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新幹線の車掌さん、「英語放送」ただいま特訓中

9月17日(火)5時20分配信 東洋経済オンライン

JR東海が5月に行った異常時の外国人乗客対応訓練(撮影:尾形文繁)
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JR東海が5月に行った異常時の外国人乗客対応訓練(撮影:尾形文繁)
 増加する訪日外国人客への対応は東海道新幹線でも喫緊の課題となっている。JR東海は今年5月、異常時における外国人乗客への対応を想定した訓練を初めて実施。営業運転終了後の深夜にN700Aの車内で、パーサーが多言語対応ウェブサイトにアクセスする方法を外国人乗客に英語で説明する模様を報道陣に公開した。

 しかし、新幹線を利用する多くの人は、通常時でも列車内で英語を聞く機会が増えていることを実感しているはずだ。
■英語放送「自分の口で」

 東海道新幹線の車内で「まもなく名古屋です」という日本語のアナウンスに続き、「We are stopping at Nagoya Station」という英語のアナウンスが聞こえてきた。明らかに英語ネイティブとは違う、日本人の肉声だ。

 JR東海は車内自動放送やスマホの翻訳アプリを使った英語放送を行っているが、2018年6月に緊急通報装置や非常ボタンの説明を乗務員が肉声で行うことにした(現在は自動放送化)。同年12月からは、到着駅と出口方向について乗務員が肉声でアナウンスしている。
 同社は「丁寧な接客をするためには、自分の口で英語を話すことが重要」と、肉声放送を始めた理由を説明する。まず英語を話すことで苦手意識を払拭し、段階的に英語が上達すればいいという考えだ。

 「お席を離れるときには貴重品にご注意ください」「強風のため速度を落として運転しています」といった英語の案内も、翻訳アプリではなく肉声で行われることがある。アプリと肉声のどちらを選ぶかは乗務員の任意。英語に自信がある人は肉声でもよい。
 同社の乗務員2人に話を聞いた。大阪第二運輸所で車掌長を務める大橋敬左さんは平成元(1989)年生まれの30歳。「英語は中学、高校の授業の延長レベル。仕事以外の場で外国の方とお会いしたら一言も話せないかもしれない」と謙遜するが、制服姿での英語アナウンスは堂に入っている。

 「ネイティブの話し方をまねてもうわべだけになってしまうので、日本人らしい話し方をして、日本人と外国人の両方が理解できるよう心がけている」と大橋さんは言う。
 翻訳アプリには頼らず、できるだけ肉声で英語アナウンスをするよう努めており、「翻訳アプリは発音チェックなどの練習では使うが、実際の乗車時にはほとんど使いません」。

 ほとんどのアナウンスの英語訳は頭に入っており、メモなどを見ることなく話せるが、「うろ覚えで話すのはよくないので、見える場所にメモを置き、何を言うかを必ず確認してからアナウンスするようにしています」。流暢に話すよりも情報を正確に伝えることに主眼が置かれているのだ。
■失敗を重ねつつ上達

 もう1人の車掌長、安井英雄さんは昭和34(1959)年生まれの59歳。国鉄入社当時は、まさか英語を使うとは思ってもみなかった。2005年愛知万博開催時に在来線で英語の肉声放送が行われた際には「カタカナをそのまま読んでいました」。相手に通じているかどうかがわからないままアナウンスしていてはいけないと、現在は特訓中だ。

 痛恨の失敗談がある。leftとrightを言い間違え、「The door on the left、失礼しました、right side door will open」。
 英語アナウンスの途中で思わず日本語が出てしまった。「そういうときは、Sorryと言えばいい」と、乗務員同士の勉強会でアドバイスを受けた。毎回、安井さんの英語スキルは少しずつ向上している。翻訳アプリを使う頻度も少しずつ減っている。

 安井さんは、担当した列車に乗っていた年配の日本人乗客に「あなたの英語を聞くと、勇気が出ます」と言われたことが忘れられない。「つたない英語でも案内しようとする一生懸命さが、お客様に伝わったのかもしれません」と安井さんは言う。
 肉声による英語放送が始まってまだ1年。今は過渡期だ。だが、最初は短い英文しか話さなかったが、次第に複数の情報をつなげて長い英文を話す乗務員が増えてきたという。また、英語力にかかわらず翻訳アプリを操作するよりも肉声で話すほうがタイムリーに情報を伝えられると考える乗務員も増えてきたという。

 乗務員が英語に慣れ、英語力が向上すれば、将来の非常時に自動放送ではなく、肉声で臨機応変に英語アナウンスを行うようになるだろう。外国人の乗客にとってはそのほうが安心に違いない。
 アナウンスだけでなく車内での接客についても「日本人も外国人も同じお客様。情報を区別してはいけない」と大橋さんは話す。英語が通じないから説明を省くようなことはないように心がけているという。

 安井さんは、「英語が不慣れな分、気持ちで伝えたい」。どんな質問でも全力で聞くので遠慮なしに質問してほしいという姿勢で臨めば、その気持ちは相手にも伝わるのだという。

 将来は航空会社のCA(客室乗務員)のように、全乗務員が英語をぺらぺらと話すのが当たり前という時代になっているかもしれない。
■車掌の英語、どんな例が? 

【新幹線車内放送 英文文例集】
・自由席は○○号車です
Non-reserved seats are from car ○○.
・ドア付近にお立ちのお客様、閉まるドアにご注意ください
Doors closing. Please be careful.
・お乗り間違いないようご注意ください
Please be careful not to take the wrong train.
・お忘れ物のないようお手回り品をお確かめください
Please be sure to take all your belongings with you.
・ご利用いただいた座席のリクライニングは元の位置に戻していただきますようご協力をお願いします
Please return your seat to its upright position.
・強風のため速度を落として運転しています
Trains are operating at slower speeds due to strong winds.
・お待たせしました。まもなく運転を再開します
Thank you for waiting. We will resume operations shortly.
本記事は週刊東洋経済9月7日号に掲載した記事「新幹線で始まった英語アナウンスの舞台裏 車掌さん、懸命の英語習得レッスン」を再構成して掲載しています。
大坂 直樹 :東洋経済 記者

最終更新:9月17日(火)5時20分

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