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「不動産投資」は金持ちほど圧倒的に有利な理由

9月22日(日)5時30分配信 東洋経済オンライン

不動産投資をうまく運用できるのは、いったいどんな人なのでしょうか?(写真:EKAKI/PIXTA)
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不動産投資をうまく運用できるのは、いったいどんな人なのでしょうか?(写真:EKAKI/PIXTA)
ソフトバンクやユニ・チャームなど、日本企業の間でも「副業解禁」が進んでいる。サラリーマンが挑戦できる副業にはどんなものがあるのか?  「副業事情の今」について、経済評論家の加谷珪一氏が解説する。第3回のテーマは「不動産投資」について。『“投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』から抜粋して紹介します。

 不労所得を実現する手段として、多くの人がイメージするのは、やはり不動産投資ではないかと思います。ここ10年、アパートやマンションなどを1棟丸ごと購入して家賃収入を得るという、いわゆる「大家さんビジネス」がちょっとしたブームとなりました。
 不動産投資は不労所得の代名詞のようになっていますが、だからといって買ったあとは何もしなくてもよいというわけにはいきません。それでも、他のビジネスと比較して、大きな手間がかからないというのも事実です。

■不動産投資は「資産家ほど有利」

 不動産投資について最初に理解しておくべきなのは、不動産投資というのは、すでに多額の資産を持っている人に有利なゲームであるという事実です。

 日本で最も規模の大きい大家さんの1つに、三菱地所という会社があります。三菱地所は明治維新直後、何もなかった現在の丸の内(東京駅前)の開発を行い、ここを基盤に大規模デベロッパーとして成長してきました。日本でもっとも価値の高いエリアの土地を最初から保有しているわけですから、よほどのことがない限り、不動産の運用で失敗することはありません。
 三菱地所は最も極端な例ですが、全国各地でアパートやマンションを経営している人の大半は、親からその土地を引き継いだ人です。土地を最初から保有しているので、銀行から借金をするにしても、建物の分だけで済みます。安定的に不動産物件の運用ができるのは、ある意味で当然といってよいでしょう。

 これに加えて、事業や株式投資など別の手段で大きな資産を築いた人が、安定的に資産を運用することを目的に、不動産投資の世界に入ってくるというケースもかなり目立ちます。こうした投資家は、借り入れをせずに自己資金で投資をしますから、意思決定が早いという特徴があります。
 また、投資する目的は家賃収入や値上がり益ではなく資産の保全ですから、価値が維持される物件であれば、多少価格が高くても投資を決めてしまいます。東京都港区などにある高級物件の価格が異常に値上がりするのは、こうした取得価格を顧みない投資家が多数存在しているからです。

■少ない元手で儲けるのは難しい

 少ない元手で不動産投資に参入する投資家は、こうした恵まれた環境にある投資家との競争に打ち勝って、優良な物件を取得しなければなりません。確かに資産が一定規模を上回れば、不労所得に近い状況を実現することは可能ですが、難易度は極めて高いと思った方がよいでしょう。
 メディアなどではよく、「不動産投資で家賃収入年間5000万円を実現」といったタイトルを目にします。ここで注意する必要があるのは、家賃収入と利益は違うということです。

 もし、借り入れを行わず、手元資金だけで不動産を購入した場合には、不動産の価値が下がらない限り、家賃収入を利益と捉えても間違いではないかもしれません。しかし実際には、不動産の価値は下がることがありますし、何よりほとんどの投資家は銀行などから資金を借り入れて物件を購入します。したがって、得られた家賃収入から、必要経費や銀行への返済分、そして物件の劣化分などを差し引かなければ、本当の利益はわかりません。
 もう少し具体的に説明してみましょう。1億円の資金を銀行から借り入れ、これでアパート1棟を購入したと仮定します。たいていの場合、現実に1億円の資金を借り入れるためには、2000万~3000万円程度の自己資金を用意する必要がありますが、ここでは全額を銀行から借り入れたと仮定します(いわゆるフルローン)。銀行のローンが20年であれば、金利は無視すると、毎年500万円ずつ銀行に返済しなければなりません。
 アパートは12室あり、毎月の家賃は5万円だとすると、1室当たり年間60万円の家賃収入が得られ、12室合計では720万円ということになります。家賃収入は年間720万円ですが、これは純粋な利益とはいえません。この例は12室が満室であることを意味していますが、もし1室だけ借り手がつかず、空き部屋だった場合には、年間の家賃収入は660万円に下がってしまいます。

