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「エスティマ」「キューブ」生産を終える根本理由

9月23日(月)5時40分配信 東洋経済オンライン

トヨタ「エスティマ」は2019年10月に生産を終了し、約30年の歴史に幕を下ろす(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
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トヨタ「エスティマ」は2019年10月に生産を終了し、約30年の歴史に幕を下ろす(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
 最近、かつて人気の高かった国産の主力車種が、次々と生産終了を発表している。トヨタではミニバンのエスティマが、2019年10月に生産を終える。8月以降はメーカーに向けた新規発注が締め切られ、販売を実質的に終了した。同じトヨタではLサイズセダンのマークXも、2019年12月に生産を終える。

 日産は2019年中にコンパクトカーのキューブを終了させる。三菱パジェロも8月に国内向けの生産を終えて、三菱のホームページから削除された。
■ファミリー向けのミニバンへの逆風

 エスティマはLサイズの上級ミニバンで、初代モデルを1990年に発売した。本来であれば、2015年に行われたアルファード&ヴェルファイアのフルモデルチェンジに先駆けて、エスティマも一新されるはずであった。というのも、それまではまずエスティマが新型になり、そのプラットフォームやエンジンを使って、アルファード&ヴェルファイアを開発したからだ。

 ところがこの流れとは異なり、アルファード&ヴェルファイアを刷新して残し、エスティマは廃止することになった。その理由は、日本では少子高齢化は避けられず、ファミリー向けのミニバンは売れ行きが厳しくなると予想されるからだ。
 また最近は安全機能や環境性能の向上で、クルマの価格が高まった。これに伴って売れ筋車種が小さくなり、今では新車として売られるクルマの40%近くを軽自動車が占める。この内の85%は、全高が1600mmを超える車内の広いミニバン的な車種だ。小型車でもルーミー&タンクのような背の高い車種が人気で、ミニバンから乗り換えるユーザーも増えた。

 そうなると4人乗車で荷物を積む用途なら、ミニバンを買う必要はなく、空間効率の優れたコンパクトカーや軽自動車で済む。
 アルファード&ヴェルファイアの販売が好調なことも、エスティマを廃止する理由の1つだ。アルファード&ヴェルファイアの売れ筋価格帯は370万~500万円と高いが、両姉妹車の登録台数を合計すると1カ月に1万台近くに達する。ミドルミニバンのセレナ、コンパクトなシエンタに匹敵する売れ行きだ。

 ここまでアルファード&ヴェルファイアが売れると、新型エスティマを開発しても売れ行きが心配される。上級ミニバンの需要はアルファード&ヴェルファイアで満たされ、エスティマを売る余地がないかもしれない。あるいはエスティマが売れて、アルファード&ヴェルファイアが下がることも考えられる。そこでエスティマのフルモデルチェンジは見送られ、今では1カ月の登録台数が800台前後まで下がったから、生産を終える。
 それでもエスティマには独特の魅力がある。ミニバンは広い車内を得るために箱型のボディーになりやすいが、エスティマは卵型だ。メッキグリルにエアロパーツという画一的な外観に陥らず、美しいスタイルを追求してきた。アルファード&ヴェルファイアに比べると、天井が低めで走行安定性や燃費を向上させやすい。廃止するには惜しいクルマであった。

■2000年代に入りセダンの位置づけが変化

 マークXはトヨタのLサイズセダンで、マークⅡの後継車種だった。過去を振り返ると、1968年に当時のクラウンとコロナの間に位置する上級車種としてコロナマークⅡが設定されている。フルモデルチェンジを繰り返して9代目に至り、2004年にマークⅡの後継車種として、初代マークXが発売された。
 9代目マークⅡと初代マークXを比べると、後者は全高が25mm下がった。当時は室内空間の拡大期で、フルモデルチェンジのたびに天井も高くしたが、マークXは逆に低く抑えている。運転感覚は足まわりを硬めに設定して、機敏な印象を強めた。従来のマークⅡは実用的なセダンだったが、マークXはスポーティー志向に発展した。

 これは2000年代に入り、セダンの位置づけが変化したことの象徴だった。それまでのセダンは、後席を含めて車内の広さがセールスポイントだったが、2000年代には抜本的に車内の広いミニバンが普及して、セダンはファミリーカーの座を奪われた。
 そこで改めてセダンの価値を見直したのがマークXだ。セダンはミニバンに比べて天井が低く、重心も下がる。後席とトランクスペースの間に隔壁があり、ボディ剛性を高めやすい。

 つまりミニバン時代におけるセダンの価値は、低重心で剛性の高いボディーが生み出す優れた走行安定性と快適な乗り心地、トランクスペースを隔離したことによる走行音の静かさだ。この安全と快適という、新たなセダンの価値を表現したのが、全高を25mm下げたマークXであった。
 マークXは2009年に現行型へフルモデルチェンジされたが、その後は改良を怠った。クラウンやカムリなどのLサイズセダンが、ハイブリッドを主力ユニットに転換する中で、マークXはV型6気筒2.5Lと3.5Lのノーマルエンジンで据え置かれた。

 5~6年前にトヨペット店のセールスマンが「今はエコカー減税の対象にならないと、お客様が購入の候補に入れてくれない。マークXにもハイブリッドを搭載してほしいが、トヨタにその気はない」と悩んでいた。
 スポーティー志向でハイブリッドを積まないなら、せめて2Lターボを用意するなどのケアは行うべきだった。マークXがフルモデルチェンジを受けずに生産を終えると、Lサイズセダンの選択肢はさらに乏しくなる。

