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大再編「待ったなし」、苦境続きの地銀が辿る未来

9月9日(月)11時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:kornpixta2016/PIXTA)
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(写真:kornpixta2016/PIXTA)
地方銀行の苦境が続いている。地銀の3大ビジネスである貸出、手数料、有価証券運用は、いずれも低迷している状況だ。

今後、地銀は生き残りをかけて大再編へと向かい、最終的には20のグループに収れんする──。そう語るのは金融コンサルタントの高橋克英氏。全国に104ほどある地銀は、それぞれどのような道を辿っていくのか。そして投資用不動産向けローンの行方はどうなるのか。

■銀行の主要業務を脅かす3つの波

金融庁がまとめた2019年3月期の地銀の決算概要によると、地銀の資金利益(銀行の主要業務から得られる利益)は、前年比マイナス1118億円の3兆7201億円と減収。また手数料に関わる利益である「役務取引等利益」も前年比マイナス16億円の5281億円とこちらも減収となっている。さらには有価証券運用の1つである株式等関係損益も、前年比マイナス266億円の2485億円で減収。地銀の3大ビジネスは総崩れ状態であることが分かる。

背景にあるのは地銀を脅かす3つの波、すなわち「人口減少」「低金利」「デジタル化」だ。

まず人口が減り続けることで法人・個人の顧客数が減少していくほか、市場の縮小によって貸出ニーズも低下、店舗ネットワークの維持も困難になる。

次に低金利。日銀による低金利政策によって貸出金利が低下し、利ざやが縮小して業績を悪化させている。加えて足元では、FRB(米国連邦準備理事会)による利下げもあり、日銀も更なる緩和策を打ち出す可能性もある。そうなれば、地銀にとってはより一層苦しい状況となる。

最後のデジタル化は、新興企業によるスマホアプリやキャッシュレス手段などの普及を指す。GAFAや日本のソフトバンク、楽天、そしてLINEなどに代表されるデジタルプラットフォーマーが銀行業務へ相次ぎ進出、利便性や価格などに優れたサービスが、既存の銀行業務を脅かしているのである。

これらに加えて、スルガ銀行などによる不良債権処理費用の増加などもあり、地方銀行全体の当期純利益は前年比マイナス2279億円の7686億円と減益だ。

こうした減収減益や赤字決算が、銀行店舗や人員の更なる縮小を生むことにもなる。2019年4月に発表された日銀の「金融システムレポート」によれば、10年後の2028年度には約6割の地銀が赤字になるという。だが、もしかするとその見通しすら甘いのかもしれない。

■狭まる選択肢、最後は20グループに?

こうした中、地銀が採りうる選択肢は狭まりつつある。最も有力なのは「合従連衡」、つまり統合による規模拡大である。

事実、成長戦略を議論する政府の「未来投資会議」は2019年の実行計画案で、地銀の経営統合を促すため、独占禁止法の特例を認める方針を10年間の時限立法で盛り込んでいる。同一地域で特定の銀行のシェアが高まれば独禁法に抵触してしまう、という点が統合を難しくしていたが、これを特例的に認める。2020年の通常国会に特例法の法案提出を諮るという。これは、「この10年の間に統合を推し進めてください」という金融規制当局からのメッセージと言えるだろう。

国内市場の拡大が見込めない現在の状況下では、最終的に多くの地銀が「規模の経済」を享受する選択をすることになるだろう。そうなれば地銀再編がさらに加速していく。そして早ければ2020年には、現在104行ある地銀・第二地銀は、資産規模20兆円クラスの地銀20行(グループ)に集約していく可能性がある、と筆者はみている。

ただし非上場の7地銀を除き、持株会社のもとにグループ化されている銀行を1つとカウントすることで、上場地銀は80のグループにまで集約される。たとえばコンコルディア・フィナンシャルグループ(コンコルディアFG)傘下の横浜銀行と東日本銀行がその例だ。合従連衡の一環として、持株会社を設立する動きも相次いでいる。一括りに「地銀104行」などと言われるが、事実上、現時点で既に80ほどのグループに収れんしているといえるのだ。

■地銀の「メガ再編」も

総資産5兆円以上の地銀28グループを資産規模の多い順に見てみると、トップ11は最大手「ふくおかFG」の23.7兆円を筆頭に10兆円クラスの銀行が並ぶ。その多くが持株会社のもと、多様なグループ展開をしている。証券子会社や資産運用子会社をもち、信託業務やフィンテック対応にも積極的で、メガバンクに負けないフルライン体制を作り上げている。

12位以下の17地銀についても、いずれも地域のトップ地銀であり、トップ11グループと同様に規模と業容をフルラインで展開している地銀ばかりだ。地域バランスも含め、既に20の席のうち約半分が埋まり、残る10席前後をこれら5兆円以上の規模の銀行が、合従連衡によりその座を得ようとしているのが現状だろう。

