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神保町「大行列喫茶店」に学ぶ3つの差別化戦略

8月22日(木)6時20分配信 東洋経済オンライン

2014年のオープン以来、行列が絶えない「TAM TAM」のホットケーキ(撮影:今祥雄)
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2014年のオープン以来、行列が絶えない「TAM TAM」のホットケーキ(撮影:今祥雄)
ホットケーキという食べ物は、地味でありふれていて、手間暇がかかるのに値段が安い。商売として考えれば、あまり魅力的には思えないが、実はホットケーキにはビジネスのヒントが詰まっている――。
『現場力を鍛える』『見える化』など数多くの著作があり、経営コンサルタントとして100社を超える経営に関与してきた遠藤功氏は、「一見ありふれていると思われているホットケーキだからこそ、ビジネスとして成功するチャンスがある」という。
このたび『「ホットケーキの神さまたち」に学ぶビジネスで成功する10のヒント』を上梓した遠藤氏に、今まで出会ったホットケーキの繁盛店の取り組みを参考に、ビジネスで成功するためのヒントを解説してもらう。

■差別化戦略のお手本となるお店「TAM TAM」

 神保町の一角に、つねに行列の絶えない喫茶店があります。それが「石釜bake bread茶房TAM TAM」です。

 2014年にオープンして以来、行列が絶えることがありません。美味しいコーヒーが飲める喫茶店はほかにいくらでもあるにもかかわらず、「TAM TAM」には長時間待っても構わないと、多くの人たちが並んでいます。
 行列が絶えない理由は「石釜焼きホットケーキ」という、「TAM TAM」でしか味わえない味覚があるからです。ここでしか味わえない唯一無二の味を求めて、全国各地のみならず世界中から人が押し寄せます。

 経営コンサルタントとして100社を超える経営に関与してきた私がここまでホットケーキについて語る――。一見、まったくつながりがなさそうに見えますが、実はここに「ビジネスのヒント」が詰まっています。

 ビジネスとは、他の会社では提供できない「差別化された価値」を生み出すことです。大企業であれ、中小企業であれ、差別化されていなければ顧客の支持は得られず、収益は上がらず、成長することもできません。
 しかも、その差別化は「持続的なもの」でなくてはなりません。他社がすぐまねできるようなものは真の差別化ではありません。模倣困難性の高い差別化を生み出すことが、ビジネスの本質なのです。

 「TAM TAM」のホットケーキには「代替性」がありません。ここでしか食べることができないから、並んででも食べたいと多くの人の支持を得ています。「絶えない行列」は、ほかのお店と「真に差別化されている」ことの証しなのです。
 差別化のお手本は、私たちの身の回りにいくらでもあります。ここでは「TAM TAM」事例を基に3つのポイントを紹介します。

 「真の差別化を実現する」1つ目のポイントは、そもそも「チャレンジする勇気」を持つことです。

■「石窯の導入」が差別化の出発点

【ポイント①】まずは、新しいことへ「チャレンジする勇気」を持つ
 「TAM TAM」の前身は、珈琲館のチェーン店でした。店主の田村信之さんは、建て替えを機にまったく違うお店にしたいと考え、チェーン店ではなく個性的なお店にしようと決断しました。
 その後押しをしたのが、近所にある全国的に有名な喫茶店「さぼうる」のオーナーです。「これからは新しいものを出していかないとダメだよ」と助言されたのです。

 「普通の喫茶店にはしない」と決めた田村さんは、いろいろな人に相談し、「石釜を導入しよう」と決めました。この決断こそが、「TAM TAM」の差別化の出発点でした。

 人とは違う何かに挑戦しなければ、差別化など実現できるはずがありません。しかし、人はとかく無難で安全な道を歩みたがります。挑戦するには、勇気が不可欠です。
 「さぼうる」のオーナーの助言を素直に聞き入れ、成功するかどうかもわからない石釜の導入を決めた田村さんの「素直さ」と「チャレンジする勇気」がなかったら、行列のできるお店は生まれていなかったでしょう。

【ポイント②】「遊び心」を具現化する行動力
 2つ目は、「遊び心」です。

 お店を改装する当初、田村さんはトーストを焼くつもりで石釜の導入を決めました。そのころは、ホットケーキを石釜で焼くというアイデアにはたどり着いていませんでした。
 開店まで試行錯誤しながら石釜と格闘しているうちに、「石釜でホットケーキを焼いたらどうなるんだろう?」と思いつきました。

 そして、実際にやってみたところ、これまでにはない「見た目」と「焼き上がり」のホットケーキが出来上がったのです。

 表面はこんがり焼け、まるで焼きたてのパンのようです。その表面にカリッとナイフを入れると、蒸気がふわりと上がり、黄金色をしたスポンジが現れます。

 石釜の導入までは思いつく人もいると思います。しかし、その石釜を使ってホットケーキを焼いてみようという田村さんの「遊び心」と実際にやってみる行動力がなければ、「奇跡のホットケーキ」は生まれていないのです。
 最後の「真の差別化を実現する」ポイントは「継続的な創意工夫」をすることです。

【ポイント③】「継続的な創意工夫」を怠らない
 「TAM TAM」のホットケーキは、「石窯」で焼いた、その「見た目のインパクト」だけでなく、「味」も特別なものです。

 ほのかな甘みの中に、塩気も感じます。添えてあるバターや生クリームやメープルシロップとのバランスも絶妙なものです。

 この味覚も、一朝一夕に生まれたものではありません。ホットケーキの生地には、バニラアイスとリコッタチーズが入っていますが、このレシピも試行錯誤の果てに生まれたオリジナルなものです。
 家では食べることができない特別なホットケーキを目指して「継続的な創意工夫」を行っています。この努力がなければ、差別化された価値が生まれることはありません。

■ビジネスの本質は、差別化の「実現」である

 「チャレンジする勇気→遊び心→継続的な創意工夫」

 どれも言い尽くされたものばかりですが、「真の差別化」を生み出す方法論そのものにマジックなどありません。すべては差別化を「絶対に実現するのだ」という「強い思い」と「粘り強いアクション」あるのみなのです。
 差別化のお手本は、私たちの身の回りにいくらでもあります。そして、つねに行列ができている繁盛店には、ビジネスで成功するヒントが詰まっているのです。

 みなさんも、一度「TAM TAM」の石窯焼きホットケーキで「ここにしかない味」を体験しつつ、「ビジネスのヒント」「差別化戦略の本質」を体感してみてください。
遠藤 功 :ローランド・ベルガー日本法人会長

最終更新:8月22日(木)6時20分

東洋経済オンライン

 

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