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期待のMAZDA3は、なぜアメリカで売れないのか

9月24日(火)5時10分配信 東洋経済オンライン

マツダが満を持してアメリカ市場に投入した「MAZDA3」(撮影:尾形文繁)
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マツダが満を持してアメリカ市場に投入した「MAZDA3」(撮影:尾形文繁)
 「これまでマツダに接点のなかったユーザーに対しても、自信をもって訴求できるコンパクトSUVだ。CX-5に続き、今後のマツダを支える主力車種として育てていく」。マツダの丸本明社長は9月20日、国内で初めてお披露目された新モデル「CX-30」を前にそう語った。

 CX-30は「スカイアクティブ」というマツダ独自の開発思想のもと、プラットフォーム(車台)とパワートレイン(エンジン周辺部分)を刷新した「新世代商品」の第2弾。今年5月に国内で販売された小型セダンの「MAZDA3」とともに、この先同じコンセプトで開発された新車を展開していくため、マツダの近未来を占う重要なモデルとなる。
■北米事業は営業赤字に転落

 足元のマツダの業績は低迷している。2019年度第1四半期(4~6月)の営業利益は前年同期比79%減の69億円となった。主要地域が軒並み販売を落としたことが原因だ。

 とりわけ足を引っ張ったのは、マツダの最大重要市場である北米で、同地域の営業損益は前年同期の127億円の黒字から12億円の赤字に転落。メインとなるアメリカで4~6月の販売台数が前年同期比15%と絶不調だったのが原因だ。
 アメリカの販売は8月こそ20カ月ぶりのプラスとなったが、今年1~8月で見ると11%減。マーケット全体がほぼ横ばいであるのに対して、マツダの苦戦は明らかだ。

 2018年に、マツダがアメリカで販売する約半数を占める15万台を売り上げた主力SUV(スポーツ多目的車)「CX-5」が、競合となるトヨタ自動車の「RAV4」の後塵を拝し、販売が振るわなかった。さらに、大規模な広告宣伝費を投じて4月に発売を開始したMAZDA3も、期待を裏切っている。
 近年マツダ車は、その流麗なデザインなどからモータージャーナリストだけでなく、ライバルメーカーからも高く評価されている。MAZDA3も前評判は高かったが、アメリカでの販売成績が芳しくない。4月は新車発売となったにもかかわらず、販売台数は4351台と前年同月比8%減少。8月も4825台(前年同月比13%減)となっている。

 アメリカでセダンの人気が落ちているという逆風に加え、不振を招いているのはマツダの価格戦略の失敗だ。
 MAZDA3はセダンタイプが2万1000ドルからに設定され、1万9000ドルがスタート価格だった旧モデルに比べて1割強値上げした。さらにMAZDA3に対するインセンティブ(値引き原資となる販売奨励金)は、発売月の4月に1613ドルに引き下げている(3月は1台当たり2487ドル)。

 一般に、新車投入時のインセンティブをモデル末期よりも引き下げることは不思議ではない。しかし、5月以降もMAZDA3の販売台数が低迷しているにもかかわらず、インセンティブを抑え続けている。アメリカの調査会社・Autodataによると、今年4~6月のアメリカにおけるMAZDA3の累計販売台数は1万3300台と、会社の販売計画を約3000台下回る。
 アメリカ向けにMAZDA3を生産しているメキシコ工場の稼働率低迷も深刻だ。メキシコ工場の今年1~7月の生産実績は前年比48%減の5万台で、稼働率は30%台まで落ちており、北米事業の赤字を招いている。さらにアメリカ向けの輸出比率が高い国内工場でも7~9月に1万台規模の生産調整を行っているという。

■インセンティブ依存に弊害

 もともとマツダはほかの日系メーカーに比べても販売力、商品力が弱く、値引きに頼った販売を行っていた。アメリカの販売店は、マツダ以外のメーカーの車を扱う併売店も多い。そうした併売店にマツダ車を売ってもらうために、多額のインセンティブを必要としていた。
 ただ、過度にインセンティブに依存した販売は、メーカーの利益を削ることになる。また、中古車価格の下落にもつながり、長い目で見れば消費者にとっても副作用が大きい。結果として、ブランド毀損にもつながる。

 そうした弊害を認識していても、インセンティブを抑制して販売台数が減れば、工場の稼働率が悪化する。固定費もまかなえなくなるため、一度はまると抜けるのが難しいのが現実だ。

 マツダはこの悪循環からの脱却を目指し、アメリカで2016年から「販売網クレンジング」と銘打った販売改革を果敢に進めてきた。値引きをしない、顧客満足度を重視する、といった新たな「ブランド価値経営」に賛同する販売店だけを選定し、2016年には635店あった店舗を、572店舗(2018年末)まで削減。特にマツダ車だけを販売する専売店舗を73%まで増やしている。
 さらに、プレミアム志向の顧客獲得に向け、商品のデザインコンセプトに合わせた「次世代店舗」へのリニューアルを265店舗で行う計画を打ち出し、すでに3割弱で転換を完了した。

 マツダが販売改革を進めるのは、2018年度にグローバルで156万台という現在の規模で生き残っていくには、インセンティブ頼みの安売りメーカーではなく、プレミアムなブランドに生まれ変わる必要があると考えたためだ。

 幸いスカイアクティブ、魂動デザインを打ち出した2011年頃からマツダ車の評価はうなぎ登り。これに意を強くしてMAZDA3では価格を引き上げ、インセンティブ抑制、「プレミアム路線」を一気に加速させた。だが、現状を見る限り、消費者はついてきていない。プレミアムなブランドを定着させるにはやはり時間がかかる。
■反転攻勢のカギを握るのはCX-30

 マツダは2021年にトヨタ自動車との合弁で、アラバマに新工場を立ち上げる。マツダの生産能力として15万台がプラスされることもあり、2025年にはグローバル販売180万台の目標を掲げる。しかし、肝心のアメリカでの販売が上向かなければ、新工場はそのままお荷物になってしまう。

 中西孝樹ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストは「経済状況が著しく厳しい中、価格を上げて販売台数も伸ばす計画は楽観的すぎる」と警鐘を鳴らす。
 反転攻勢のカギを握るのが今回のCX-30だ。今後アメリカや中国で、主戦力として市場に投入される。CX-30はメキシコでも生産する予定で、低迷する稼働率の引き上げ役も担う。「CX-30で苦戦するMAZDA3を補っていきたい」と丸本社長は期待を寄せる。

 プレミアムブランドを目指すマツダ。その高い理想を実現できるのか。
森川 郁子 :東洋経済 記者

最終更新:9月24日(火)9時32分

東洋経済オンライン

 

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