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「金がないから結婚できない」と嘆く人の大誤解

8月25日(日)5時30分配信 東洋経済オンライン

アラサー男性に限定して、エリアによって未既婚者による年収格差があるのかどうかスポットを当ててみた(写真:kikuo/PIXTA)
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アラサー男性に限定して、エリアによって未既婚者による年収格差があるのかどうかスポットを当ててみた(写真:kikuo/PIXTA)
 「金がないから結婚できない」――。

そういう未婚男性の声をよく聞きます。実際、経済的に「結婚どころではない」という層も確かに存在します。以前、『収入重視女と容姿重視男に未婚が多いワケ』という記事で、20~50代未婚男性のうち年収400万円以上は3割にも満たないというお話をしました。

■アラサー男性・未既婚別の年収比較

 その際、「世の中の未婚男性ってそんなに年収低いの?」と驚かれた方もいました。現実に、平均初婚年齢周辺であるアラサー世代(25~34歳)男性の年収分布を未既婚で比較すると、既婚より未婚のほうが低年収領域に集中していることは明らかです。
 とはいえ、当然ですが、これは、結婚している男性全員の年収が高いということを意味しません。

 既婚男性のメインボリューム層も年収300万~400万円未満であり、約65万人もいます。年収400万円未満全体でも122万人、全既婚者の46%を占めます。つまり、アラサー世代の男性の半数近くは400万円未満の収入でも結婚していることになります。もちろん、これは全国平均ですから当然、大都市と地方とでは異なります。
 今回は、男性に限定して「結婚できる/できない」のエリアによる年収格差について深堀りしたいと思います。もちろん、結婚において男性の収入だけが問題となるわけではありません。

 共働き夫婦も増えている中で、男性と女性の収入を合わせた世帯収入で生計を成立させている夫婦が多いことも承知しています。夫婦世帯収入でなんとかする問題については、後日別の記事に書くことにして、今回は、あえて男性の収入だけにスポットを当てたいと思います。
■都道府県別に見てみる

 まず、都道府県別に、有業のアラサー既婚男性の年収別の県内既婚構成比をグラフ化しました。200万円未満、300万円未満、400万円未満の3種類としています。

 これで見ると、まず全体的に西高東低です。東日本より西日本のほうが低年収の既婚男性構成比が高いように思えます。年収400万未満では、東京・愛知・大阪などの大都市を除けば、約半数の県が既婚構成比50%を超えています。300万円未満でも、沖縄だけは構成比50%を超えています。
 400万円未満での既婚男性構成比を東京と沖縄とで比較すると、沖縄は77%と約8割を占めるのに対して、東京は27%とほぼ真逆の傾向です。年収400万円あれば沖縄では約8割が結婚していますが、東京では約3割しかできないということです。このように、同じ日本でもエリア格差はかなりあります。

 では、都道府県ごとに、実際に既婚と未婚の年収格差がどれくらいあるのか、について見てみましょう。2017年就業構造基本調査から、有業者の年収別分布より、年収不詳を除いた形で平均値にて比較します。
 平均値より中央値で見るべきだという意見もありますが、今回は既婚と未婚の年収格差を見るためですので、外れ値も含む全体の数字を把握する必要があります。よって中央値より平均値で見ることとします。既婚と未婚の年収平均値とその格差ランキングおよび参考のために25~34歳男の未婚率も併記します。

 結果は、既婚も未婚も平均年収トップは東京で、最下位は沖縄でした。既婚者でみると、400万円以上が24都府県。東京だけが、唯一500万円を大幅に突破しています。全国平均が444万円ですが、平均以上の県は8都府県のみです。
 未婚者は、東京も含めて400万円以上の県はゼロでした。平均200万円台が過半数の25県を占めます。こちらも全国平均328万円を超えるのはたった5都県だけです。未既婚ともに全国平均を押し上げているのは、人口集中している大都市圏だけであり、地方は軒並み平均以下が大多数であることがわかります。