■穏やかに走るキューブの価値観

 キューブの初代モデルは1998年に発売され、背の高いコンパクトカーの先駆けになった。2002年には2代目が発売され、角に丸みのある水平基調のボディは存在感が強く、居住性も良好だった。
 そして2008年に現行型が登場する。内装は和風をテーマにデザインされ、インパネは緩い曲線を描く。ガラスルーフには障子を模した「SHOJIシェード」が備わり、車内を柔らかい光で満たした。シートは前後席ともにソファ風で、独特のリラックス感覚が持ち味だ。

 今のクルマのデザインは、大半がカッコよくて速いイメージだが、キューブは逆にゆっくりと穏やかに走る価値観がある。

 その結果、現行キューブは共感を呼び、2010年頃は1カ月に4000~5000台を登録した。今のセレナに近い台数だったが、次第に売れ行きを下げていく。近年では緊急自動ブレーキの非装着が大きなマイナス要因となった。
 それでも直近で1カ月に400~500台は登録され、特別仕様車を加えた直後は相応に台数を伸ばす。国内市場に合った商品だから、廃止するには惜しいクルマだ。実際、以前は次期型の開発も計画されていたが、日産の世界戦略とのバランスもあって立ち消えになったようだ。

■SUVの流れを変えた初代パジェロ

 1982年に発売された初代パジェロは、SUVの流れを変えた。それまでのランドクルーザーなどは積雪地域や森林で使う作業車だったが、初代パジェロは乗用車感覚を強めて一般ユーザーが購入した。これをきっかけに、他社のSUVも一般ユーザーを想定して開発されるようになった。その結果、1980年代から1990年代の前半には、パジェロのようなオフロードSUVがブームを迎えている。
 しかし1990年代の中盤になると、RAV4やCR-Vなど、前輪駆動をベースにしたシティ派SUVが登場する。オフロードSUVは、悪路走破力は高いが、運転のしやすさ、居住性、価格の割安感でシティ派に負けてしまう。

 そのためにオフロードSUVは売れ行きが下がり、テラノ、サファリ、ハイラックスサーフ、ビッグホーンなどは販売を終えた。パジェロも現行型を2006年に発売したが、国内販売の主力はシティ派のアウトランダーに移り、パジェロは歩行者保護要件に対応できないこともあって8月に国内販売を終えた(海外では継続的に売り続ける)。
 日本のSUVの使用環境は、悪路といっても雪道までだ。前輪駆動ベースのアウトランダーでも、走破力に不満はない。三菱はオフロードSUVのパジェロは役割を終えたと判断したのだろう。

 エスティマ、マークX、キューブ、パジェロの生産終了に加えて、最近はフルモデルチェンジの滞りも生じている。日産は欧州で次期ジュークを発表したが、日本国内では現行型を継続販売するという。

 スバルも海外では新型レガシィを売るが、日本国内は従来型の継続販売で、先ごろ小改良も行った。海外市場には新型車が活発に投入されるのに、日本国内で売られる日本車は設計が古い。
■高まる海外販売比率

 こういった日本を軽視する背景にあるのは、海外販売比率の増加だ。1990年頃までは、日本メーカーの国内/海外の販売比率は各50%程度だったが、2000年頃に海外比率が60%を上回り、2010年頃には80%に達した(国内中心のダイハツを除く)。今では世界生産台数の90%前後を海外で売る日本メーカーもあり、国内市場が冷遇されている。

 この傾向は今後さらに強まる。例えばトヨタは2020年5月になると、他メーカーと同じく全店が全車を扱うようになる。隣接するトヨタ店とネッツトヨタ店が同じクルマを売るので、店舗は減らされ、売れ行きが下がることも考えられる。
 トヨタは車種を減らす方針も打ち出し、販売系列のために用意されたアルファード&ヴェルファイア、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、ルーミー&タンクといった姉妹車も、やがて1車種に統合される。車種の削減はほかのメーカーでも行われるから、日本で購入可能な車種は次第に限られてくる。

 カテゴリー別に見ると、セダンの減少が激しく、ワゴンはすでに車種数を大幅に減らした。今後は軽自動車が国内販売総数の半分近くまで増えて、コンパクトカーも根強く、総じて小さなクルマが中心の市場になる。
 そしてセダン/ワゴン/SUVの上級モデルでは、輸入車が売れ行きを伸ばす。2019年の国内販売台数は1990年の68%まで減ったが、メルセデス・ベンツの国内登録台数は、逆に173%に増えている。輸入車は車種数が増え、日本車の価格上昇もあって、以前の割高感が薄れたこともある。

 今後は小さなクルマは日本車、大きなクルマは輸入車、という役割分担が進みクルマの選び方も変化してくるだろう。

■設計の古い従来型の販売はやめるべき
 この流れは仕方ないともいえるが、海外でフルモデルチェンジを行いながら、日本では設計の古い従来型を販売するというようなことはやめるべきだ。設計の新しい車種は、衝突時の乗員保護性能も含めて安全性を進化させるから、従来型を売れば日本のユーザーを危険にさらすことになってしまう。

 ジュークとレガシィは、国内仕様も早急にフルモデルチェンジすべきだ。ホンダは2017年10月に海外では新型アコードを発売しながら、日本では旧型を売り続け、2020年初頭にフルモデルチェンジするという。
 日本のメーカーは、もはやどこの国の企業なのかわからない状態になっている。
渡辺 陽一郎 :カーライフ・ジャーナリスト

最終更新:9月23日(月)8時14分

東洋経済オンライン

 

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