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小泉進次郎はなぜ「初入閣」を受け入れたのか

9月12日(木)6時10分配信 東洋経済オンライン

第4次安倍再改造内閣で、環境相に就任する小泉進次郎氏(写真:ロイター/アフロ)
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第4次安倍再改造内閣で、環境相に就任する小泉進次郎氏(写真:ロイター/アフロ)
 第4次安倍再改造内閣が9月11日午後に発足した。

 麻生太郎副総理ら、いわゆる政権の3本柱と岸田文雄政調会長を続投させて「安定」を維持する一方、麻生氏と菅義偉官房長官以外の17閣僚を総入れ替えし、国民的人気者の小泉進次郎氏を環境相で初入閣させ、令和新時代の政治の再出発に向けた「挑戦」をアピールした。

■「安倍政治の完結」目指すしたたかな安倍流人事

 新内閣では、岸田、菅両氏や小泉氏ら、ポスト安倍候補に名前の挙がる6人を党・内閣の要職に配した。一方、石破茂元幹事長を蚊帳の外に置き、後継レースでの「石破潰し」にも腐心した。多くの新人閣僚や再入閣組には「アベ友」と呼ばれる側近グループを登用した点などは、「まさに安倍流のしたたかな人事」(細田派幹部)と受けとめられている。
 今年11月下旬に史上最長政権という「大宰相の勲章」(自民長老)を手にする首相にとって、今回の人事は総裁任期が切れる2021年9月をにらみ、「安倍政治の完結を目指す」(側近)ための新体制づくりだ。

 ただ、日本経済再生を目指すアベノミクスは道半ばで、悲願とする憲法改正実現への道筋もなお不透明だ。さらに、「日韓対立や日ロ交渉の停滞など外交も八方ふさがり」(首相経験者)なのが実態だ。このため、新体制でも安倍政権の「レガシー(政治的遺産)づくり」も難航必至で、「結果的に、東京五輪開催と令和改元という政治的記念碑にとどまる」(同)との見方も広がる。
 7月の参院選に勝利し、過去に例のない国政選挙6連勝を果たした安倍首相は、8月後半の首脳外交の前後から人事工作を本格化させた。新人事を「安定と挑戦」と位置づける安倍首相はまず、内閣の大黒柱の麻生、菅両氏の留任を決めた。自民党ナンバー2として辣腕を振るう二階俊博幹事長については「副総裁格上げなどによる『二階外し』を模索した」(自民幹部)とされる。

 しかし、二階氏周辺から「選挙に勝った幹事長を外せば、政権基盤が揺らぐ」との反発の声が噴出。9月3日の安倍首相と二階氏との短時間の直談判の結果、二階氏再任が決まった。安倍首相は岸田氏の幹事長昇格も視野に入れていたとされるが、同氏の政調会長再任も決めたことで、結果的に「3本柱+岸田」という政権の骨格が維持された。
■「挑戦」を象徴する小泉氏の起用

 そうした中、安倍首相が最大の課題とした「挑戦」を象徴する人事が小泉氏の初入閣だった。これまでの人事でも首相サイドは小泉氏入閣の可能性を探ったが、前2回の総裁選で小泉氏が安倍首相のライバルの石破氏に投票したこともあり、小泉氏の意思もあって見送られてきた。

 ただ、今年8月に滝川クリステルさんとの結婚を菅氏と安倍首相に真っ先に報告し、例のない官邸での結婚発表をしたことで、「小泉氏が官邸寄りに変身した」(自民幹部)との見方が広がった。
 年明けとされる滝川さんの出産を控え、小泉氏は「イクメン議員」としての育児休暇取得の可能性も示唆したため、党内では今回人事でも初入閣見送り説が支配的だったが、人事の最終段階となった9日に安倍首相が電話で小泉氏の環境相としての入閣を正式に要請、小泉氏も快諾した。小泉氏は11日午後の新閣僚呼び込み後のインタビューに「ありがたい機会をいただいたと(安倍首相に)感謝している」と笑顔で語った。

 今回の首相の小泉氏起用はさまざまな政治的要因が背景にある。まず、首相にとって、小泉氏抜きの人事となれば「目玉もなく、政権浮揚も期待できない」(側近)。しかし、小泉氏が入閣すれば、「内閣支持率も5ポイント程度の上昇が見込める」(世論調査専門家)。
 さらに、各種世論調査での「次の首相候補」番付でつねにトップを独走している小泉氏を閣僚にして、ポスト安倍レースの有力候補と位置づけて候補者同士を競わせることで、安倍首相は退陣後のキングメーカーの地位も固めることができる。