 さて、未既婚の平均年収格差を見てみると、全国平均は115万円です。つまり、アラサーの既婚と未婚を分ける年収格差は約115万円、1カ月あたり約9万6000円の収入差があるということです。格差が大きい上位5位のうち3つは首都圏です。トップは東京の161万円差、最下位の鳥取の57万円と比べると3倍近い開きがあります。
 ちなみに、年収格差とアラサー男性未婚率との相関係数は0.5172でした。0.4以上なので、正の相関があるとは言えます。かつて1980年代まで日本はほぼ皆婚社会でした。総中流意識の下、同世代での年収格差も少なく、ゆえに結婚率も高かったと見ることもできます。

 しかし、年収格差と未婚率のランキングを細かく見比べると、年収格差が大きくても、必ずしもエリアによっては未婚率が高いとは言えないことがわかります。反対に、それは年収格差が低いエリアでも同様です。
■第三の要因がある!? 

 今回のテーマは「エリアごとに異なる年収格差と結婚率との関係」です。確かに、東京・神奈川などの首都圏では、年収格差と未婚率とは大きな相関があります。都市生活する未婚男性にとって「金がないから結婚できない」と言いたくなる気持ちはわかります。

 しかし、であれば、年収格差の少ない地方エリアではもっと未婚率が下がってもいいように思いますが、実際はそうではありません。男の年収だけが未婚化の要因ではないのです。実は、未婚男性の年収格差と結婚との間に大きな影響与えていた意外な「第三の要因」がありました。
 それは「姉さん女房」の存在です。横軸に「未既婚の年収格差」、縦軸に「25~34歳の未婚率」、バブルグラフにて「初婚における妻年上婚の構成比」を並べてみました。妻年上婚の大きさは、全国平均の24.2%の差分でプラス(姉さん女房が多い=青)とマイナス(年下妻が多い=オレンジ)で示し、バブルの大きさはその差分の大きさを表します。

 これで見ると、一目瞭然です。

 未既婚の年収格差にかかわらず、アラサー男性の未婚率56%以上の県というのは、すべて、妻年下婚のほうが多いエリアに完全に分かれました。逆に言えば、年収にかかわらず結婚できているエリアは「姉さん女房婚」が多いことを示します。そして、それらはほとんど九州に集中しています。
 一方、それと対極に位置するのが東京です。東京のアラサー男子は、結婚したくても未既婚収入格差の壁が立ちはだかり、アラサー未婚率も全国1位なのですが、そこには年上妻との結婚が少ないということも影響していると言えます。

■夫が年上の婚姻数も減少

 今回、都道府県別でアラサー男子の未婚と既婚の年収格差を見てきましたが、確かに、東京や大都市圏においては「金がないから結婚できない」という問題はあるでしょう。結婚相談所に行っても「年収○○○万円未満はお断り」という厳しい条件も突き付けられます。
 未婚化が問題視されても、行政の支援はどちらかといえば、少子化や子育て支援ばかりに目がいきがちです。取り残された「結婚したいけどできない未婚男性」たちは、今後どうすればいいのでしょうか? 

 ちなみに、婚姻数の多かった頃の1970年には、夫年上婚は62万組あり、全婚姻の8割を占めていました。それが、2015年には21万組、構成比55%に激減しています。実に、41万組もの夫年上婚が消滅したのですが、1970年と2015年の婚姻総数の減少数も40万組です。つまり、婚姻数が減った要因は、この夫年上婚が減った数と完全に一致します。
 未婚男性ほど「年上の自分が金を稼ぎ、妻と子を養わなければいけない」という結婚規範にいまだに縛られています。そうした規範とは裏腹に、稼げない自分に自信喪失した男たちが行きつく先が、「結婚したいけどできない」という袋小路なのではないでしょうか。

 既婚者の皆さんが「だらしがない」「ちゃんと稼げばいいじゃないか」と言いたくなる気持ちもわかりますが、収入に関して言えば、個人の努力の問題ではなく、バブル崩壊以降30年続いた経済環境によるものでもあります。
彼らの自己責任に押し付けてしまうのは酷というものです。『独身男が「結婚コスパ悪い説」を信奉する理由』でも書いたように、結婚をコスパで考えてしまうのは、彼らなりの心の鎧なのかもしれません。
荒川 和久 :ソロもんラボ・リーダー、独身研究家

最終更新:8月25日(日)11時52分

東洋経済オンライン

 

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