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健康保険が破壊されてしまう!? 高額新薬への保険適用を制限すべき理由

8月25日(日)21時00分配信 LIMO

写真:LIMO [リーモ]
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写真:LIMO [リーモ]
高額薬が次々と発売されているが、健康保険の適用は限定的なものにすべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張しています。

高額薬が健康保険を破壊する?

薬価が数千万円の薬が次々と開発されています。今のところ、使用する患者数が少ないようですから、健康保険が適用されても大きな問題にはならないようですが、今のうちに本質的な問題を議論しておく必要があります。

今後仮に「100歳の末期ガン患者を1日延命させるために1億円かかる薬」が開発されたら、1万人の高齢者を100日延命するためのコストは100兆円、国家予算と同じです。

日本人の大人一人あたり100万円の負担となります。それでも認めるべきでしょうか。その時になってから議論しても遅いかもしれません。

「人の命は地球より重い」という言葉があります。人命が救えるならばコストを顧みずに救うべきだ、という考え方です。考え方としては立派ですが、現実を見ると、違和感も感じます。実際には、「100万円あれば救えた命」が数多く存在するでしょうから。

「健康保険を適用しないと、金持ちだけが助かり、貧乏人は死ぬことになる。それは許せない」という意見もあるでしょうが、これも現実を見れば、生活資金を稼ぐために無理をして働いて寿命を縮める貧しい人などがいるわけです。

政府に何か要求するなら、負担を覚悟すべき

日本人は、「税金はお上が召しあげるもので、行政サービスはお上が下さる物だ」と考える所があるようで、「行政サービスを要求するならば税金の負担が増えることを覚悟すべきだ」とは考えない人が多いようです。

そこで、かわいそうな人を見ると「政府が何とかしてやれ」と言うわけですが、「政府が何とかしてやれ。そのための費用なら、喜んで増税に応じるから」という人は少ないですね。

米国では、かわいそうな人に政府が何かしようとすると、「我々の税金が増えてしまうのは嫌だから、そんなことはしなくて良い」という反対意見も多いようです。さすがは「代表なくして課税なし」をスローガンに独立戦争を戦った国ですね。

年金についても、「老後は年金だけでは暮らせない」と聞くと「それなら年金支給額を増やせ」という人はいても、「年金支給額を増やせ。そのために必要なら現役世代の払う年金保険料を増額しろ」という人は多くないようです。

現役世代のみならず、高齢者たちの中にも「年金支給額は増やせ。でも、現役世代の負担は増やすな」と主張している人も多いようです。難しい問題ですね。

最大多数の最大幸福は正義か

最大多数の最大幸福という言葉があります。一見すると正しいようですが、「少数者は我慢しろ」ということになりがちなので、難しい問題ですね。「民主主義だから多数派の横暴が通るべき」ということではないでしょうから。

少数の高齢者だけが暮らす山間部の寒村について考えてみましょう。「生まれ育った土地で暮らしたい」という人を強引に引っ越させるわけには行きません。しかし、彼らのために道路や水道管を補修したり郵便を届けたりするコストは、平野部の人々が税金や郵便料金等の形で負担しているわけです。

そうであれば、「平野部に引っ越してくれれば、立派な家を用意するし生活費も支援するが、山間部に住むのなら、高い電気料金や水道料金を負担してもらう」といった「飴と鞭」による引越誘導策をとるべきでしょうか。

あるいは「かわいそうな高齢者のために、引き続き道路補修などを続けてやれ。そのためなら、俺たちが使っている図書館を閉鎖しても構わないから」といった選択を平野部の住民がするのでしょうか。

民主主義ですから、平野部の住民の投票で決まるのでしょうね。一人一人が真剣に考えて投票してもらえれば、と思います。

金銭面のみならず、労働力の配分も重要

バブル崩壊後の長期低迷期には失業者が大勢いましたから、山間部の道路補修等は「失業対策の公共投資」だと考えることも可能でした。

しかし、今後は少子高齢化による労働力不足の時代を迎えますから、「山間部の道路補修は、平野部における図書館建設資金と競合するのみならず、平野部における介護施設の労働力不足とも競合するようになる」のです。

それでも「山間部の道路補修は何としても続けろ。図書館も介護施設も要らないから」と平野部の人が言うのか否か、難しい問題です。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義

最終更新:8月25日(日)21時10分

LIMO

 

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