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香港デモは「第2の天安門事件」を招くのか?

8月24日(土)5時20分配信 東洋経済オンライン

中国側の深圳に集結する武装警察。香港デモはどんな結末を迎えるのか(写真:AP/アフロ)
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中国側の深圳に集結する武装警察。香港デモはどんな結末を迎えるのか(写真:AP/アフロ)
 本稿をご覧の読者は、後ほどツィッターで「香港 818」を検索してみられたい。8月18日の日曜の香港デモに関する膨大な情報が流れてくるはずだ。中国語のツィートが多いが、画像や映像をチラ見するだけでも迫力は十分に伝わってくる。

■香港のデモは、再び流れが変わった

 この日のデモ参加者数は、主催者発表で170万人、警察発表では12万8000人であった。文字通り「ケタが違う」けれども、映像を見ればどっちが真実に近いかは自明であろう。どうみてもこの人の集まり具合は、「東京ドーム2杯半」で済むはずがない。
 6月に始まった香港デモは、この日でとうとう11週連続となった。香港の人口は730万人だから、170万人とか200万人(6月18日のデモ参加者数)となると、子どもと老人を除いた大人のうち、2~3人に1人が参加している計算となる。

 正直なところ、その前の週には嫌な雰囲気が漂っていた。この手の抗議運動は、最初のうちは新鮮であっても、時間が経過するにつれて「慣れ」がきて「飽き」がくる。いつしか運動は過激化し、暴力沙汰が増えていく。やがては日常の経済活動にも支障が出て、一般市民の支持を失っていく。
 そしてどこかの瞬間で、権力者側が強制排除にかかる。流血沙汰になればもちろん非難を浴びるが、何しろ相手は中国共産党である。いずれ「諦め」がきて、「忘却」されてしまうのではないか。今から30年前の天安門事件がちょうどそうであったように。

 実際に中国は、香港と地続きの深圳に1万人規模の武装警察を投入し、「いつでも行くぞ」という構えであった。「ああ、これはもう長くはない。いつ介入が始まるか…」と、見ていて憂鬱な気分になったものだ。ちなみに2014年の香港反政府デモ、いわゆる「雨傘運動」は79日間で終結しているから、あのときもちょうど11週間だった。
 しかし8月18日に再び流れは変わった。一時は香港国際空港の占拠など、過激な方向に向かっていた抗議行動が、再び平和的な行進に戻った。「逃亡犯条例の完全撤回」など要求項目を5つに絞り込み、雨の中を人々がヴィクトリアパークをねり歩き、夜になって静かに解散した。おかげで、この日は催涙弾も飛ばなかった。

 ツィッターの中に、「818不再分『和』『勇』」と書かれたプラカードが目についた。もうハト派(和)もタカ派(勇)もない、今日からはまた一緒だ、と言っているのだろう。内部の路線対立は修復され、香港デモはまだまだ続きそうである。
 なぜ香港はここまで盛り上がっているのか。今回の発端は「逃亡犯条例改正案」であった。本来は「犯罪者を他国と同様、大陸本土にも引き渡すことができるように」、という法律上の穴をふさぐ、いわばテクニカルな措置であったはずだ。

■「追い詰められる」香港、北京の認識と噛み合わず

 ところがそれが琴線に触れてしまった。もともと香港人の大多数は、国共内戦時代に大陸から逃げてきた人たちの子孫である。今までは英国式の司法制度に守られ、自由な経済活動によって繁栄してきた。中国も香港を上手に利用して、お互いに「持ちつ持たれつ」の関係を維持してきた。しかし、それもいつまで続くかわからなくなってきた。ひょっとすると、自分やその家族が「ある日突然、大陸に送られてしまうかもしれない」のだ。
 思えば1997年の香港返還の際に、「一国二制度」の名の下に、向こう50年間は今の制度を変えない、と中国は約束した。しかしそれから既に22年が過ぎている。2047年には、いよいよ香港も「一国一制度」になるかもしれない。そして上海には金融機能が育ち、深圳はハイテク生産基地となり、香港の値打ちは相対的に低下している。

 この間に、金持ちはカナダや豪州など海外に移住してしまった。あるいはいざというときに備えて、脱出用のパスポートや海外資産を有している人もいる。そんな中で、香港から出て行く当てのない人たちは、追い詰められた気分になっているのではないか。
 何しろ北京の影響が強まるにつれて、よほどのコネがない限り出世の道はおぼつかなくなってきた。しかも本土の金持ちが香港に投資するから、不動産価格は普通の若者には手の届かないところまで上昇してしまった。うん、なんだか耳元で、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」が聴こえてくるようではないか。

 北京から見れば、この状況は歯がゆく思えるだろう。これまで中国共産党は、香港における一国二制度はうまく機能している、反対する人もいるがそれはごく少数だ、と内外に説明してきた。それは大間違いであることが明らかになってしまった。
 しかし中国国内では、香港への同情が高まっているわけではない。「CIA(米中央情報局)がカネを払ってデモを起こさせている」式の噂が流れ、環球時報は「陰で西側諸国が支援しているカラー革命だ」などとウラジミール・プーチン大統領みたいなことを書いている。「香港の奴らはあれだけ特別扱いしてやっているのに、いったい何が不満なんだ」、と理解不能らしいのだ。

