ここから本文です

大手私鉄「営業利益率ワースト1」の意外な名前

8月26日(月)5時00分配信 東洋経済オンライン

大手私鉄16社中、営業利益率がもっとも低かったのは…(撮影:今井康一)
拡大写真
大手私鉄16社中、営業利益率がもっとも低かったのは…(撮影:今井康一)
 企業の稼ぐ力を見る重要な指標の1つが「売上高営業利益率」だ。営業利益を売上高で割って算出する。売上高が同じであっても営業費用が少なければ営業利益はその分だけ増える。売上高営業利益率は、効率的に稼いでいるかどうかを知る指標といえる。

 鉄道業界における各社の営業利益率はどうだろうか。日本民営鉄道協会が発表した大手私鉄16社の鉄軌道部門における2019年3月期の売上高(営業収入)と営業利益を元に、各社の鉄軌道事業における売上高営業利益率ランキングを作成した。
■トップは急浮上の阪急

 その結果、1位は阪急電鉄の26.2%。以下、2位西武鉄道23.5%、3位東武鉄道22.8%、4位相模鉄道22.7%、5位京浜急行電鉄22.1%と続く。

 阪急は前年度(2018年3月期)の4位から1位へと急浮上。営業利益私鉄トップの理由については、阪急電鉄は「沿線人口が増えており、これが利用者増につながっている」と説明する。

 また、営業費用の内訳を見ると、人件費、修繕費、その他経費(動力費など)が前年度から減少。減価償却費は前期より増えているものの、阪急の減価償却費の水準は中位クラス。結果として総合的な費用抑制につながったことが利益率トップという結果につながったともいえる。
 2位の西武は前年度1位。連続して上位をキープしている理由について、西武ホールディングス広報は「近年新たに導入した、有料座席指定列車であるS-TRAINと拝島ライナー、新型特急車両ラビューが、多くのお客さまからご好評いただいていることに加え、また、メットライフドームでのイベント開催や野球観客動員数の増加、秩父エリアのプロモーション強化、グランエミオ所沢Ⅰ期の開業などにより、旅客運輸収入が増加した」と説明する。
 3位の東武は前年度2位。西武同様、特急料金が得られていることに加え、人件費の比重が低いことが高順位につながった。

 4位の相鉄は前年度3位と同じく上位組だが、今後は様相を異にしそうだ。今年11月にJRとの相互直通運転を開始、2022年度下期には東急電鉄との相互直通運転が始まる。

 これらは収入増につながる可能性があるが、両社との相互直通に向けて新型車両を200両以上投入する。また、2022年度までに全駅にホームドアを設置する計画もある。これらの減価償却費によって費用は膨らむ。相互直通運転による利用客増の効果が出るまではある程度の時間がかかりそう。それまでの間は営業利益率は低下するかもしれない。
 5位の京急も今年10月に同社のドル箱である空港線の加算運賃引き下げを実施する。これによりライバルの東京モノレールからの利用者転移も期待できるが、モノレールも定期券の値下げなど対抗策を打ち出しており、今後は定期外でも対策を繰り出す可能性もある。利用者増の効果よりも運賃引き下げの影響のほうが大きいかもしれない。営業利益率に与える影響が気になるところだ。

■ワースト1位は京王、その理由は? 

 続いて、ランキング下位の鉄道会社を見ていこう。ワースト1位は京王電鉄で13.5%。同社の輸送人員は東京メトロ、東急電鉄、東武鉄道、小田急電鉄に次ぐ第5位の規模であり、財務体質もいい。昨年からは有料座席指定列車「京王ライナー」も導入して収益増にも力を入れている。人件費、修繕費、減価償却費などの費用も突出して増えているわけではない。
 営業利益率が低い理由について同社に聞いてみたところ、「安全性、サービス向上の観点から費用を減らすことはできないという点はあるが、むしろ運賃水準が影響しているのではないか」という回答があった。

2017年7月18日付記事(徹底比較「JR・私鉄の距離別運賃」ランキング)によれば、大手私鉄16社、JR東日本、JR西日本、都営地下鉄、名古屋市営地下鉄、大阪メトロの計21社局のうち、京王は初乗り運賃ランキングで2位、距離5kmで1位、距離10kmで2位、距離20kmで3位、距離30kmで4位、距離40kmで2位、といった具合に、運賃水準がかなり割安。そう考えると営業利益率が低いことは決して悪い話ではない。
 ワースト2位は西日本鉄道の13.8%で、九州地盤ということもあり首都圏や近畿圏と比べると輸送人員が少ないことが影響しているとみられる。ワースト3位は東急電鉄で16.7%。東急の運賃水準も初乗り運賃ランキングで2位、距離5kmで2位、距離10kmで5位、距離20kmで1位、距離30kmで1位、距離40kmで3位と割安。京王と同じ構図である。

 その意味では小田急の運賃水準も京王、東急並みに割安なのだが、利益率が21.0%と京王、東急よりも高いのは、ロマンスカー運行による特急料金を得ていることが理由として挙げられるだろう。
■JR東海は驚きの45%

 JR東日本、JR東海、JR西日本というJR本州3社についても調べてみた。JRについては各社の2019年3月期単体決算における売上高と営業利益を用いた。

 営業利益率を高い順に並べると、1位はJR東海の45.6%。以下、JR東日本18.5%、JR西日本15.4%という順になった。JR東海は売り上げのおよそ半分が利益というダントツの1位だ。この理由は東海道新幹線が運輸収入の9割を占めていることによるもの。JR東海発足以来、東海道新幹線の輸送量は6割増えている。
 こうした収入増加に加え、ネット予約・チケットレス乗車サービスといったサービス改善と効率化を同時に実現するような施策を取っていることも高い利益率に反映されている。
大坂 直樹 :東洋経済 記者

最終更新:8月26日(月)8時00分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン