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「入居者が違う!」オーナーチェンジ物件のワナ

8月21日(水)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:iStock.com/takasuu)
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(写真:iStock.com/takasuu)
「オーナーチェンジ」物件を購入したところ、聞いていた入居者ではない人が勝手にその物件に住んでおり、賃料ももらえないはめになってしまった……。大家としてはゾッとする話ですが、そのようなトラブルの発生はままあるといいます。

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の阿部栄一郎弁護士に、こういったトラブル事例と、その対処法を解説してもらいました。

○今回のトラブルの概要
不動産投資家であるX氏は、賃借人のいる戸建てをいわゆる「オーナーチェンジ」で購入しました。

X氏が売買契約及び決済を終えて賃借人に連絡を取ろうとしたところ、「入居者」と聞いていた母子はすでに一戸建てから退去しており、別の無職の男性が一戸建てに住んでいたのです。

X氏としては、安定した賃料収入を得られると思ったにもかかわらず、賃料収入が得られないばかりか、まずこの男性を一戸建てから退去させなければならないということになってしまった……という事例です。

■「入居者は親子」、ところが出てきたのは

不動産投資家のX氏は収益物件として、すでに賃借人のいる戸建て物件を購入しようと考え、仲介業者に依頼して条件に合う物件を紹介してもらいました。約2000万円、利回り約10%という中古の戸建て物件です。

売り主であるY氏によると、その戸建ては以前A氏という人物の所有だったものの、5年ほど前に事業に失敗したため、A氏の知人であったY氏が購入。その後、A氏とY氏とが賃貸借契約を締結して、現在はA氏とA氏の母が一緒に住んでいるということでした。

売買契約の際には、売買契約書、重要事項説明書、付帯設備表などのほか、Y氏とA氏との間の賃貸借契約書、賃料の入金状況の分かる通帳の写しなども受け取りました。賃貸借契約書を確認したところ、賃貸借契約期間がその年の1月1日から翌年の12月31日までとなっていました。

売買契約を成立させ、1週間後に決済が完了。戸建てを管理する管理会社とも契約し、X氏は、賃借人に挨拶するために、管理会社の担当者とともに物件を訪問しました。出てきたのは、賃借人として聞いていたA氏よりもだいぶ高齢の男性でした。

不審に思ったX氏がその高齢男性と話をしたところ、男性は「A氏の母の元夫」であって離婚をしたこと、数日前にA氏とA氏の母は戸建てから退去したこと、そして自身に収入がなく、家を出て行けないことなどを話します。当然、収入もないので家賃も払えません。

X氏は、この話を聞いて目の前が真っ暗になりました。自身では解決できず、弁護士に男性の立ち退きを依頼し、弁護士は交渉の末に退去させました。ただし、男性に数十万円の立退料を支払い、大きな出費となってしまいました。

■オーナーチェンジの場合「賃借人」はどうなる

投資用物件の売買の場合、よく「オーナーチェンジ」などと広告されており、読者の皆様も実際にこうした投資用物件を購入されたこともあるかと思います。法律の理解を前提として建物の売買契約が行われていますので、知識として持っておかれると良いかと思います。

トラブル対処についてお話する前に、前提となる法律や契約について少しご説明しましょう。まずは「賃借人」の扱いについてです。

(1)法律論の原則

賃貸借契約は、「賃貸人がある物の使用と収益をさせることを賃借人に約束し、賃借人がある物の使用と収益に対する対価(賃料)を支払うという約束をすること」を内容とする契約です(民法601条)。そして、賃貸借契約のような債権契約は、原則として、当事者同士しか拘束しません。

(2)原則を貫くことによる不都合

ところが、上記のとおりに賃貸借契約が当事者しか拘束しないとなると、例えば、賃貸人である建物所有者が第三者に建物を売却した場合、賃借人は新所有者に対して建物の使用・収益を求めることができなくなります。つまり、賃貸人は、建物を売却することによって、賃貸借契約から離脱を図ることができる一方、賃借人は自身の知らない建物の売買などによって、建物の使用などができなくなるという不安定な立場に立たされることになります。これでは、賃借人はたまったものではありません。

