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バス・鉄道「共通1日乗車券」、普及すれば便利だ

9月12日(木)5時00分配信 東洋経済オンライン

「東急線・東急バス一日乗り放題きっぷ」で乗れる東急バス(右)。左は川崎市営バス(筆者撮影)
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「東急線・東急バス一日乗り放題きっぷ」で乗れる東急バス(右)。左は川崎市営バス(筆者撮影)
 東急電鉄が2018年4月27日より、当初は同年8月末までの「期間限定」として発売を開始した、「東急線・東急バス一日乗り放題きっぷ」が好評だ。その後、発売期間が2回延長され、2019年8月31日現在も発売が継続されている。名称の通り、東急電鉄と高速バスなどを除く東急バスの全線が1日乗り降り自由で1000円だ。

■バスも電車も1枚で

 これは例えば、自宅近くのバス停から東急の駅までバス(神奈川県内だと1回210円)で出て、渋谷まで往復(例えば青葉台からだと片道270円)すれば、だいたい元がとれ、それ以上は乗れば乗るほど得という感覚で使える設定である。
 バスから使いはじめる時は、まず東急バスのIC一日乗車券をバス車内で求め、駅で申し出て、差額490円の「東急線1日乗車券」を購入する手間がかかるが、「お得感」と「乗り降り自由」の使い勝手の良さがそれを上回って、人気を呼んでいるのであろう。

 私も東急電鉄および東急バス沿線の住民であり、何度も使っている。

 東京とその近郊を走るJR東日本と大手私鉄に加え、都営地下鉄、つくばエクスプレスにおける「一日乗車券」の発売状況を調べてみた。
 実は1枚で、鉄道とグループ会社のバス双方がともに1日乗り降り自由のきっぷはかなり珍しい存在で、ほかには都営交通(地下鉄、都電、都バス、日暮里・舎人ライナー)すべてで使える「都営まるごときっぷ(700円)」と、一部、観光地向けのエリア限定のものがある程度だ。

■東急のような例は少ない

 1000円の「東急線・東急バス一日乗り放題きっぷ」の場合だと、東急ワンデーオープンチケット(鉄道のみの一日乗車券・660円)と、東急バス一日乗車券(510円)を両方買うより割安である。
 一方、一部エリア限定のものも含めると、鉄道が1日乗り降り自由となるきっぷを発売している会社はかなり多い。また、バスが1日乗り降り自由となるきっぷを発売している大手私鉄系列の路線バスも多く、Suica、PASMOなどのICカードにデータを書き込み、リーダーにタッチできる方式を採用している会社もある。

 大手私鉄はすべてグループ内にバス会社を抱えているが、鉄道との一日乗車券の連携という面では、東急が先駆的な役割を果たしたのである。
 日本の大手私鉄は、バス会社としてもかなり大手となる、地域内では独占的な路線網を張り巡らせている会社を傘下に持っている。鉄道のみならず、バス、タクシー、さらには流通業、不動産業など、さまざまなグループ企業の集合体が、日本の私鉄の一般的な姿だ。

 言い換えれば、純民間企業である大手私鉄が地域住民の生活に欠かせないインフラの多くの部分を支えている。「ガラパゴス」と言われようが、歴史的な経緯もあって、日本の大都会はこのような都市構造の下で育ってきたのだ。
 これは諸外国には見られない、日本の大きな特徴だ。西欧やアメリカではインフラの整備、維持には、政府や地方自治体が必ずと言ってよいほど関与している。民営化も進んではいるが、日本のような鉄道関連企業グループを形成しているわけではない。もちろん日本でも地域行政との綿密な連携は必要とされているが、基本的に営利企業が公共性にも配慮しつつ事業を進めている。

■欧米で一般的な「ゾーン運賃」

 この「私鉄とそのグループ企業によって、地域の交通網が支えられている」実情を踏まえ、活用したうえで、より便利な運賃制度へ転換できないだろうか。欧米の都市交通では「ゾーン運賃」が一般的である。これは都市の中心部から同心円状に運賃ゾーンを定め、ゾーンをいくつまたがるか、によって運賃を簡素に定める方法だ。
 その代わり、乗車券の有効時間内(例えば2時間以内)であれば、ゾーン内の鉄道、バス、LRT(ライトレール)などの公共交通機関が、経営主体にかかわらず乗り降り自由で、利便性は高い。簡素である分、スマートフォンとの親和性も高く、多くの都市においてアプリを使った乗車券購入もできる。