さらに、海外や他業態の合従連衡でも散見されるように、地銀の再編でも今後は、トップ地銀同士のいわゆる「メガ再編」も想定されよう。2019年7月に発表された横浜銀行と千葉銀行の包括業務提携はその先駆けになりそうだ。他にもこの先、たとえば「コンコルディアFG」と「ほくほくFG」、「めぶきFG」と「群馬銀行」といった組み合わせも考えられる。

「コンコルディアFG」などトップ10クラスの地銀が更なる拡大に動くことで、ドミノ的に各地で地銀再編が加速し、早ければ2020年には総資産20兆円20行(グループ)体制が確立する可能性は十分にあるだろう。

ちなみに、横浜銀行と千葉銀行の資産規模は単純合算で31兆円。また千葉銀行や第四銀行など9行が広域で連携する「TSUBASAアライアンス」の合計総資産は65兆円となる。

今後はこのような「メガ再編」を含め、規模の経済を享受するための合従連衡が進む。その際に、リテール(小口業務)No.1を標ぼうするりそな銀行の総資産32兆円、りそなホールディングスの59兆円という規模感は、1つの到達目標として意識されることになりそうだ。

■非上場化・業態転換という選択肢

無論、地銀104行がきれいに20のグループに収れんするというのは現実的ではない。株式価値の向上を目指し、規模や業容が充実・広域化した20の地銀グループが存在する一方、それ以外の非上場銀行や小規模銀行、地域的に再編から孤立した銀行、創業者の影響が強い銀行、公的資金注入行なども存在する。これらの銀行は、地域貢献に比重を置きながらも、当面はそのままで残るという構図も考えられる。

しかし、もはや上場する株式会社としての存在意義を失った一部の地銀が、非上場化や、信用金庫との合併、協働組織金融機関への業態転換を模索することも考えられる。公共性も求められる地銀と株式会社制度の相性は元々よくない。

このため、例えば新たに「コミュニティバンク法(仮称)」のようなものを制定し、預金量が1兆円以下の地銀は、株式会社ではなく、会員や組合員の相互扶助を目的とした組織である「協同組織金融機関」の一形態、「コミュニティバンク」へ転換できるようにするといった施策も考えられよう。

また、地域経済や中小企業向け融資を円滑化するために、2022年3月末まで延長されている金融機能強化法に基づく公的資金制度がある。冒頭に挙げた、人口減少、低金利、デジタル化といった3つの波の影響を受けることで、地銀の業績が更に悪化し、赤字決算などにより自己資本が毀損し不足する場合には、地域の中小企業への貸出増強という名目のもと、公的資金制度を活用する地銀が増える可能性がある。

■廃業・破綻の可能性は

地銀にとって最悪のシナリオは、廃業・経営破綻だ。今後、創業者一族が経営する地銀などでは、廃業を検討するところが出てきてもおかしくはない。先に挙げた非上場の地銀のなかには、創業者一族が経営する地銀や比較的規模が小さい地銀もあり、一般事業会社が廃業を選択するように、地銀においても廃業という選択は十分にある。

また、現時点ではどの地銀もその可能性は極めて低いものの、今後、米中貿易摩擦の悪化などにより世界的な金融危機が発生することで、国内の景気や市場も悪化、地銀の不良債権が増大したり、有価証券運用の失敗などが重なったりすることで、資金繰り悪化や債務超過が発生して破綻するケースも考えられる。

その場合、一義的にはペイオフが発動されることになる。預金者保護のもと1000万円以下の預金は保護されるものの、1000万円を超える預金や債券、株式を持つ預金者や投資家には損害が出ることになる。

なお、地域経済や我が国の金融システムに著しい悪影響を与えるおそれがある場合には、預金保険法の特例などにより、預金などの全額保護や、公的資金注入や国有化といった施策によって、銀行の破綻が回避され、預金者や投資家の保護、金融システムの維持・安定を図ることも可能ではある。

■投資用不動産向けローンへの風向きは

地銀再編は不可避であるだけでなく、前述のようなメガ再編が進む可能性もある。地銀にとっては、再編後も貸出がビジネスの中心であることは変わらないため、本音では、地主や会社員などの投資家向けの不動産投資ローンを積極的に伸ばしたいと考えているはずだ。企業向けの融資が伸び悩む現在、不動産投資ローンは銀行の貸出業務における数少ない成長分野だからだ。

地銀の不動産投資ローンの現状が厳しいことは否定できないが、法人向け融資に代わり、個人向け貸出の重要性は増していくだろう。地銀の合従連衡が進むことで、地銀の財務力が強化され貸出余力ができれば、不動産投資ローンへの風向きも変わってくるはずだ。

※本寄稿は、邦銀に関する一般的な筆者見解をまとめたものです。本寄稿は、法務・税務・会計に関する助言等を提供するものではなく、それらの問題については専門家にご相談下さい。また、いかなる金融商品の売買をすすめるものでもありません。投資における最終判断はご自身でお願いします。
高橋 克英

最終更新:9月9日(月)11時00分

不動産投資の楽待

 

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不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

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