 後継レースで「反安倍」の立場を鮮明にする石破氏の当選を阻止するためにも、石破氏支持だった小泉氏を取り込むことで、「石破包囲網を強化する狙い」(自民幹部)もある。さらに、今回の人事で政権浮揚に成功すれば、「年末も含めた早期解散の手がかりもつかめるなど、首相にとってはメリットだらけ」(閣僚経験者)との見方が多い。
 その一方、男性としては戦後の閣僚の最年少記録を塗り替えた小泉氏の立場は複雑だ。これまで、政権批判も辞さない歯に衣を着せぬ発言で将来の首相候補としての存在感をアピールしてきただけに、「安倍1強の軍門に下ることによるイメージダウンへの不安」(小泉氏周囲)も拭えない。この点についても小泉氏は、インタビューで苦笑しながら「(入閣の受諾は)理屈じゃない、自然と体が出た」とかわした。

 もちろん、閣僚になって公式の立場で政治家としての経験を積むことで、「首相への道が拓けるメリット」(同)はあるが、起用された環境相は原発問題や混乱するパリ協定への対応など難題が多く、小泉氏にとっても厳しい試練の場となる。
■「アベ友」満載、反発必至の閣僚人事

 父親の小泉純一郎元首相は福島原発事故が起きて以降、「原発ゼロ」を訴え続けている。その息子の小泉氏が閣僚として原発問題にどう対応するかは、首相候補としての真価も問われることになる。

 原田義昭前環境相は、退任直前の記者会見で福島原発の放射能汚染水処理について、「所管外ではあるが、思い切って海に放出して希釈するほかに選択肢はない」と発言し、内外からの批判を浴びた。この汚染水問題は小泉氏の就任当初の難題となる。先のインタビューで小泉氏は「まず、所管の経済産業省でしっかり議論していただきたい」としながらも、「地元の皆さんの気持ちをこれ以上傷つけないような結論を」と表情を曇らせた。
 こうしたやりとりからみても、今回の環境相としての入閣は「小泉氏にとってメリット・デメリットが半々」(自民長老)とされ、政界では「安倍流の意地悪な人事」(同)との見方も広がる。

 一方、安倍首相は19閣僚のうち、2012年12月の第2次安倍内閣発足時から続投する麻生、菅両氏を除く17人を交代させ、「政権の総仕上げを図る新陣容づくり」(側近)を目指した。横滑りや再入閣を除く初入閣組も13人と、安倍内閣で最多だった昨年10月改造時の12人を超えた。
 ただ、首相最側近とされる衛藤晟一前首相補佐官を1億総活躍担当相、萩生田光一前党幹事長代行を文部科学相、西村康稔前官房副長官を経済再生担当相にそれぞれ起用。さらに、経済再生相から外相に横滑りした茂木敏充氏や党総務会長から厚生労働相に再任された加藤勝信氏、衆院議運委員長から総務相にカムバックした高市早苗氏ら、「アベ友満載の人事」(閣僚経験者)で、本来なら党内外からの反発は必至だ。

■新閣僚呼び込みは事実上の「進次郎劇場」に
 にもかかわらず、11日付新聞各紙の朝刊は、そろって小泉氏入閣を大きく取り上げ、第1次政権での人事以来続いてきた「アベ友人事批判」は影をひそめた。同日朝の民放テレビ情報番組もそろって党・内閣人事を取り上げたが、内容は「小泉氏入閣関連」に集中。「まさに、首相の思惑どおりの展開」(自民幹部)となっている。

 官邸における新閣僚へのインタビューは小泉氏のみに集中し、小泉氏もいつも以上の饒舌さで丁寧に対応した。閣僚名簿発表と新閣僚呼び込みという見せ場も、事実上の「進次郎劇場」と化し、1カ月前の結婚発表と同様、情報番組も競うように小泉インタビューを生中継した。
 一方、安倍首相は11日午後6時から官邸で記者会見し、新体制を「令和新時代の国づくりに取り組む『安定と挑戦の内閣』だ」と解説した。その上で、小泉氏の環境相起用は「若手ならではの斬新な発想での取り組みを期待する」とし、「改革を力強く進める布陣」と力説した。

 ただ、陣容をみると、「滞貨一掃と側近偏重」(自民長老)というマイナス要因も目立つ。野党側も「突っ込みどころ満載の内閣」(小池晃共産党書記局長)と臨時国会で厳しく追及する構えで、新閣僚の今後の言動次第では新体制が綻びを露呈する可能性も否定できない。
泉 宏 :政治ジャーナリスト

最終更新:9月12日(木)6時10分

東洋経済オンライン

 

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