(3)借地借家法による修正

そのため、賃借人を保護する目的で、借地借家法は31条1項で「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後のその建物について物件を取得した者に対し、その効力を生ずる」と定めました。つまり、賃借人が建物の引渡しを受けた場合(多くは、鍵を受け取った時点が引き渡しを受けた時点となります)、賃借人は、建物の所有者が変わったとしても建物の新所有者に対して賃借権を主張することができ、その後も建物を使用・収益できることとなります。

■オーナーチェンジの場合、「賃貸借契約」はどうなる

上記で「賃借人」の権利についてご説明しましたが、交わした「賃貸借契約」はどうなるのでしょうか。

(1)法律論の原則

上記のとおり、賃貸借契約は契約であり、契約は契約当事者しか拘束しません。賃貸人が交代する、または、賃借人が交代するという場合には、契約の他方当事者が合意をしなければなりません。

(2)原則の修正

上記(1)のとおり、賃貸人の交代に賃借人の合意が必要となると、建物所有者である賃貸人は、自身の建物を売却するに当たって、必ず賃借人の了解を得なければいけないことになります。そうなると、賃借人が建物の売却に関与することとなり、場合によっては、承諾料などを取るということも考えられます。建物の売却が遅れたり、不動産の流通が阻害されたりというケースも出てくるかもしれません。

賃借人が自身の住んでいる建物の売却に関与できるというのは、賃借人保護の法政策の1つとしてあり得ることです。しかし、大審院(明治憲法下における最上級審の裁判所)や最高裁は、建物の所有権の移転に伴い、賃借人の同意なくして賃貸人としての地位も建物の新所有者に移転するという判断をしています。

つまり、新所有者を新賃貸人として、賃借人との間で、以前と同様の賃貸借契約が成立するということです。なお、これらの点については、令和2年4月1日から施行される新民法605条の2や605条の3で明文化される予定です。

(3)新賃貸人が賃料を請求できる時期

建物の所有権を譲り受けた新所有者・新賃貸人が賃借人に対して賃料を請求できることになる時期はいつでしょうか。最高裁は、新所有者・新賃貸人が建物の登記を完了した時と判断しています。ですので、新所有者・新賃貸人は、建物の所有権移転登記手続きをした後でないと、賃借人に対して賃料を請求することができません。なお、この点についても、令和2年4月1日から施行される新民法605条の2で明文化される予定です。

■トラブルを避けるためにすべきことは

競売物件はもちろん、通常の投資用物件の購入でも、たまに今回の事例のようなことが起きます。賃借人がいつ退去するかは分かりませんし、賃貸人の知らないところで占有者が入れ替わっていることもないわけではありません。

稀なケースも含めれば全てを予防できるというわけではないことをご理解いただければと思いますが、可能な限り今回のようなトラブルを防止する方法を述べたいと思います。

ただし、売買契約当事者間の力関係によっては、売買契約の内容を買主に全面的に有利なものとすることができないこともあり得ますので、その点はご留意ください。

(1)賃借人の状況をよく確認する

売買契約前に賃借人と接触できることは少ないと思いますので、まずはできる限り現在の賃貸人(売り主)から賃借人の情報を得ることです。賃借人の性別、年齢、家族構成、勤務先、収入といった属性や賃借人の過去の債務不履行の状況などを確認しておくことは重要です。過去、賃借人が賃料の不払いをしていたことがある場合、退去以外にも賃料不払いのトラブルが発生する可能性があります。

また、可能であれば、怪しまれない程度に周囲の人に聞き込みなどを行っておくのも良いかと思います。例えば、賃貸人から聞いた居住人数や居住者の容貌と、周囲の人が見ている居住人数や居住者の容貌が異なる場合には、何らかのトラブルが隠れている可能性があります。

(2)賃貸借契約書をよく確認する

賃貸借契約書もよく確認しておきましょう。自身が引き継ぐ賃貸借契約書なのできちんと確認されるかと思いますが、売買契約書の方に目が行ってしまい、賃貸借契約書をよく見ないという方もいらっしゃいます。

上記で述べたように、賃料が不払いとなっていたり、遅延したりしているか否かの判断は、賃貸借契約書における賃料の支払期限が前提となっています。

また退去に関しては、多くの場合、退去をする前の通知義務が定められています。通常の退去の場合には、例えば、少なくとも1カ月以上前に賃貸人に通知があるだろうということが分かります。

