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クレーム客をファンに変えた、ある水族館の「神対応」とは

10月10日(木)15時00分配信 マネー現代

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(文 谷 厚志) ----------
サービス業をはじめ、お客さんと接する仕事につきものなのが「クレーム」だ。どうすれば相手の怒りを笑顔に変えることができるのか、頭を悩ませている人も多いだろう。ある水族館に寄せられた、意外なクレーム。しかし、著書『超一流のクレーム対応』で知られる、人気クレーム・コンサルタントの谷厚志氏のアドバイスで、そのクレーム客は「ファン」へと変わったという。「神対応」の秘密を、谷氏みずから明かす。
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「なりたかった姿」を理解する

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 クレームはなぜ起きるのか? 
 それは、お客様の大きな期待があったからです。

 「この会社にお願いしたら、こうなるだろうと思っていた」「便利で快適な生活になるだろうと信じていた」「これくらいはきちんとやってくれるだろう」という期待をお客様は持っていたのです。

 でも実際、期待していたものと全然違うと、「ガッカリだよ!」「残念だよ!」「期待外れだよ!」となります。このお客様の期待と現実のギャップ(落差)がクレームの正体です。

 このギャップに失望して悲しんでいるお客様の気持ちを理解しなければいけません。

 お客様の失望感を理解しようとして、しっかり共感しながら話を聴いていると気づくことがあります。それは、クレームはお客様ならではの事情や、対応者側(企業側)が想像もしなかったような背景、さらには、その商品やサービスを手に入れてお客様はどうなりたかったのか、つまりお客様の「なりたかった姿」です。

 これらをしっかり理解することが大切です。

 ここで紹介するお話は、ある水族館のイルカショーへのクレームの事例です。ご家族で来館されたお客様から、その水族館の公式サイトに「イルカショーのイルカが思ったより上に飛ばなかった……。イルカのやる気がなかった」という内容の書き込みがあり、この書き込みへの対応に関して、水族館のクレーム担当者から相談を受けました。

 そこで、ウェブやSNS上においてお客様からの指摘(申し出)の主旨がわからない場合の対応法として、次のように返信回答してもらいました。

 「ご指摘、誠にありがとうございます。もう少し詳しくお話を聴かせていだきたく存じます。お手数ですが、当社お客様相談室 0120-○○○○-○○○○までお電話いただきましたら、私〇〇が担当させていただきます。ご連絡、心よりお待ち申し上げております」

このクレームにどう答えるか?

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 この返信回答の翌日、書き込みをされたお客様(ご家族のお母さん)から担当者宛てに電話が入りました。その担当者がお客様から話を聴いて、「イルカが思ったより上に飛ばなかった」という書き込みをされた理由がすぐにわかりました。

 このお客様は、イルカが見事なジャンプ力で華麗に飛んでいるシーンを映した、その水族館のテレビCMを見たお子様から、「夏休みにはイルカショーを見たい」とせがまれて、家族4人でその水族館に行くことになったようでした。

 クルマで水族館に向かっている途中の家族同士の会話で「イルカがあんなに高く飛ぶなら着水したときに、ものすごく水が飛んできて、服とかビショビショに濡れるんじゃない!?」と盛り上がっていたご様子。

 でも実際には、テレビCMのイメージとは違って、期待していたほどの高さまでイルカが飛ぶことはなかった……。そのため、お子様がとてもガッカリされて帰宅することになった、というのがクレームの主旨だったのです。

 このクレームには、お客様の事情や背景、そしてお客様の「なりたかった姿」がやはり存在していたのです。

 これらを聴いた担当者は、さらに共感しながら、次のような言葉を投げかけました。

 「ご家族の皆様で楽しみにされていたのに、ご期待に応えられなかったのですね」

 「お子様に喜んでもらいたいと、わざわざお越しいただいていたのですよね」

 「私も子供がおりますのでお気持ち、痛いほどよくわかります。私もお話を聴いてとても悔しいです」

 お客様の話に共感して、クレームを言ってきたお客様の事情と背景を理解できたからこそ伝えることができた、素晴らしい「共感の言葉」ばかりでした。

 この共感の言葉によって、お客様もわかって下さったようで、その後は、この水族館のペンギンが可愛かったこととか、見たこともない深海魚にお子様が喜んでいたことなど、その水族館で楽しむことができた話もしてもらえて、最後は「また行きます」とお客様が明るくおっしゃって電話を切られたそうです。

 この事例の対応はまさに、クレーム客をファンに変えてしまう、「一流のクレーム対応」と言えます。

「解決策」では勝負しない

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 クレーム対応は、テクニックだけではうまくいきません。

 「私はクレーム対応には自信があります」と言っている人に限って、余計なことをお客様に言って対応に失敗しています。

 「自分が同じことをされたらどう思うか?」というお客様視点のマインドが必要です。お客様の怒りを笑顔に変えるためには、お客様と同じ気持ちになる必要があります。

 実は、クレーム対応で100%お客様の要望どおりの解決策を出すのは難しいものです。先ほどの例のイルカが高く飛ばなかったことに対する具体的な解決策というものはありませんし、家族の大切な時間はもう取り戻せません。

 だからこそ、クレームになった背景を読み解いてそこに共感する、お客様の気持ちに寄り添うことが大切なのです。

 クレーム対応は解決策で勝負しない。どれだけわかり合えるかが重要です。クレームを怖がったりしないで、きちんと話を聴こうとする姿勢をお客様に示せば、きっと失った信頼を取り戻すことができます。怖いと思いながら、震えながらでも一歩踏み出すことが、クレーム対応に必要な心構えです。

 お客様からのクレームの内容に対してすべてを共感するのは、「ちょっと、やりすぎなのでは?」と思う方もいらっしゃると思います。

 では、そのような場合はどうすればよいのか? 
 どう考えても常識的におかしいと思うような申し出や指摘に対する共感の方法として、「部分的共感」をおススメしています。「おかしいのでは?」「ちょっと無理があるのでは?」とツッコミたくなるような指摘を受けた場合はこう切り返して下さい。

 「お客様がそういうお気持ちでいらっしゃること自体、よく理解できます」

 「そういうお考えでいらっしゃる、ということ自体、私もわかります」

 ポイントは「自体」という言葉です。自分はそう思わないかもしれないようなことでも、「そうは思いません」「お客様、お言葉ですが……」と反論するよりは部分的にでも共感するコミュニケーションをとるようにして下さい。「お客様がそういう気持ちでいらっしゃるということ自体は理解できます」などのような言葉を使います。

 正確に言うと、共感というより「協調」と捉えていただいても構いません。クレーム対応をしていると、どうしても対応者側が考えることと異なる考えを持ったお客様はいらっしゃいます。

 そのようなお客様には「それは違います」と反論するより、全面的に共感しなくても、部分的共感によってお客様に歩み寄って良い関係を築こうと考えていただきたいのです。
谷 厚志

最終更新:10月11日(金)11時35分

マネー現代

 

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