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名門ラジオ局「エフエム東京」が不正会計のなぜ

8月22日(木)6時50分配信 東洋経済オンライン

エフエム東京の黒坂修社長は「放送事業者としてあってはならない事態を発生させた」と言って頭を下げた(記者撮影)
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エフエム東京の黒坂修社長は「放送事業者としてあってはならない事態を発生させた」と言って頭を下げた(記者撮影)
 「番組出演者の皆様、エンタメ業界の皆様、そして何よりリスナーの皆様に大変なご心配をおかけした。国民の共有財産である電波をお預かりし、公共性の高い放送事業者としてあってはならない事態を発生させた。心よりお詫び申し上げます」

 「TOKYO FM(トウキョウ エフエム)」の愛称で知られるラジオ局大手・エフエム東京の黒坂修社長は、8月21日の記者会見でこう言って謝罪した。

■3年間にわたって約11億円の損失を隠匿
 エフエム東京は同日、5月に設置した第三者委員会の調査報告書を公表した。それによると、2016年度から3期にわたる決算で、当時の経営陣が新規メディア関連子会社「トーキョー スマートキャスト」(TS社)で生じた赤字を隠匿するために、エフエム東京などが保有するTS社株を異動させることによって、TS社を連結対象から不当に除外するなどの不正会計がなされていた。

 不正会計発覚のきっかけは、エフエム東京や同社の会計監査を担当する監査法人への内部通報だった。本来、計上されるべきであった営業損失は3年間で約11億円にのぼる。エフエム東京の2018年3月期の営業利益は15億円弱と発表されていたが、TS社の2018年3月期の営業損失4億円超を加味すると、実際の営業利益は約10億円だった計算になる。
 そのほかにも、銀行を介してTS社に貸し付けを行った際、必要な取締役会への報告を怠ったり、エフエム東京のラジオ番組に関する広告会社との取引に、TS社を関与させて手数料を供与していた点も問題だと指摘されている。

 TS社が手がけていた新規メディアは、「i-dio」という地上波デジタル放送兼インターネットラジオ。専用の携帯端末や車載型の受信機で移動しながらでも情報が入手できることがセールスポイントで、高音質で映像や文字も楽しめる新しいメディアだ。2013年3月にエフエム東京が公表した資料には、「ラジオを活性化し、ひいてはラジオの価値向上につながっていくことが期待されます」という意気込みが記されている。
 その後、エフエム東京の関連会社が基地局開設や放送事業に必要な認可を総務省から取得し、TS社は番組企画や制作を担う形で2016年3月から放送を開始。エフエム東京がi-dio事業に投じた金額は債務保証なども含めて約100億円にのぼる。

 売上高185億円、総資産400億円弱(いずれも2018年3月期)のエフエム東京にとって社運を賭けたi-dio事業だが、TS社の赤字は徐々に膨らんでいった。2018年3月期には債務超過に転落、2019年3月期にその額は4.5億円に拡大した。
■動機は事業見直しと経営責任の回避

 報告書によれば、i-dio事業の経営悪化が取締役や株主などに明らかになると、撤退を含めたi-dio事業の抜本的な見直しと経営陣の責任が問われかねないため、これを回避する動機があったようだ。

 i-dio事業はどの程度厳しい状況なのか。黒坂社長は「正直、状況が厳しいという現実はある」と述べるにとどまった。ただ、i-dioを放送波で利用するためには専用端末が必要で、インターネットコンテンツが台頭する中、専用端末の普及は進んでいないとみられる。
 i-dioを生かした防災情報配信システムが自治体に導入されつつあり、総務省から免許を付与されている立場で、i-dio事業から撤退するわけにはいかない。事業の今後について、黒坂社長は「複数の協業先候補と交渉を進め、パートナーとして事業の一部を担っていただくレベルではなく、(事実上)事業そのものの営業権を担っていただく」形で検討していくと話す。

 目下の課題は発表を延期している2019年3月期決算の公表で、9月末を目指すという。エフエム東京は非上場会社だが、冒頭の黒坂社長の発言通り、公共の電波を用いて事業を行っている放送局が決算を公表できていない事態は憂慮すべきだ。
 「i-dio」という新しい挑戦で「ラジオの未来」を作ろうとしたが、その姿勢が裏目に出てしまったエフエム東京。調査報告書が「閉鎖的かつ風通しの悪い組織風土が醸成されたのは、(前会長の)冨木田(道臣)氏の代表取締役としての在任期間が長いこと」「(冨木田氏に)権限が集中し、(中略)経営陣の意向に対して、異を唱えることが困難な状況になっていたことも(不正会計の)重要な要因の一つ」と指摘するように、一連の不正会計を主導した冨木田氏らの「罪」は大きい。
 旧経営陣に代わって6月に社長に就任した黒坂社長ら新経営陣がどこまで組織改革を進められるか。その手腕が問われている。
森田 宗一郎 :東洋経済 記者

最終更新:8月22日(木)8時28分

東洋経済オンライン

 

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