 最新のThe Economist誌は、こんな辛辣な評を載せている。(The “black hands” conspiracy 8月17日号)
 もっとも憂慮すべきは、中国の支配層が「どうせ力が正義であり、大が小を呑み込むのだろう」という海外からの暗い、シニカルな見方を裏切っていることである。たった730万人の香港人が、14億人同胞の意思よりも自分たちの権利を優先するとは、彼らには思いもよらない事態なのだ。ちっぽけな香港が強力な大陸本土に挑戦するようなら、他の勢力もそれに続くであろう。

 両者の認識はかくも離れている。そして最近は台湾との関係もそうなのだが、中国外交からはかつてのような度量や余裕が消えてしまっている。かつてであれば、デモ隊を丸め込むような「大人のゲーム」を展開したと思うのだが。
 香港デモはまだ何週間も続くことだろう。どこかの時点で北京が武力制圧に出て、「第2の天安門事件」になってしまうのではないか。もちろんその前に、SNSやフェイクニュースを使った情報戦など、あらゆることを試すだろうけれども。

 他方、以前はほとんど関心を示さず、香港デモのことを”Riot”(反乱)などと呼んでいたドナルド・トランプ大統領も、「天安門のような暴力的事態になれば、貿易協議での取引は困難になる」などと中国を牽制するようになっている。ご自身は、あいかわらず通商問題にしか関心がないようなのだが、アメリカ国内では世論の関心が着実に高まっている。再選を意識する大統領として、これを無視することはできないだろう。
■一帯一路サミット、建国70周年後に「要注意」

 「第2の天安門事件」は今一番の地政学リスクと言える。確率は低いが、実現してしまうと大変なことになる。ヒトとカネと企業が一斉に香港から逃げ出し、米中の対立が後戻りできないところまで行ってしまう。世界経済にとっても、「貿易戦争」や「ブレグジット」、「逆イールドカーブ」以上のリスクといえよう。

 この先に重要日程がいくつか控えている。ひとつは9月11-12日に香港で行われる「一帯一路サミット」だ。2016年から毎年行われていて、今年で4回目。海外から招いた賓客の目の前で派手なデモが展開されるたら、習近平主席のメンツは丸つぶれになってしまう。
 もうひとつは10月1日の建国70周年である。習近平体制にとっては、この日を万全の状態で迎える、ということが今年の最重要課題。できればその前に、下手なことはしたくない。デモ隊側は、この日を運動のピークに盛り上げたい。逆に言うと、この日を無事に過ごした後が要注意かもしれない。

 2つの重要日程を控えて、8月22日から26日にかけて北京で全国人民代表者会議常務委員会が開催されている。香港基本法は、全人代の常務委が「制御不能の動乱」と判断し緊急状態と認めれば、「中央政府が全国の法律を実施できる」と規定している。すなわち武装警察の出動も可、となり得る。これは単なる脅しなのかどうか。
 「起きてほしくないことは考えない」のは、昔からのわれわれの悪い癖である。おのおの方、くれぐれも香港から目を離されませぬように(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

 香港の人たちには申し訳ない気がするが、こちらは日曜ごとにデモではなく競馬場に通う平和な日々である。それくらい今年の夏競馬は好勝負が続いている。今週末は札幌競馬場で、キーンランドカップ(G3、25日11R、距離1200メートル)にいいメンツが集まった。例年、下位人気馬が活躍するレースだけに、少し穴っぽいところから狙ってみたい。
■キーンランドカップは「先行逃げ切り馬」に期待

 人気となっているのはダノンスマッシュで、18日のブラストワンピース(札幌記念の勝ち馬)に引き続き、川田将雅騎手がおいしいところをさらっていきそう。しかしちょっと待て。今春の高松宮記念(G1)でダノンスマッシュは4着だった。同レースで2着だったセイウンコウセイが出ているのに、こちらは人気薄ではないか。

 たとえ6歳馬で斥量58キロであっても、実力を測る物差しとしてG1レースの結果ほど確かなものはない。しかも高松宮記念と同じ4番という絶好枠を引いた。ここはセイウンコウセイの先行逃げ切りに期待しよう。
 穴馬には3歳馬のアスターペガサス。53キロと斥量で恵まれ、戸崎圭太騎手への乗り替わりもよさそう。さらに大穴には牝馬のデアレガーロ。京都牝馬ステークスでは人気のリナーテに勝っていることを忘れちゃいけない。

 もう一点、ダイメイフジにはニュージーランドのリサ・オールプレス騎手が騎乗する。藤田菜七子騎手が私淑する同国ナンバーワンの女性ジョッキーだ。3年ぶりの訪日となるが、その騎乗ぶりもこのレースの見どころのひとつである。
かんべえ(吉崎 達彦) :双日総合研究所チーフエコノミスト

最終更新:8月25日(日)15時49分

東洋経済オンライン

 

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