 また、アパートを経営するために必要な経費というものが存在します。もっとも大きいのは、不動産会社に対する手数料と修繕費です。
■マンションにかかるさまざまなコスト

 部屋を貸して家賃収入を得るためには、その部屋に住んでくれる住人を探し、賃貸契約を締結し、毎月、家賃を徴収する必要があります。また、家の中で壊れたところなどは所有者の責任で修繕する必要がありますから、そうした経費も捻出しなければなりません。住人からのクレームや近所とのトラブルを処理するといった仕事もあります。

 こうした作業をすべて自前で行うのはほぼ不可能ですから、多くは不動産会社と契約して、管理業務や募集業務を代行してもらうことになります。一般的に管理を代行する不動産会社は、毎月の家賃の5%程度を手数料として徴収し、さらに募集のときなどは家賃の1カ月分程度のお金がかかります。不動産会社に5%の手数料を支払った場合、年間約35万円の支出となりますし、募集時には追加で手数料が必要となりますから、家賃収入はさらに下がって600万円程度になる可能性が高いでしょう。
 10年に1回はそれなりに部屋や外装をリニューアルする必要がありますし、退去時に部屋が汚れていれば、敷金で徴収した金額以上をクリーニングなどに費やす必要も出てきます。そうなってくると実質的な家賃収入はさらに下がり、550万円程度になってしまうかもしれません。

 さらに不動産収入を得た場合、税金の支払いも必要となってきますから、手元のお金はさらに少なくなって、500万円程度になる可能性もあるでしょう。銀行への返済はすべての経費を差し引いた残りから行われますので、年間500万円の家賃収入しか得られない場合、余ったお金はすべて返済に回る可能性が出てきます。現実には銀行への利子の支払いも加わってきます。
 つまりこのケースは表面上、720万円の家賃が得られていても、実質的な利益という意味ではゼロになってしまうわけです。これでは不動産に投資している意味がなくなってしまいますが、はたしてこのケースは最悪のレベルなのでしょうか。実はそうでもないというところが重要です。

 この物件の経費を差し引く前の年間家賃は最大で720万円で、物件の取得価格は1億円となります。1億円の投資で年間720万円の家賃が得られるわけですから、投資利回りは720万円÷1億円で7.2%と計算されます。これは経費を差し引く前の利回りなので、投資の世界では「グロス」の利回りと呼ばれています(これに対して経費差し引き後の利回りのことを「ネット」の利回りと呼びます)。
 実際にいろいろな物件を見るようになればわかると思いますが、グロスの利回りが7.2%というのは、それほど悪い物件ではありません。もっと条件の悪い物件はいくらでもありますし、逆にさらに利回りが高い物件の場合、築年が古かったり、駅から遠かったりと、いろいろと難点が見つかることも少なくありません。

 つまり、そこそこのレベルの物件を取得できたとしても、それだけでは十分に稼げる手段とはならないわけです。では不動産投資で大きな利益を上げる人は、どのような工夫をしているのでしょうか。
■不動産投資がうまくいく人の特徴

 それは利回りが高く、かつリスクの低い物件を選び出すことです。不動産に限らず、すべての投資案件に当てはまりますが、利回りが高い投資案件は、リスクも高いというのが一般的です。しかし不動産の場合には、金融商品ほど取引が活発ではありませんから、利回りが高く、一見するとリスクも高そうな物件であっても、実は優良物件だったというケースがまれにあります。

 不動産の売り手は、さまざまな事情で物件を売りに出します。安い物件はたいていがそれなりの理由があって安いのですが、中には売り手の資金繰りの事情で売り急いでいる場合があります。こうした物件をうまく見つけることができれば、相場よりも安い価格で入手することができます。
 銀行の融資姿勢が価格に影響を与えることもあります。多くの投資家が、銀行からの融資で資金を調達して不動産を購入しています。銀行が最優先で考えることは、その物件が不動産ビジネスとして儲かるのかではなく、借り手がお金を返せなくなったときに、貸した資金を回収できるかどうかです。

 したがって、築年が古いといった理由で売却が難しそうであると判断された場合には、投資用不動産としては魅力的な物件であっても、融資の審査が通りにくい物件というものが出てきます。こうした物件の価格は相場よりも安くなってしまうわけです。
 不動産投資で成功する「大家さん」は、目を皿のようにして、こうした有利な物件を探しています。なかなかお目にかかることはないのですが、もし見つけた場合には、すぐに投資を決断します。

 そのためには、つねに一定の資金を確保しておく必要がありますし、話を通しやすい銀行をいくつかキープしておくといった措置も重要となります。何より、無数の案件をつねにチェックするという気の遠くなるような作業が求められるでしょう。
加谷 珪一 :経済評論家

最終更新:9月22日(日)5時30分

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