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つくばエクスプレス、沿線駅に見る「15年目の課題」

9月12日(木)11時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
まち探訪家・鳴海行人さんが個人的に注目しているまちに、不動産投資家の代わりに足を運び、そのまちの開発状況や歴史についてレポート。今回は「つくばエクスプレス」の沿線から、居住地として特に人気のある「流山おおたかの森」と「柏の葉キャンパス」の2駅をピックアップした。

■「流山おおたかの森」にはなぜ人が集まったのか

まもなく開業15年目を迎える「つくばエクスプレス」。当初は車窓から見える家もまばらでしたが、沿線開発も進み、今やすっかり通勤路線の仲間入りを果たしています。沿線の駅前にもさまざまな施設が登場し、それぞれのまちごとに特徴も生まれました。

つくばエクスプレスは、「秋葉原」駅を起点につくばへ至る58.3キロメートルの鉄道路線。今回、最初に取り上げる「流山おおたかの森」駅は、秋葉原駅へ最短約25分、「北千住」駅へ約15分というアクセスの良さが大きな魅力です。

また同駅には「東武アーバンパークライン(東武野田線)」も乗り入れています。アーバンパークラインを利用すれば、千葉県の主要駅の1つである「柏」駅まで約5分、「船橋」駅まで約40分、さらには埼玉県最大のターミナル駅である「大宮」駅まで約1時間。都心だけでなくさまざまなエリアへアクセスしやすい恵まれた立地です。

こうした立地のよさもあり、都市再生機構(UR都市機構)が2000年から区画整理事業を行った際、このエリアを「まちの新たな核」にしようと、流山市とともにさまざまな都市計画を行いました。 その結果、駅周辺に多くの機能を持った施設が配置され、同駅を住宅開発の呼び水とすることに成功したのです。

駅周辺の施設として象徴的なのは、大型ショッピングモールの「流山おおたかの森S・C (ショッピングセンター)」でしょう。開発したのは高島屋の子会社である「東神開発」で、店舗面積は約4万6000平方メートル。約130店舗が入居し、年商は約250億円と大規模です。内部の空間も通常のショッピングモールとの差別化が図られた高級感のあるつくりになっています。

テナントは庶民派のお店から百貨店を意識した高級路線なお店まで揃っており、さまざまなニーズに応えられることも特徴です。これは、つくばエクスプレス沿線に住む若いファミリー層の需要取り込みとライフスタイル提案に加え、東武野田線沿線に住むシニア層にも響く店作りを目指した結果だと思われます。

さらに東神開発は昨年、流山おおたかの森駅の高架下に、TSUTAYAやコインランドリーのほか、居酒屋など13店舗からなる「こかげテラス」も開業しました。これはつくばエクスプレス沿線で高架下店舗を運営していた企業を買収して実現させたものです。

高島屋は百貨店に次ぐ事業の柱として商業施設開発に力を入れています。東神開発はつくばエクスプレス沿線の高架下で店舗運営を行い、自社の価値観に近い高架下開発を沿線各地で展開、流山おおたかの森S・Cを始め都内や千葉県内の高島屋への送客につなげたいものと考えられます。

今後は流山おおたかの森にこだわらず、つくばエクスプレス沿線全体での商業施設運営を行っていくことになりそうです。

また「流山おおたかの森S・C」とは駅を挟んで反対側にある北西側には、今年に入ってからスターツグループが「スターツおおたかの森ホール」をオープンしました。506席を設けたホールのほか、流山市の市民窓口や観光案内所もあり、市民生活の充実に寄与しています。

同じ敷地にはホテルも開業し、マンションも建設中です。このほかにも駅の北東側には銀行や保育所など生活に密着したテナントが入る「ライフガーデン流山おおたかの森」があり、駅周辺施設はかなり充実したものになっています。