 ゾーン運賃は東京ほど人口が多くない町、地域にも普及している。例えば、物価の高さで知られるノルウェーの首都オスロは人口約64万人(日本で比較すると静岡市の人口が約70万人)ほどの町。もちろん公共交通機関にはゾーン運賃が採用されており、1ゾーン内が36クローネ(約420円)である。
 この値段は、片道1回乗るだけだと割高に感じるが、往復したり、途中下車するなど2回以上乗るならば日本より安いとも言える。もちろん一日乗車券や30日乗車券なども用意されている。

 ところで欧米のゾーン運賃の、期限内乗り降り自由というポイント。日本の各鉄道の一日乗車券と似た面がないだろうか?  つまり、「東急線・東急バス一日乗り放題きっぷ」を「東急ゾーン」の乗車券と考えれば、欧米のゾーン運賃と似てこないだろうか。
■日本で実現するなら…

 ここでJR東日本や大手私鉄各社などが協議、連携して、現状発売されている乗車券はそのままで、すべての会社がグループ内の鉄道とバスに乗り降り自由という、統一された効力を持つ「一日乗車券」を発売したとしよう。欧米式の同心円状のゾーン運賃に対して、日本式の、鉄道会社ごとのブロック状(あるいは放射状)のゾーン運賃の姿が見えてこないだろうか。

 東京近郊に路線バスを持たないJR東日本は、山手線内、中央線、常磐線など幹線ごとにブロック分けし、それぞれに一日乗車券を設定する。バスに乗る必要がない利用客に対応するため、割安な鉄道のみの一日乗車券も設定したいところだ。東武、小田急のように営業エリアが広い会社は、例えば東京都内のみ、東京都と神奈川県のように、さらに複数のブロックに分割してもいいだろう。
 先に述べたように、東京とその近郊の住民の多くが、例えば東急が開発した町に住み、東急電鉄、東急バス、東急ストア、東急百貨店……といったように大手私鉄のグループ企業に支えられた生活をしている。

 つまり、1つの企業グループの営業エリア内で、生活のかなりの部分が成立しているのだ。鉄道とバスの双方に使える一日乗車券が、受け入れられる素地は、どの会社にもあるだろう。

 もちろん、東急沿線に住む人が東京メトロ沿線で用務があるなど、複数の鉄道グループにまたがった生活も十分ありうる。
 そこで、乗車駅が含まれる鉄道グループ内でも、隣接する鉄道グループの一日乗車券も購入できるようにすればよい。私の場合だと、東急ゾーン内で一日乗車券を購入し、次いで東京メトロゾーンの一日乗車券、さらに必要があれば、東武ゾーンや京王ゾーンも一度に続けて買えれば便利だ。これで、接続駅の渋谷などで改札口を出て、別会社の一日乗車券を買う手間が省ける。

 「JR東日本+東京メトロ+都営地下鉄」、または「東京メトロ+都営地下鉄」の一日乗車券は、すでに発売されている。これを拡大し、自由な組み合わせで買えるようにする考え方である。
■不正使用対策はどうする? 

 2つの一日乗車券で「キセル乗車」をするような不正乗車への対策としては、接続駅がない複数の鉄道ゾーン(例えば東急と京成)を同一日には買えないようにするのはどうか。紙のきっぷだと懸念が残るため、ICカードへの書き込み、またはアプリからの購入が前提となるだろう。データの照合が行えるようにするのだ。

 当然だが、この記事は「こういう考え方もある」ことを示しただけだ。私自身も、この通りに実現するとは思っていない。
 しかし、ゾーン運賃の簡便さは誰もが認めるところ。それゆえ、東京の現状では会社間の調整が非常に難しい同心円状のゾーン分けにこだわる必要はなく、日本の都市構造に合った方法をまず採って、次第に改良していけばよいのではないかという主旨である。
土屋 武之 :鉄道ジャーナリスト

最終更新:9月12日(木)5時00分

東洋経済オンライン

 

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