ここから本文です

それでも日経平均は2020年に3万円へ向かう

8月21日(水)5時50分配信 東洋経済オンライン

世界情勢は不安定で円高懸念もくすぶる。日韓も含め、マーケットをめぐる懸念要因をどう見ればいいのか(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
拡大写真
世界情勢は不安定で円高懸念もくすぶる。日韓も含め、マーケットをめぐる懸念要因をどう見ればいいのか(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
米中貿易戦争、香港デモ、イギリスのEU離脱(ブレグジット)、日韓対立など、不安定な国際情勢が続く中、日本の株式市場はどうなるのだろうか。10月には消費増税という「ネガティブイベント」もある。だが、武者リサーチ代表の武者陵司氏は「2020年の日経平均株価は3万円になってもおかしくない」と見る。その根拠はどこにあるのか、聞いた。

■日韓関係は「落としどころを探る展開」に

 米中通商問題を筆頭に、確かに国際情勢は揺れ動いています。しかし、マーケットの懸念材料にされているような最近のいくつかの事象に関しては、あまり心配する必要はないでしょう。話がこじれて破滅的な最後になるようなことはなく、徐々に落ち着きどころを探る展開になると思うからです。
 まず、今や解決の糸口が見えないほどにこじれている日韓関係ですが、両国関係の悪化は韓国側にとって不利な状況をもたらします。日本政府が韓国を輸出管理の優遇対象国であるグループA(ホワイト国)から外したことで、韓国政府は日本が世界シェアの多くを占めているフッ化水素などの輸入に支障を来し、自国半導体産業に甚大なダメージが及ぶという理由から「元徴用工問題に対する経済的報復措置である」と大騒ぎをし、韓国の文在寅大統領はフッ化水素を国産化することを表明しました。
 しかし、このニュースを耳にしたとき、私はかつてサムスン電子が半導体製造装置を自社開発しようとしながらも、最終的に諦めた経緯を思い出しました。結局、優れた半導体をつくるためには最優秀の半導体製造装置が必要であるという事実を、サムスンは受け入れざるをえなかったのです。

 それと同様に、韓国が優れた半導体を製造するためには、品質の高い日本製のフッ化水素が必要です。それにもかかわらず、無理やり低品質のフッ化水素を用いれば、韓国製の半導体の品質は低下し、国際競争力を失います。この事実がある以上、日韓関係をさらに悪化させるのは韓国にとって得策ではなく、そう遠くないうちに落としどころを探る動きになるはずです。
 次に米中関係ですが、今は両国間で関税率引き上げ合戦の様相を呈しているとはいえ、先に音を上げるのは中国です。

 このままだと中国は、1人当たりGDPが1万ドルに達した段階で成長が鈍化・低迷する「中進国のわな」にはまる恐れがあります。ちなみに2018年の中国の1人当たりGDPは9776ドルに達しましたが、ここで成長の足取りを止めるわけにはいきません。そのため中国は、ハイテク分野において世界覇権を握ることで、さらなる成長を目指し、バブルの崩壊を回避しようとしています。
■中国はアメリカに譲歩せざるをえない

 しかし、中国がハイテク分野の覇権を握ろうとすれば、アメリカが黙っていません。アメリカは中国を仮想敵と見なしており、いよいよとなれば中国が持っているドル資産の凍結という最終カードを切るかもしれません。

 中国の2018年経常黒字は491億ドルですが、対米黒字は4011億ドルにも達します。黒字の大半をアメリカで稼いでいる以上、関税の引き上げによって対米輸出が急減すれば、ただちに中国は外貨不足に陥り、中国経済は甚大な影響を被るでしょう。
 一方で、中国も報復的関税の引き上げを行っていますが、もともとアメリカの対中輸出はわずかなので、中国がどれだけアメリカからの輸入に対して高い関税をかけたとしても、トータルで見れば、アメリカは痛くもかゆくもありません。どこをどう見ても、この勝負はアメリカに分があります。最終的には中国の譲歩で終わるでしょう。

 一方、イギリスのEU離脱についてはイギリスのテリーザ・メイ前首相の後を継いだボリス・ジョンソン首相が「ハードブレグジット」(合意なき離脱)派であることから、マーケットではこれをネガティブ要因と捉えていますが、恐らくイギリスのEU離脱のデメリットは、イギリスよりもEU側にとってより大きなものになるはずです。
 というのも、イギリスが対EUで巨額の貿易赤字を計上していることからわかるように、EUにとってイギリスはたくさんモノを買ってくれる大事なお客様だからです。

 したがって、イギリスとEUの力関係は、イギリスのほうが上です。そのイギリスがEU脱退に際して、EU側に何らかの条件交渉を求めた場合、恐らくEUはイギリスの提案をのまざるをえないと思います。

 このように米中問題にしても、あるいはイギリスのEU離脱をめぐる問題にしても一見、隘路(あいろ)に入り込んだかのようですが、解決までの道のりは案外、近いのかもしれません。
 以上から読み取れるように日韓、米中、ハードブレグジットといった問題のいずれも十分に解決可能です。マーケットがこのことに気づけば、株価は徐々に上向いていくでしょう。