■住宅地は開発の真っ盛り

商業施設や公共施設など、生活のインフラが着々と整っている流山おおたかの森エリア。では住宅地の整備はどうかというと、駅周辺にマンションが数棟建設されているなど、いままさに開発の真っ盛りです。現在は駐車場となっている土地、また畑や雑草が生い茂る手の付けられていない未利用地など、開発余地のある土地が駅周辺に残っています。今後も駅周辺のマンション開発は盛んになっていくことが想定されます。

一方、まちを歩いていると、自然を感じさせるものも多く目に入ってきます。たとえば「流山おおたかの森」の駅名の由来にもなったオオタカが1992年に発見されて以降、営巣地ともなっている「市野谷の森」。その他、野鳥のやってくる水辺として「市野谷の池」もあり、「流山おおたかの森S・C」周辺にも緑が多くみられます。

これは、つくばエクスプレス建設時に地域住民が自然を残そうと努力したこと、また流山市が自然保護や緑化を重視した都市計画を実施したことも大きく影響しています。なお、流山市は良質な分譲住宅地の造成にも力を入れています。たとえば流山おおたかの森駅周辺では、分割による細分化や狭小住宅の建て詰まりを防ぐため、一戸建ての最低建築面積を135平方メートルと定めています。

緑が多く、生活インフラも整備されているなど、子育て世代にとって魅力的な要素が並ぶ一方、ファミリー層向けの公園は大きいとは言えず、子どもに十分な遊び場がないようにも見えます。また、ここ数年は大きく数は減らしたものの、待機児童問題も依然としてあります。将来的には保育所の不足も懸念されています。また、周囲の道路がまだ十分に整備されているとは言えず、車での移動に便利とは言えないのが現状です。

ただし、秋葉原側に歩けば、小規模なアパートもいくつかあり、賃貸需要があることがうかがえます。また、今後は駅近くの土地が開発されていくことを鑑みると、駅近を好む層の賃貸需要がさらに増加することも十分想定されます。

■産学官共同のまちづくり進む「柏の葉キャンパス」

続いては、流山おおたかの森駅の隣にある「柏の葉キャンパス」駅について見てみましょう。流山おおたかの森駅からは距離にして3.5キロメートルほど離れており、乗車時間は約3分です。自治体も駅名の通り柏市です。こちらは千葉県が施工者となり、2000年から駅周辺で一体型区画整理事業が始まりました。

さて、この柏の葉キャンパス駅で特徴的なのはなんといっても駅前に凝縮された建築群です。これらは駅の建設予定地周辺にゴルフ場を所有していた三井不動産の手で開発されました。

駅東側は「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」として高層マンションが5棟建設され、駅西側にはさまざまなまちの機能が凝縮されています。そして駅前のカフェは三井のリハウスと共同経営され、ホテルは三井ガーデンホテル、商業施設は「ららぽーと」と駅前のそこここに三井系資本の力を感じることができます。

商業施設の「ららぽーと柏の葉」は2006年開業。つくばエクスプレス開業後すぐにできた施設で、沿線の商業施設開発の先駆けとなりました。店舗面積は約5万平方メートル、テナントは約180が入居し、年商約240億円となっています。典型的な郊外のショッピングモールの作りをしています。流山おおたかの森S・Cと比べると低価格帯のテナントが多いですが、柏の葉キャンパス駅周辺に多く住むファミリー層の需要にはしっかりと応えています。

駅周辺には、「キャンパス」の名の通り大学が立地しています。駅の西側すぐの場所には千葉大学柏の葉キャンパスが、駅から2kmほど離れ、バスで12分ほどの場所には東京大学柏キャンパスがあります。ほかにも科学警察研究所や国立がん研究センター東病院など、公的施設が立地しているのもこのエリアの特徴です。

こうした特徴を生かしたまちづくりの一環として、産学官が連携したまちづくりのための組織・施設である「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」が2006年10月に設立されました。UDCKの活動としては主に一部街区の空間形成におけるマネジメント、大学や住民と連携したまちづくりに関する社会実験の実施、市民活動支援などがあります。産学官共同でほぼ1からまちづくりをするケースは珍しく、また市民活動支援にはアートを導入するといったユニークな手法もあってUDCKのまちづくりは全国から注目されています。

