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窪田製薬HD Research Memo(4):「PBOS」は眼疾患領域の革新的な遠隔診断ソリューションとなる可能性

9月17日(火)15時04分配信 フィスコ

■窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況

2. 遠隔医療モニタリング機器(網膜疾患)
遠隔医療モニタリング機器となる「PBOS」は、ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄班浮腫等の網膜疾患の患者の網膜の厚みを患者自身で測定し、撮影した画像をインターネット経由で担当医師に送り、治療の必要性の有無を診断するシステムとなる。前述したとおり追加機能として視力測定を行うアプリを開発し、「PBOS」に組み込み、ほぼ最終仕様が固まった段階にある。機器の仕様についても、操作ボタンの大型化や操作方法を音声ガイダンスでサポートする機能を実装するなど、高齢者の患者に配慮した設計となっているほか、正確な測定を行えるようにするため、支持台を設けた固定式となっているのが特徴だ。

「PBOS」が商品化されれば、潜在需要は大きいと弊社では見ている。現状、加齢黄斑変性症等の網膜疾患治療の第一選択肢は抗VEGF薬による眼内注射であるが、適切な治療を実施するうえでいくつか課題があり、患者、医師ともに「PBOS」のニーズが大きいと見ているためだ。具体的には、1回当たりの治療費が15万円と高価であること、1~2ヶ月間隔で継続的な治療が必要となるが、適切な治療タイミングは患者ごとに異なること(症状の進行スピードが違うため)、最適なタイミングで治療を行うためには網膜の状態をタイムリーに観察する必要があるが、そのためには通院検査(約3万円)を受ける必要があり、患者にとって身体的、経済的負担が大きくなること、などが挙げられる。また、医師側から見ても検査のみの患者が増えると経営効率が悪くなるため、治療が必要な患者をできるだけ増やしたいと考えている。「PBOS」が商品化されれば、患者は在宅で手軽に網膜の状態を測定し、インターネットを介して専門医に画像データをチェックしてもらうことで、症状を悪化させることなく適切なタイミングで治療を行うことが可能となる。また、「PBOS」の普及が進めば抗VEGF治療薬のメーカーにとってもプラスとなる。適切なタイミングで治療する患者が増加するためだ。このように「PBOS」は、すべての関係者にとってメリットが享受できる遠隔診断ソリューションと言える。

今後はどのようにビジネスモデルを構築するかが課題となる。国によって医療行政や保険の仕組みが異なるためで、それぞれの地域に合わせた販売手法を展開していく必要がある。現在開発を進めている米国では、患者の初期負担が軽減されるレンタルサービスとして、毎月利用料を徴収するスタイルになる可能性が高い。保険適用されれば患者負担も大幅に軽減できるため普及も加速していくものと考えられる。同社にとっては、販売開始当初はコスト負担になるものの、一定期間を超えれば利益化するため、ストック型のビジネスモデルとして安定した収益源に育つ可能性がある。加齢黄斑変性などの網膜疾患は経過観察が重要であることや根治療薬がないことから、一度「PBOS」を使い始めると、失明しない限りは継続して使用される可能性が高いことも魅力の1つと言える。

販売方法については、眼科医とのネットワークを持つ医療機器メーカーや卸商社、製薬企業などを対象に販売パートナー契約を締結し、効率的に普及拡大を進めていく考えだ。医師にとっても「PBOS」を患者が利用することで収益性向上につながるため、システムを導入することへのハードルは高くないと考えられる。販売地域に関しては、米国で普及が進めば全世界へ展開していく計画となっている。

潜在的な市場規模は、当面は米国におけるウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の患者が対象となる。2015年の調査※1によれば、加齢黄斑変性の患者数は全世界で1.38億人と推定され、うち米国は1,230万人程度、このうちウェット型は約10%の123万人程度となる。また、糖尿病は世界で約4.15億人の患者数に上り、その3割となる約1.24億人が糖尿病網膜症を引き起こすと言われている。日本のデータによれば糖尿病網膜症患者の約2割が糖尿病黄斑浮腫と推定されており※2、世界で試算すると1.24億人×20%で約2,480万人となる。米国での患者比率が加齢黄斑変性と同じと仮定すれば、米国での糖尿病黄斑浮腫の患者数は220万人程度と推定される。米国市場では、両疾患合わせた340万人強が当面の潜在顧客となる。仮に月額利用料を千円、普及率30%とすれば年間で120億円の市場が創出されることになる。潜在顧客数は加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫だけでなくその予備軍等も含めれば全世界で1億人を超えると予想されるだけに、潜在的な成長ポテンシャルは大きいと言えるだろう。