(3)売買契約に目的を明記する

売買契約においては、当該売買契約の目的として「投資用物件(賃借人がいることが前提となっていること)」を明記することは重要であると思います。目的に反していた場合、買い主から売り主に対して損害賠償請求ができることがあります。

賃料を払えない人が、物件を占拠していることを売り主が知っていたにもかかわらず隠していた、あるいは賃借人がいる投資用物件として購入したにもかかわらず、実態が空室であり、新たに賃借人を募集しなければならない、といったケースは、「収益という目的に反している」と判断されやすくなります。

また、売り主に対して、賃借人に関する告知義務を課したり、損害賠償の予定の定めを設けたりするということも、売り主に対する抑止力となると考えられます。

■弁護士が対処するときには

ただし、十分に調査をしたからと言って必ずしも今回のようなトラブルを避けられるわけではありません。

万が一、購入した投資用物件に不法占有者がいた場合、まずは、退去してもらうように交渉することになります。ご自身の交渉によって不法占有者を退去させられればそれに越したことはありません。

ただ、ご自身の交渉によって不法占有者を退去させられない場合には、訴訟も視野に入れて、専門家に依頼していただければと思います。なお、こうしたときに弁護士がどのように対応するかをご説明します。

1.交渉による解決

弁護士はまず、不法占有者との間で退去を前提とした交渉をします。不法占有者は、退去の対価として立退料を求めてきますので、仮に交渉で解決できたとしても、不法占有者には立退料を支払うことが多いです。

投資用物件の場合には、不法占有者に占有し続けられると損害が膨らんでいくので、早期に退去してもらえるのであれば、一定の立退料の支払というのはやむを得ないと思います。

立退料は、立ち退きを望む側が必ず支払わなくてはならないものではありません。そのため、相場が形成されにくいのですが、感覚的に言えば「家賃相場の6カ月分程度」が妥当かと思います。もちろん、合意ができればそれより低額にも高額にもなります。

2.訴訟による解決

交渉で解決できない場合には、不法占有者を被告として退去を求める訴訟(建物明渡請求訴訟)を提起します。不法占有者の場合、訴訟で主張できることはほとんどありません。なお、状況に応じて、占有移転禁止の仮処分(不法占有者がコロコロ入れ替わるのを防止するための裁判上の措置とご理解ください)を申立てることもあります。

また、訴訟において話合いで解決する(訴訟上の和解による解決)ということもあり、その場合、上記の交渉と同様、不法占有者に立退料を支払って退去してもらうということが多いです。

訴訟の場合、ある程度早く解決したとしても、少なくとも3カ月程度はかかります。交渉での解決可能性や交渉期間(長期化しているか否かなど)も加味して、訴訟に踏み切る時期を考えるのが良いでしょう。

3.強制執行による解決

訴訟上の和解によっても解決せず判決まで進んだ場合、不法占有者を強制執行によって、強制的に建物から排除することになります。イメージとしては、不法占有者に対して、強制的に引越しをさせる、ということです。法律上は、不法占拠者の引っ越し先について考慮に入れる必要はありません。

一方、強制執行の費用は、債務者(不法占有者)の負担とされていますが、ほとんどの場合には強制執行の費用を申立人が負担し、債務者(不法占有者)から回収できることはありません。

強制執行は、最終段階であり、話し合いのできない不法占有者との間では、非常に有効な手段です。



弁護士に不法占有者に対する退去を依頼した場合、交渉による解決、訴訟における解決、強制執行における解決があり得ます。早期に解決するのに越したことはありませんが、そのために立退料が高額になったりしては元も子もありません。

強制執行まで進む場合、実際には、時間も経過しており、損害も膨らんでいきますが、話合いのできない不法占有者との間では唯一の手段となります。状況に応じ、どのような方法が有効かについても検討されながら、退去を求めていくということになります。

いずれにしても、「オーナーチェンジ」だからすぐに賃料が入って安心……と思わず、その賃借人がどのような人なのか、十分に事前調査を行っていただければと思います。
阿部 栄一郎

最終更新:8月21日(水)20時00分

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不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

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