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ポーラ遺産訴訟の新証拠、捏造疑惑社長の「音声データ」を独占入手!

8月26日(月)11時20分配信 ダイヤモンド・オンライン

写真:ダイヤモンド・オンライン
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 化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスの元ナンバー2が鈴木郷史社長による書類捏造疑惑を内部告発したことで始まった巨額の遺産対象確認訴訟で、原告が「捏造を認めた証拠」と主張する、鈴木社長らの音声データ3本全てをダイヤモンド編集部は独自に入手した。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

 「約20年前の書類捏造疑惑」の告発に端を発し、化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の鈴木郷史社長は、叔父(2代目社長の故鈴木常司氏)の妻千壽氏に巨額の遺産対象確認を求められている。故常司氏は戦後の大富豪の一人で莫大な遺産があった。遺産相続を巡り鈴木社長と千壽氏が法廷で争うのは2001~05年以来で、いわば“争族”訴訟第2ラウンドとなる。

 千壽氏が18年5月に東京地裁に提訴してから2件の裁判が並行して審理中で、そのうち神奈川・箱根のポーラ美術館の美術品に関する訴訟は9月9日に鈴木社長、告発者であるHD元ナンバー2らの証人尋問というヤマ場を迎える。

 千壽氏は元ナンバー2が告発した二つの書類捏造疑惑を根拠に、「鈴木社長が不正に手に入れた故常司氏のポーラ不動産株約69万株(HD株に転換され、提訴時の時価で約2200億円)と、ポーラ美術館所蔵の美術品839点(評価額計約28億円)は本来遺産相続の対象だった」と主張している。

 そして、ダイヤモンド編集部が独自に入手した音声データ3本は、両裁判の最大の争点となっている「鈴木社長らによる2000~01年の書類捏造があったのか否か」に、深く関わるものだ。

 仮に千壽氏の訴えが全て認められれば遺産相続をやり直し、千壽氏が法定相続分(4分の3)を手にする公算が大きい。株主構成が大きく変わるとともに鈴木社長のガバナンス能力の欠如が問われ、経営体制は刷新される可能性が高い。

 (これまでの経緯、詳細は『週刊ダイヤモンド』18年10月13日号第2特集「告発で始まったポーラ遺産騒動の深層」を参照)

 音声データ3本について解説しよう。

 17年12月18日に鈴木社長と元ナンバー2が告発後初めて話し合った際の音声データ(2時間7分)の存在はこれまでHD幹部らの間で知られており、本編集部も把握していた。

 その音声データに加え、本編集部は17年12月6日と11日に、告発を仲介したHDリスク管理業務委託先(当時。17年末にHD側から契約解除)の男性が鈴木社長と話し合った際の音声データ2本(6日は1時間18分、11日は28分)を独自に入手した。

 千壽氏はこれらの音声データについて、「鈴木社長は内部告発の真実性を認めていた」「捏造が真実ではない場合、鈴木社長の行動に矛盾がある」などと評価し、東京地裁に証拠として提出している。会談の詳報は後に譲るが、自身の捏造疑惑を告発された鈴木社長が疑惑を明確に否定する発言は見当たらず、むしろ、「捏造があったことを前提とし、社長退任の条件を話し合っている」と聞こえそうなやりとりだ。

 一方、鈴木社長はこれまでの裁判やHD取締役会などで、捏造を全面的に否定している。

 具体的な主張としては、(1)うかつに反論すると相手が暴走して事実無根の内部告発書面をマスコミなどに吹聴し、過去の泥沼の相続紛争が蒸し返される可能性が否定できなかった、(2)事実無根であってもグループのレピュテーション(評価)が毀損されることは間違いないと考え、そのような事態を避けるために「ひとまず話を合わせて聞き置く」という態度を取った、(3)積極的な発言や反論を控え、何を目的としているのかを聞き出すことに主眼を置いた、(4)何を言っても無駄であると考え、放言を聞き置いた、(5)確定的に社長を辞任する意思を示したことは一度もない、(6)(元ナンバー2らの行為は)恐喝または強要罪に当たる――といった具合だ。

 以下は、問題の音声データの中でも特に争点になりそうな会話部分を、時系列に沿って抜粋したものだ。本編集部作成の動画では、音声データの一部を公開しており、鈴木社長らの生の声を聞くことができる。

 なお18年12月6日の話し合いは東京・銀座のHD本社で、同月11日と18日の話し合いは東京・五反田のHDの登記上の本社で行われた。
● 退任迫る生々しいやりとりは捏造前提? 社長は否定

 〈17年12月6日の音声データ抜粋〉 鈴木社長がHDリスク管理業務委託先の男性(前出の動画内では「関係者」と紹介)と会談し、男性から元ナンバー2の告発内容が初めて伝えられた日

 HDリスク管理業務委託先の男性 「11月20日の月曜日にね、あのー、××さん(元ナンバー2)が見えましてね、ちょっと深刻な相談があるっていうんで。それで何のことかって聞いたら、そのー、いわゆる内部告発をね、したいんだと」

 鈴木社長 「ちょっと」

 男性 「ま、社長、冷静に」

 社長 「待ってください」

 (中略)

 男性 「17年前のことについて(元ナンバー2が)内部告発したいんで、あのー、ま、私も当時関わってたことでもあるし、あの、一応相談をした上で進めたいっていうこともあって」

 社長 「17年前って、あの、会長(鈴木社長の叔父の故常司氏)が亡くなった、遺産相続の」

 (中略)

 男性 「これが表に出るとね、もう、その、ま、極端に言えば、その、ポーラの崩壊につながることなんだから、それは、こう、慎重にね、進めていかなということで、あのー、聞いたんですよ。で、今日、(告発書面を)持ってきましたんで。読む、時間ありますか」

 社長 「ああ、はい、大丈夫です」

 (中略)

 男性 「まあ、明確に申し上げて、あのー、社長には、そのー、職務を降りてもらいたいと」

 (中略)

 社長 「だから私が経営から降りるっていうこと」

 男性 「うん、そう、そう」

 社長 「うん。これ(告発書面)はそういうことなんでしょうね」

 (中略)

 男性 「当時の、あの、いきさつを知ってる人以外はね。うん。だから、○○さん(当時の秘書室員)でしょ、××(元ナンバー2)、△△(当時の専務)、社長、私と。この5人以外に漏れることがあったら、もう終わりですよ。こういう話は。だからそこで解決しないと」

 社長 「うん。ああ、どうするかな」

 男性 「こんな朝っぱらからとんでもない話で。ね」

 社長 「まあ、これは私の不徳の致すところっていうか」

 (中略)

 社長 「うん。また、でも、社長の座を退いたとしても、この問題」

 男性 「やっていきますか」

 社長 「この問題、なくなりませんからね」

 (中略)

 男性 「(民事の時効まで)あと3年ですよ、3年。あっという間ですよ、3年って。うん」

 社長 「まあ、会社がいいときに自分が身を退くってのは悪くはないですね」(ダイヤモンド編集部注:17年12月期の業績は薬用シワ改善美容液「リンクルショット メディカル セラム」の大ヒットもあって過去最高益だった)

 (中略)

 男性 「3年間、我慢してくださいよ」

 社長 「まあ、ちょうどいい退き時かもしれないな。今、ちょっと様子を見るという」

 男性 「うん。やっぱり待望論っていうの、いつも出てくるから。社長のカリスマ性、えー、王の資質があるんだから。どこ行ったって何か役員、……(聞き取り不能)……でしょ、そこ。何か。そういうもんですよ。うん。創業家っていうのはそういうもんです。そこで潔さを見しとけば、一つの美学ですよ」

 社長 「そういうの、嫌いじゃない」

 (中略)

 男性 「まあ、社長としては、××(元ナンバー2)が退くっていうのが条件」

 社長 「僕は、その、会社のためというなら、そういうことです」

 〈17年12月11日の音声データ抜粋〉 鈴木社長とHDリスク管理業務委託先の男性との2回目の会談の日
● 「表に出たらポーラ崩壊しますよ」

 男性 「不法行為によってね、その、株式を取得したと、領得したと、そういうことがやっぱり今まで秘してきたことでしょうから、それは、あの、表に出たらポーラ崩壊しますよ。あえて申し上げるけど。第三者に相談したら」

 社長 「まあ、それはでも、あの、私の後押しをするからってことであって、まあ、でも、その、でも、その、崩壊するということって、彼(元ナンバー2)はやろうとしてるわけですよね。分かって、もしそれが分かって」

 男性 「もう、それは、だから、社長が退かなければっていうことなんでしょう」

 〈17年12月18日の音声データ抜粋〉 告発後、鈴木社長と元ナンバー2が初めて会談した日

 社長 「勘弁してよ、もうさ。どういうことよ」

 元ナンバー2 「あのー、それは、もう**先生(告発の仲介者であるHDリスク管理業務委託先の男性)を通じてお伝えをさしていただいている通りでありますけれども」

 社長 「うん。だけど、まあ、そのー、××君(元ナンバー2)が望んでることは、結局あれだよな。まあ、△△さん(当時の専務)や、その、そういうのがいろいろ、関係者が仕事してくれて、資本の承継を実現さしてくれた」