■エリアの境界では断絶感も

一方で、まちを歩いていて思うのは、「三井系資本による開発エリア」とその外の連続感がないことです。柏の葉キャンパス周辺は四方を道路で囲まれており、その内側と外側に連続性がないのです。駅前に接続する道路はT字路で、渡った先にある住宅地へそのまま通じる遊歩道がありません。駅南西側の開発も盛んですが、そちらへも歩行軸がなく、高架沿いの暗い場所を歩いていくことになります。

また、駅西側の土地は未利用地も多く、唯一接続している施設が千葉大学のキャンパスということもあり、駅の隣接地だけ独立し、閉鎖的な印象を受けるのです。これはある意味で駅近くに住めばすごく充実した生活を送れるということでもあり、全くのマイナスというわけではありません。ですが、柏の葉キャンパス駅周辺の不動産購入を考えている人は、実際の不動産の所在地を十分考えた方がよいでしょう。

なお、駅から少し歩けば千葉県立柏の葉公園といった大きな公園や「柏の葉T-SITE」といった、ライフスタイル提案型で編集された商業施設もあります。このような場所は流山おおたかの森にはなく、子育てをしつつ、自分の生活を充実させたい人々にとっては非常に魅力的な場所であると言えます。

また、国道16号線にすぐアクセスでき、常磐自動車道の柏インターも約3キロメートルと近いため、休日は様々な場所にでかけるアクティブな層にはおすすめといえるでしょう。

■2つのまちに「足りないもの」

ここまで2つの駅周辺のまちを見てきました。つくばエクスプレスの建設は1978年に構想され、1985年の運輸省運輸政策審議会答申に基づいて決定しました。そして整備に当たっては、宅地開発と交通アクセスの一体型で進められることとなり、1989年に成立した「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体型推進に関する特別措置法」(通称:宅鉄法)により、区画整理と駅整備、鉄道用地捻出を一体的に進めてきたところです。そのため、計画的で綺麗に整備された住宅地が多く、沿線の人気が出たのでしょう。

一方で、区画整理がしっかりされている計画的なまちだからこそ、不足する機能もあります。たとえば歓楽街の機能。流山おおたかの森や柏の葉キャンパスといった駅前には飲み屋は10軒に満たず、それらの多くは高架下に設けられた商業施設のテナントとして入居しています。帰宅前にちょっと一杯、というサラリーマンにとっては、少々風情が足りないかもしれません。カフェも同じく全国的に展開している大手のチェーンがほとんどです。

こうしたまちには自然に人々が集い、そこに通う中で客同士の会話が生まれ、人間関係やコミュニティが形成されていくという「サロン」的な場所が見られません。特に柏の葉キャンパス駅の隣接地ではコミュニティがなくても安心・安全な生活はできるようなまちづくりがされており、人々の会話が生まれにくい、相互不干渉になりやすいようなまちづくりが行われているようにも見えます。

そうなると、流山おおたかの森駅周辺や柏の葉キャンパス駅周辺のようなまちでは自発的なコミュニティ形成が中々難しいといえます。もちろん、地域でコミュニティ形成を支援するための施設や団体があることは先に紹介しましたが、まだまだ形成途上と言えます。よって、たとえば地縁に基づくようなしっかりした地域コミュニティを求める人にはまだつくばエクスプレス沿線はおすすめしづらい状況です。



つくばエクスプレス沿線のまちにおける最大の強みは、都心エリアからわずかな時間で移動が可能な新しく開発されたまちに住めることです。そして、まだ発展途上のためさまざまな課題もありますが、今後解決されていくことが期待できます。つまり、まちが成熟・発展する余地が大いにあるといえそうです。そうした面からも、流山おおたかの森、柏の葉キャンパスの2つは、今後の成長に注目のまちといえそうです。
鳴海 行人

最終更新:9月12日(木)11時00分

不動産投資の楽待

 

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不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

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