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「Apple丸の内」9月オープンで吹き始める新風

8月26日(月)17時30分配信 東洋経済オンライン

せまる開店に向けて仮囲いが施されるApple 丸の内。9月7日オープンの予定(写真:アップル)
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せまる開店に向けて仮囲いが施されるApple 丸の内。9月7日オープンの予定(写真:アップル)
 アップルは8月26日、9月7日に東京・丸の内に直営店「Apple 丸の内」をオープンすると発表した。

 アップルで直営店を担当しているリテール+人事担当シニアバイスプレジデントを務めるディアドラ・オブライエン氏からコメントを得た。

 「日本で最も新しく、そして最大の店舗となるApple 丸の内をオープンすることをとても楽しみにしています。 アップルは、2003年に日本においてアメリカ外で初となる店舗をオープンして以来、このすばらしい国でお客様と築いてきた長い歴史を誇りに思っています。
 Apple 丸の内によって、東京でのApple体験は最高のものとなります。われわれは、お客様をこのすばらしい新しいApple 丸の内にお迎えすることを、待ちきれない気持ちです」

 同氏の言及にもあるとおり、丸の内に新たにオープンする店舗は日本で最大規模となる模様で、すでに日本でも展開され始めた新世代店舗の機能を合わせながら、世界各地の店舗で行われている「その土地に合わせた店舗デザイン」が施されるそうだ。
 丸の内の建築といえば、東京駅のレンガ造りをはじめとして、日本の近代化に合わせて名建築がたくさん現れ、昨今のビルの建て替えで保存と復元が進められてきたエリアでもある。そうしたテイストを踏襲することになるのではないだろうか。

 しばし停滞していたかに見えた日本の直営店戦略が、再び拡大に転じた背景について探る。

■アメリカ外では初出店となった銀座

 アップルの直営店は、現在世界で最も注目される小売店だ。

 長らく、高級ブランドのブティックを抑えて、床面積あたりの売上高トップを維持している。アマゾンをはじめとするオンラインコマースが成長し、小売チェーンの大崩壊を経験したアメリカにおいても、アップルの店舗はその存在価値を明確にしてきた。
 アメリカの出店は、人々が多く住むエリアで30分ほどクルマで走れば店舗にたどり着けるよう配置されている。そして、新製品に触れるチャンス、サポートや修理をしてもらう場所、アクセサリーを見つけ、製品を生かしたクリエーティブやビジネスの学び舎として足が向くよう作り込まれていた。

 iMac、iPod、iPhone、iPad、Apple Watchと、奇想天外な新製品を次々に送り出してきたアップルにとって、最良の状態で展示し、触れる機会を提供しているApple Storeと、よくトレーニングされたスタッフは、消費者に新しい商品を理解してもらううえで重要な役割を果たしてきた。
 Apple Storeのアメリカ外初出店は日本だった。東京・銀座に現在も営業を続ける「Apple 銀座」は2003年11月30日に、73店舗目の直営店としてオープンした。故スティーブ・ジョブズ氏も開店時に訪れた店舗を皮切りに、現在日本国内に8店舗を営業している。

■2018年は新たな2店舗

 日本におけるアップルの小売店戦略はアメリカのそれとは異なっていた。アメリカではアップルが自ら直営店を出して人の流れを作り出そうとしており、ほかの国でも同様だ。しかし日本では、家電量販店の中にAppleコーナーを設けてスタッフを配置する形で全国をカバーしようとしている。
 これは家電量販店のポジションが関係する。実際アメリカに住んでみて感じたのは、「家電量販店にまったくときめかない」ということだった。とにかく商品数が少なく、棚もガラガラの状態で、面白いものが見つかりようがないからだ。それに比べ、日本の家電量販店はきちんと集客しており、アップルがこれを利用してきた。

 そのため日本におけるApple直営店は特別な場所として、長らく大都市への出店にとどまってきた。しかし2018年に、再び出店攻勢をかけ始めた。
 2018年4月に新宿、そして同年8月京都に新店舗をオープンさせ、日本でも「タウンスクエア」といわれる新世代店舗の展開が始まった。続いて渋谷店も新世代店舗へと改装され、現在表参道店が改装中だ。さらに2019年9月に丸の内にオープンさせれば、18カ月で3店舗という異例のペースとなる。

 とくに注目すべきはApple 京都だ。6Kの大型高精細ディスプレーを備え毎日特別に開発された学習プログラムが展開される「フォーラム」、Apple製品以外のアクセサリーがいち早く販売される「アベニュー」、商談などに用いられる「ボードルーム」など、タウンスクエア店舗の機能がそろっていながら、精密な漆喰で壁が塗られ、店舗自体も巨大なあんどんをイメージさせる。
 Apple Storeの新世代スタンダードと和の要素を高い次元で融合させており、現在のアップルが、人が集まる場所、体験を提供する場所のデザインに注力していることがよく現れている。

■コミュニティーの「核」をばらまく

 アップルは直営店について、最良の体験で製品を販売する場所から、アップルがコミュニティーの結びつきを取り持つ場へと、リモデルしている。毎日世界中でプログラムが開発されているセミナー「Today at Apple」では、地元のアーティストを積極的に起用し、Apple製品を生かした体験型授業を展開している。
 例えば、過去記事でも取り上げたサンフランシスコで活動する日本人アーティスト、ミキマサコ氏は、サンフランシスコ・ユニオンスクエアのApple Storeでワークショップを行った。また地元・京都造詣大学で教鞭をとるニューヨークベースの建築家、Morpholio 長谷川徹氏も、京都の店舗のToday at Appleに登場し、独自で開発したアプリを用いた建築デッサン体験を7月に行った。

 このように、アップルは直営店を、単に製品を売る場所としてではなく、ビジネス、デザイン、プログラミング、教育、アートといった人の生活に密接に結びつく分野の人同士をつなげる「核」として機能させようとしている。
 これも、すでに14億のアクティブインストールベースが広がったApple製品から、いかにして新たな価値を生み出すか、という取り組みの1つといえる。同時に、こうした店舗での動きは、オンラインストア(アプリ)であるApp Storeや、Apple Musicをはじめとする各種サービスとも連動していくことになる。

 Apple Storeは、アップル自身にとっても、iPhone依存の収益構造から脱却するヒントを得る重要な場所として、引き続き注目していくべきといえる。
松村 太郎 :ジャーナリスト

最終更新:8月26日(月)17時30分

東洋経済オンライン

 

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