用6万6000円。さらに、T-Connectを活用した上位ナビキットが11万円となる。また、標準装備ディスプレイ7インチを9インチに広げるのに2万8800円。オペレーターによるレストランやホテル予約サービスなどはさらなるオプション設定だ。

 仮にT-Connectなどをフル活用した最上位パッケージを買ったとしても20万円でお釣りがくる計算だ。T-Connectは6年目以降、継続する場合は年間3630円となる。
 近年、ディーラーオプションでも、アフターマーケットでも、カーナビ専用機はエントリーモデルでも10万円台前半、上級機は20万円超えが当たり前となっている中、サービス内容を踏まえると「ディスプレイオーディオ」での「全部乗せ」には割安感がある印象だ。

 「ディスプレイオーディオ」導入の背景に、DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)の存在がある。

 DCMは車載通信機器で、基本的には1分に1回の頻度で車載コンピューターネットワークの情報を「モビリティサービス・プラットフォーム」というトヨタ専用クラウドサービスに送信し、さまざまなサービスに活用する。DCMは2020年までに、日本・アメリカ・中国で販売する乗用車に標準装備される。
 前述にように「ディスプレイオーディオ」には数多くのオプション設定があるが、実は工場出荷の状態で「全部乗せ」になっており、DCMからの指示で「機能別の窓を開けて、機能を作動させる」(トヨタ関係者)という仕組みだ。

■ディスプレイオーディオが主流になる可能性

 こうした大がかりなデータエコシステムを自動車メーカー各社が独自開発するのは、費用対効果の面で得策ではない。トヨタと資本関係または業務提携関係にあるダイハツ、マツダ、SUBARU、そしてスズキはDCMとディスプレイオーディオを今後、標準装備化する可能性は高い。
 こうしたトヨタ陣営の動きに当然、日産アライアンスとホンダも対応せざるをえなくなる。そうなると、日本の新車から近年中に、カーナビ専用機は完全になくなってしまう。ミニバン向けなど、大型ディスプレイのカーナビ専用機の需要は、一定数は残るかもしれない。だが、ディーラーオプションとしては消滅し、アフターマーケットのみの販売になりそうだ。

 1990年代から日本が世界をリードして技術革新が進んできた、カーナビ専用機。クルマのコネクテッドサービス本格化に伴い、姿を消す運命にある。
桃田 健史 :ジャーナリスト

最終更新:10月14日(月)5時20分

東洋経済オンライン

 

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