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話がまとまる「会議で絵を描く」グラレコの凄み

9月21日(土)6時20分配信 東洋経済オンライン

「グラレコ」を実践すれば、意見のまとまりにくい会議でもスムーズに結論を導き出すことができます(写真:themacx/iStock)
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「グラレコ」を実践すれば、意見のまとまりにくい会議でもスムーズに結論を導き出すことができます(写真:themacx/iStock)
 最近注目されているビジネススキル「グラフィックレコード」、略してグラレコをご存じでしょうか? 

 「グラフィックレコーディング」「ファシリテーショングラフィック」「グラフィックファシリテーション」「ビジュアルミーティング」「ビジュアルシンキング」などと、ほかにも呼び名はたくさんあります。

 簡単に言えば、ホワイトボードや大きめの模造紙にイラストや図を使って会議の内容を見える化するファシリテーターや板書係の手法のことです。
■欧米では多く活用されている

 意見が出ない、噛み合わない、結論が決まらない、声の大きい人の意見だけが通る……。そんな会議のあるあるな悩みを解決する、非常に優れた手法です。

 数年前から関連書籍が多数出版されており、セミナーなどでも人気を博しているグラレコ。とはいえ、日本のビジネスシーンでは用いられることのまだまだ少ないコミュニケーション手法です。

 リアルタイムに思考を見える化する技術――つまりグラレコは情報の共有がしやすくなる、参加意識が高まる、創造性が高まるといった理由から、1960年代から欧米の多くのビジネスシーンで活用されてきました。
 そして現在でも、NASAやGoogleなどの世界的な組織や企業において幅広く利用されています。

この手法は、1対1のブレインストーミングや、企画書やプレゼン資料の作成などにも応用できる汎用性の高いスキルともいえます。グラレコとはいったいどんな手法なのか、拙著『考えを整理する・伝える技術 グラフィックレコード』から一部抜粋し解説します。

 そのメリットを最も効果的に発揮できるのは、やはり会議の場です。出席するメンバーの意見を可視化することで、参加意識を高め、より早く、誰もが理解・納得しやすい結論を導き出すアウトプットの技術でもあるのです。
 以下、グラレコによって生まれる会議のメリットを5つ紹介しましょう。

■文字ばかりは読む気を失う

グラレコのメリット1:一瞬で情報を共有できる
 議事録や資料など、ビジネスの現場では言語情報に偏っています。言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%という、話し手が聞き手に与える影響を数値化したメラビアンの法則を引用するまでもなく、文字ばかりの資料や板書は読む気を失わせますよね。結果、理解度や参加意識、クリエイティビティの低下を招きます。
 そんなデメリットを補うのが、イラストや図を使って見える化させるグラレコなのです。イラストや図は、知的理解を超えて、感覚的に量や空間を瞬時に判断させる力を持っています。

 例えば、「3人のお客様がいらっしゃいました」という表現があります。しかし、そのお客様が男性か、女性かまではこの表現からはわかりません。しかし、下のようなイラストであれば、男性なのか女性なのか、そして大人か子どもかまでを、ひと目見た瞬間に理解できます。
 わざわざ「男性1名、女性1名、男の子1名のお客様」と言葉にしなくていいのです。コツさえ覚えれば、言葉にするよりもイラストや記号にしたほうが間違いなくアウトプットは早くなります。

グラレコのメリット2:出席者のパワーバランスがフラットになる
 会議では声の大きい人(いわゆる決裁権を持っていたり、物怖じせずに発言したりする人など)の意見が通りやすいものです。また、強い意見を持つファシリテーターが主導権を握り、結論ありきの進行がなされることもよくあります。
 それが当たり前になっていたり、絶対的な権力者に対して誰も反対意見を言えなかったりする組織の状況というのは健全ではありません。そんな場面では、発言とその発言者の名前をホワイトボードに列記するだけでも多少の効果は見込めるでしょうが、グラフィックレコードが見える化しながら記録をとる環境をつくり出すことで、そうした問題をクリアできるのです。