※1 Market Scope, The Global Retinal Pharmaceuticals & Biologic Market, 2015.
※2 第114回日本眼科学会総会 (糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の20%に合併するという報告に基づく)


なお、OCTの在宅・遠隔モニタリング機器としては、2018年12月に米Notal Visionの「ForeseeHome」が先に販売承認されているが、対象疾患が中等度のドライ型加齢黄斑変性症向けに限られていること、また、検査時間も「PBOS」が2秒で終わるのに対して「ForeseeHome」は約20分かかるため、直接の競合関係にはならないと見られる。


スターガルト病を対象としたエミクススタトの臨床第3相試験は進捗がやや遅れ気味
3. エミクススタト(スターガルト病)
スターガルト病は遺伝性の若年性黄斑変性で有効な治療法が確立していない稀少疾患の1つである。8千人から1万人に1人の割合で発症し、患者数は日米欧で15万人弱、米国だけで見ると3.2~4万人と推計されている※。小児期から青年期における視力低下や色覚障害等が主な症状として挙げられ、大半の患者が視力0.1以下に低下すると言われている。

※Market Scope,「Retinal Pharma & Biologics Market」「UN World Population Prospects 2015」をもとに、同社が推計。


発症原因は、網膜内にあるABCA4遺伝子の突然変異によるものと考えられている。ABCA4遺伝子は光を感じる働きを司る「視覚サイクル」によって生じる有害なリポフスチン(以下、A2E)を処理する役割を果たすが、本遺伝子が突然変異により本来の役割を果たさなくなることで網膜内にA2Eが蓄積し、視力低下が徐々に進行していくメカニズムとなる。有効な治療法がいまだに確立されていないアンメット・メディカルニーズとして、治療薬の開発が望まれている疾患である。

エミクススタトは動物モデルを用いた前臨床試験において、このA2Eの蓄積を抑制する効果が確認されている。エミクススタトが「視覚サイクル」において重要な役割を果たすRPE65と呼ばれる酵素を選択的に阻害し、視覚サイクルによって生じる老廃物の蓄積を軽減する作用があるためと考えられる。このため、エミクススタトの投与によりスターガルト病の症状の進行を抑制する効果が期待されている。

2017年1月より米国で実施した臨床第2a相試験(22症例)ではエミクススタト投与1ヶ月後に、網膜電図を用いて点滅光に対する網膜の電気的応答の変化を検証した。杆体の反応は、網膜電図ではb波で示される。エミクススタトは視覚サイクルにおいて重要な役割を果たす酵素RPE65を阻害して杆体を休ませることで、視覚サイクルを抑制する働きが確認されている。このことから、本試験ではスターガルト病患者に対して、杆体b波の振幅が投与1ヶ月後にどれくらいの割合で抑制されるかを主要項目に設定した。試験結果によれば、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が見られ、また、投与用量における安全性及び忍容性が確認され、主要評価項目を達成した。

同社はこの結果を受けて、臨床第3相試験を2018年11月に開始した。本臨床試験ではプラセボとの二重盲検比較試験を行い、1日1回、10mgの経口投与を24ヶ月間実施する。欧米を中心に世界約11ヶ国、約30施設で合計約160名の被験者登録を見込んでいる。主要評価項目は、プラセボ群に対する黄斑部の萎縮進行の抑制効果を検証するというもの。また、副次的評価項目として最良矯正視力のスコアや読速度などの視機能の変化も見る。2019年8月までの進捗状況についてはやや遅れ気味となっている。治験施設の開設が当初スローだったことに加えて、稀少疾患のため被験者のリクルーティングが想定よりも難しいことが要因となっている。ただ、対象患者数については各地域においてある程度把握できているため、今後リクルーティング活動を強化したり治験施設数を増やすなどして被験者登録を進めていく方針となっている。現状の進捗状況からすると、被験者登録の完了時期は当初の2019年内は間に合わず2020年にズレ込む見通しで、これにより臨床試験の終了時期も2022年以降となる。なお、競合薬の開発状況としては、サノフィ(フランス)が臨床第1/2相試験を行っている段階にある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MH》
株式会社フィスコ

最終更新:9月17日(火)16時55分

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