 このように言うと、「そうした見方は楽観的すぎる。世界経済はこれから落ち込んでいく。アメリカの景気拡大は過去最長の11年目に突入しており、ここから先の伸びしろはない。アメリカを牽引役とした世界経済の拡大は、もはや限界に達しようとしている」という意見をちょうだいします。
■アメリカの株価は再び上昇へ

 しかし、アメリカの景気拡大が途絶える気配はまったく確認できません。8月に入り、アメリカの株価は調整しましたが、7月にニューヨーク・ダウなどが過去最高値を更新する中で、半導体株指数も過去最高値を更新しました。これは、景気循環がよい局面にあることを示唆しています。また、世界経済のミニサイクルは、2019年後半から徐々に上向く局面に入ります。

 したがって、調整局面を経た後、アメリカの株価は再び上昇トレンドへと向かうでしょう。アメリカの株価が上昇に転じれば、それは日本の株式市場にとってポジティブな材料になります。
 確かに、日本株は今年に入ってから低迷が続いています。理由はまず東証の上場企業は製造業比率が高く約5割もあり、景気による振れ幅が大きいことが挙げられます。また「円高=株安」「円安=株高」というように、株価と為替が共振しやすい構造を持ち、しかも出来高の7割を占めている外国人投資家の多くが先物主導の投機家であり、アルゴリズムトレードを駆使して株価に揺さぶりをかけています。

 その結果、世界的に経済が低迷した局面で、日本株はほかの国に比べて大きく売りたたかれました。ただ、投機ポジションの指標として注目される東証の裁定買い残は6月、株価底打ちのシグナルとされる5000億円を割り込み、3000億円台まで落ち込みました。これは、どこかの段階で投機買いが急復活する可能性を示唆しています。
 また、日本の株価がなかなか上昇に転じない理由として、日本企業がグローバル競争から取り残されていることを挙げる人もいます。この手の見方はある意味、正しいのかもしれませんが、別の確度から見ると、かなり的外れな意見であることがわかるでしょう。

 確かに、ハイテク分野の最終製品は韓国、中国、台湾の後塵を拝しているように見えますが、これらの国々が最終製品で優位に立てるのは、日本からの部品の供給があるおかげです。図らずも、日韓問題のヒートアップで、そのことが白日の下にさらされました。
 日本にしかないオンリーワン技術を抜きにして、世界のサプライチェーンは成立しません。現在、ハイテク製品の生産集積地は北東アジアですが、それは優れた部品を供給できる日本がいるからです。

 また、アップルやグーグル、フェイスブックといったテック企業が日本にはないという声も聞きますが、日本にはソフトバンクグループがあることを、声を大にして言いたい。孫正義ソフトバンクグループ会長は、コンピューターの黎明期から自分の目でその発展を見てきた人物であり、今どの技術が旬で、何に投資するべきかがわかっています。このようなテック企業の経営者は世界的に見ても皆無です。
 今後、テック分野においてM&Aは活発化していくでしょう。前出のアップルやグーグル、フェイスブックはコア技術が成熟段階に入っているため、これから先、さらに事業領域を広げるには、M&Aが不可欠になります。孫正義会長はM&Aを熟知していますから、これからテック分野の競争がさらに激化していくなかで「孫正義」「ソフトバンク」の名前は無視できないものになるはずです。

■日経平均は来年3万円になってもおかしくない
 このように、国内株式市場の需給は徐々に改善へと向かい、日本企業のファンダメンタルズも決して悪くはないのに、日本の株価は昨年10月につけた直近高値の2万4448円をはるかに下回る水準でボックス圏の推移を続けており、グローバルで見ても出遅れ感が目立ちます。

 その理由としては、世界各国の株価が政策依存度を高めていることが挙げられます。具体的には金融緩和と財政支出拡大です。アメリカがまさにその典型例で、トランプ政権のもと金融緩和と財政支出拡大を推し進めることによって、株価は過去最高値を更新し続けてきました。
 ところが日本の政策面に目を向けると、現下、追加緩和余地は小さく、秋には消費増税も控えています。つまり金融緩和は思うように進められず、財政は緊縮へと向かっています。これらが株価にとってネガティブ要因となっているのです。

 しかし、これも徐々に好転していくと考えています。10月に消費税率の引き上げを実施できれば「今後少なくとも10年程度は、消費税率の再引き上げをする必要はない」と、安倍晋三首相は明言しています。参議院選挙も終わり、今度は衆院解散総選挙に向けて、リフレ政策の有効性を確認する動きを打ち出してくる可能性が高まっています。
 そのうえ世界景気のミニサイクルは、2016年ボトム、2018年ピークをつけた後、2019年央にボトムを打ち、次の山に向かう可能性が高まっています。世界景気ミニサイクルの好転が日本企業の業績に反映されれば、徐々に業績相場への移行も期待されます。日銀がETF(上場投資信託)の買い入れ増額を打ち出してくる可能性もあり、これらが出遅れている日本株を押し上げる力になるでしょう。

 日本の株価はこれから強くなります。2020年中には日経平均株価で3万円になってもおかしくありません。そして、それはあくまでも通過点にすぎず、中長期的に株価はさらなる高みを目指すことになるでしょう。
鈴木 雅光 :JOYnt代表

最終更新:8月21日(水)5時50分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン