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スズキ「クロスビー」C-HRとは異なるSUVの価値

8月22日(木)6時10分配信 東洋経済オンライン

個性的な特別専用色「スターシルバーエディション」が設定されたクロスビーが7月に発売された(写真:スズキ)
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個性的な特別専用色「スターシルバーエディション」が設定されたクロスビーが7月に発売された(写真:スズキ)
 スズキのクロスビーが発売から1年余りを迎えた。

 5ナンバーの小型クロスオーバーワゴンとして2017年12月に誕生した同車だが、一見すると、2014年に登場した軽SUV(スポーツ多目的車)ハスラーの拡大版に見える。ただ、外観の様子は似ていても、実車を前にすると小型車専用にきちんと開発された様子がうかがえた。造形がより立体的になり、確かな存在感がある。

 室内のダッシュボードの造形は簡素で、割り切りがあり、実用性に富んだ余暇のための車種という印象を与える。上級車種には、汚れをふき取りやすい荷室床の加工がしてあったり、座席表皮に防水加工がしてあったりと、普通の乗用車とは違う特別なクルマを手に入れた思いが残る室内だ。
■軽自動車とは違う小型車ならではの利点

 クロスビーはスズキの小型ミニバンであるソリオを基に開発されたSUVであり、動力は排気量1.0Lの直噴ターボエンジンにモーター機能が追加されたマイルドハイブリッドになる。これにより、JC08モードで20km/L以上の燃費性能を実現しながら、滑らかに加速していく。SUVといえども日常的に市街地で使うことが多いはずで、発進停止に伴う加減速が繰り返されるとき、アクセル操作が思いどおりに運転できる快適さは不可欠だ。
 座席は寸法がたっぷりあって、クッションには適度な張りもあり、よく体を支えてくれる。スポーツで「体幹」という言葉がよく使われる昨今だが、運転においても体の軸がぶれず手足を自由に動かせる運転姿勢が、運転を楽にさせてくれる。その点で、座席のつくりのよさはもちろんだが、正しい運転姿勢をとるうえでも、ハンドル調節のテレスコピック機能(前後調整用)が採用されていないのは残念だ。

 それでも、後席を含め室内空間にゆとりを感じられるところは、軽自動車とは違った小型車ならではの利点といえるだろう。以上のような点を踏まえ、クロスビーの販売動向はどうであるのか。
 スズキ広報によれば、昨年7月から今年6月までの1年間で、販売台数は月平均2000台ほどで推移しているという。一般社団法人日本自動車販売協会連合会(自販連)の乗用車ブランド通称名別順位の統計においても、30位台を保持しており、堅調な売れ行きといえるのではないか。

 2018年の年間販売台数を見ても、クロスビーは3万0624台で30位に位置する。車種はまったく異なるが、クロスビー開発の基となった小型ミニバンのソリオは、4万4884台で24位を得ており、より広い顧客層が想定される小型ミニバンと比べても、クロスビーの健闘ぶりがみえてくるのではないか。
■老若男女に支持されるクロスビー

 クロスビーの顧客動向では、50歳代が中心とはいえ年齢や地域で大きな偏りはなく、女性も約35%を占めるとのことであり、老若男女に支持されているようだ。クロスビーが注目される点として、まずは外観があげられると広報は解説する。そのうえで、車体の色、室内の広さ、そして運転のしやすさが評価されているようだ。

 車体色には、赤、黄、青、オレンジなどがあり、ほかの乗用車では選びにくい明るさであっても、SUVの外観であれば好みを通しやすいのではないか。それが、外観の造形や室内の独自性に加え、自分の思いを生かせるクルマとしてクロスビーを際立たせているかもしれない。
 さらには、5ナンバー車であることにより、立体駐車場へも気兼ねなく止めることができるところも見逃せない。

 自動車市場ではSUV人気が続いているが、中でもとくに小型SUVの販売が伸びている。その代表的な車種であるトヨタC-HRやホンダ・ヴェゼルは、車体幅が1.7mを超え3ナンバー車となってしまう。

 税制や、運転中の取り回しなど、3ナンバー車でも5ナンバー車との差は小さいと自動車メーカーは言い訳をする。だが、いざ日々クルマを使う立場となってみれば、5ナンバーであるか3ナンバーとなってしまうかの違いは大きい。
 そのことが、近年の軽自動車人気にもつながっているとみることができる。なぜなら、現在の軽自動車規格の車幅は、1960年代に誕生した初代カローラやサニーとほぼ同じだからである。そして日本のモータリゼーションは、初代カローラやサニーの時代に発展し、交通の社会基盤はいまだに道幅も駐車場枠も当時の水準から大きく変更されていない。

■身近な喜びを味わわせてくれる車種

 スズキには、イグニスというほぼ同じ車格の小型クロスオーバー車があり、また軽自動車ではハスラーの人気が堅調だ。クロスビーの価値は、そのハスラーに近い存在であり、イグニスに比べるとより余暇の遊び心を伝えやすい姿となっている。
 イグニスが販売の上位50位から脱落しているのに対し、クロスビーの堅調さが印象に残る。また軽自動車では、本格的4輪駆動車の新型ジムニーの好調さが話題になっているが、実売数ではハスラーのほうが上回っている。

 日常という現実と、余暇に夢見る日々との橋渡しとして、ハスラーやクロスビーは身近な喜びを味わわせてくれる車種といえるのではないか。また、そうした雰囲気を味わわせてくれるような競合が、実はほかにないのである。余暇に軸足を置いた本格的4輪駆動車となると、日常的な乗降性や、高速走行での安定性に難が出る場合もある。
 クロスビーは、日本人が意識する多用途性を成立させ、顧客の心に寄り添うスズキらしい発想から生まれた小型クロスオーバーワゴンといえる。
御堀 直嗣 :モータージャーナリスト

最終更新:8月22日(木)6時10分

東洋経済オンライン

 

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