 ホワイトボードに発言者の似顔絵と名前、意見を描いてみましょう。
 権力者の似顔絵もその声も、出席メンバーと同じ大きさにするのがポイントです。すると、少なくともホワイトボード上では、社内でのパワーバランスは消え、フラットな状態が生まれます。たったこれだけのことですが、それまであった権力者に対する遠慮や忖度の度合いは下がるというのは感覚的にも理解できるのではないでしょうか。

■発言していない人の積極性が高まる

グラレコのメリット3:出席者の発言が増え、組織の潜在能力を引き出せる
 ほかにも、発言者とその意見をホワイトボードに見える化することの効果としては、意見が活発に出るようになることがあげられます。誰がどのような意見を言っているかが一目瞭然になります。

 人間の自然な心理として、まだ発言をしていない人の積極性が高まります。また、会議などにおいては、引っ込み思案な人や、考えをまとめることが得意ではない人の意見は反映されないことが多いと思います。

 そんなときは断片的にでも情報を拾い上げてホワイトボードに見える化してみてください。貴重な解決の糸口やアイデアのヒントがそこに眠っているかもしれません。これまで黙殺されていた「声」を拾い上げるという意味で、組織の潜在的な問題解決能力を引き出しているともいえるのです。
グラレコのメリット4:会議が自然と盛り上がる
 最近では、出席者全員がノートパソコンを開いてモニターを見つめながら会議をする光景が当たり前になってきました。本来向き合わなければならない相手の顔やホワイトボードを無視していては、会議は当然盛り上がりません。出席者の当事者意識も薄れますし、場合によっては個々の独善的な解釈を加速させかねません。これでは、意見が出ない、あるいは意見がまとまらない会議になります。
 そこでグラレコを使って、ホワイトボードに目を向けさせるのです。視覚情報の伝達力の強さを利用するのです。また、グラフィックレコードはある種のパフォーマンスの側面があります。いつもとは違った楽しげでカラフルな板書は、出席者の目を集めるはずです。

グラレコのメリット5:脱線してもすぐに軌道修正できる
 議論が脱線して、結論が出るまでにかなりの時間を要する会議を、ほとんどの人が経験していることでしょう。

 そもそも何について議論しているかわからないほどに話がとっちらかり、結論が出ない、生産性ゼロ、時間の無駄という最悪の会議もめずらしくないはずです。
 グラレコにはいくつか代表的なフォーマットがありますが、例えば時系列や工程にそって、1項目をメインとサブに分けながら、流れを記述するステップ式を使うことで、そうした会議を回避できます。ステップ式は議論のプロセスを描く手法なので、どこで話が脱線したかが明確で、すぐに議論の主軸に戻ることができます。

 話が蒸し返されたとしても、そこにすぐに戻ってプロセスをたどり直せるので、同じ議論を延々と繰り返すようなことがなくなります。
■ライバルが少ない今こそチャンス

 グラレコ関連本やネット上にあるグラレコのサンプルは、プロが描いた色鮮やかでキレイなものが満載。あこがれはするものの、「とてもじゃないが自分には無理」と感じてしまう人は多いことでしょう。

 しかし、自分1人のための備忘録、あるいは議事録としてまとめるならまだしも、リアルタイムで進行する会議において、超絶的なグラレコの技巧は不要です。見た目の美しさにこだわるあまり、議論の妨げになってしまっては本末転倒です。
 拙著『考えを整理する・伝える技術 グラフィックレコード』では、グラフィックレコードの基本型、代表的な図のフォーマット、○△□で描けるイラストなどの解説をしており、絵心がない人でも簡単に取り組めるものばかりです。

 ぜひ、あなたも自分のビジネスや組織にグラレコを取り入れて、その効果を実感してみてください。少し練習しただけで身につくスキルです。まだまだ小さな日本のグラレコ市場において、グラレコをいち早く取り入れることは、個人のキャリアアップにつながりますし、組織のポテンシャルをレベルアップさせ、ライバルに差をつける手段になるのです。
渡邊 俊博 :中川ケミカル・チーフデザイナー

最終更新:9月21日(土)6時20分

東洋経済オンライン

 

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