 元ナンバー2 「はい」

 社長 「うん。それと反することじゃないの?」

 元ナンバー2 「うーん」

 社長 「え、その辺のその考え方が分かんないんで、俺は、まあ、捺印してる、署名・捺印してる、えー、確約書ってのは、見ても俺には理解できなかった。ま、ついては、だから会長の意に沿ってやっていただいてるやつ、やって、やってもらったやつが結局何だったのかっていう気がしてるわけ」

 (中略)

 社長 「うん。うん。生前贈与でもいいっていうことを聞いてたけどね。つまり、その」

 元ナンバー2 「ただ、生前贈与のときもやっぱ70%の課税がありますから」

 社長 「だから、そこまで考えて、えー、資本の承継を、ま、してほしいっていうことだったんじゃないのかな。つまり僕の持ち分を、その、ね、会社の持ってるものを僕の方に承継するという、それが最後の、あの病棟での遺言状に近いものであったと思うんだけどさ」

 (中略)

 元ナンバー2 「本気です。私ももう、悩みまくりましたから。11月15日に会長のお墓に行って、決めました」

 社長 「会長、何か言ってたかな」

 元ナンバー2 「やっぱ会社のため」

 社長 「会長がそう言ってたの?」

 元ナンバー2 「会社のためです」

 社長 「会長がそう言ってたのか」

 元ナンバー2 「さあ。私は会長の思いや考え方というものを理解してるつもりでおりますけれども」

 社長 「会長の意に沿わないことじゃないのか、これは。会長とか、△△さん(当時の専務)も、意に沿わないことなんじゃないのかな、これは」

 (中略)

● 「会社のためになるかどうかよく考えて」

 社長 「会社のためになるかどうか、うん、よく考えてもらって」

 元ナンバー2 「いえ、私はもう考えましたので。もう社長には(ポーラ美術館を運営するポーラ美術振興財団)理事長として、えー、見守っていただければと思っておりますので、本来。ただ、これ出たら、ちょっと、あのー、理事長としてもっていうのはちょっと厳しくなるとは思いますけれども」

 社長 「ま、今日は、ま。××君(元ナンバー2)の、あの、真意を確認したかったということと、俺が、まあ、社長として何をやってきたのかっていう、17年間の振り返りをするためのいろんなことを、うん、××君(元ナンバー2)から聞いたので、ま、十分に考える材料としてはできたかなと思ってるんで。ま、繰り返しになるけど、もう少し時間を、おー、もらいたいと思ってます」

 (中略)

 元ナンバー2 「確約書、どうされますか。お戻しされますか」

 社長 「いや。預かっとくよ、もちろん。真剣に考えてんだから」

 元ナンバー2 「はい」

 社長 「真剣に考えるなあ、17年間」

 (本編集部注:鈴木社長は2000年に就任したため、この面会時点で丸17年間在籍している)

 ◇

 本編集部記者が17年12月6日の音声データを聞いてまず感じたのは、内部告発を切り出された鈴木社長の慌てようだ。同月11日以降の会談ではやや余裕を取り戻し、特に同月18日の会談では故常司氏や家族の話を振って元ナンバー2が情にほだされるように仕向け、問題の沈静化を狙っているかのように聞こえた。音声データ3本をトータルで評価すると、「捏造の有無については争いがなく、社長退任の条件を巡って駆け引きをしていた」かのようにも聞こえる。

 だが、鈴木社長が東京地裁に提出した今年8月9日付の陳述書によると、その解釈は違うという。

 陳述書によれば、17年12月6日の会談から、「(告発書面を一読し)記載された内容はあまりにも荒唐無稽」「(仲介者の男性は)要注意人物。何を要求しようとしているのか確認するのが先決と考え、ひとまず反論は控えた」と、内心は冷静に対応していた旨を説明。同月18日の元ナンバー2との会談に関しては、「異常な言動もあったため、もはや冷静に話し合うことなどできない状況」「もはや何を言っても無駄」と記している。

 本編集部は鈴木社長に見解を求めたが、HD秘書担当を通じ、「係属中の訴訟に関することですので、コメントは控えさせていただきます」と回答があった。

 東京地裁で9月9日午前11時から、鈴木社長、元ナンバー2らの証人尋問が予定されている。これらの音声データを巡って、原告・被告双方の代理人弁護士による激しい尋問合戦が予想される。

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ダイヤモンド編集部/土本匡孝

最終更新:8月26日(月)11時20分

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